ネットを使いこなすシニア層の出現で変わるECのターゲット シニア層のネット利用動向調査が実施される

ECのミカタ編集部

株式会社インテージ(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:檜垣 歩、以下インテージ)は、シニア層のインターネット、メディア利用状況や生活意識、価値観について独自に収集するさまざまなデータを分析し、その実態に迫った。ここではその概要についてポイントを絞って見て行く。 

調査概要

◆【マルチデバイス利用調査】

[調査地域]
日本全国

[対象者条件]
15~69 歳の男女(同分析では60-69歳対象)

[標本抽出方法]
RDD(無作為番号による電話調査)

[ウェイトバック]
インテージ独自のデータ採寸方法にてウェイトバック

[標本サイズ]
n=7,024

50代60代のスマホ利用率が急上昇

50代60代のスマホ利用率が急上昇図表1

インターネットの利用率は10代から40代でほぼ100%、50代で9割だが、60代ではまだ7割にとどまっている。スマホは全年代で利用率が2年前より上昇傾向にあるのがわかる。10代から30代では利用率が9割を越え、特に10代と20代はほぼ飽和状態だ。

注目すべき、50代と60代のスマホ利用率の変化の大きさだ。60代の利用率はまだ5割にも達していないものの、利用率はたった2年で目覚ましく上昇していて今後の浸透が想像できるとしている。

パソコンについては、全体的に利用率は減少傾向だ。また若年層にはスマホ利用で大きく水をあけられているが、シニア層ではスマホとパソコンの利用率は同程度で、シニア層にとっては依然パソコンも重要なデバイスであることがわかる。

シニア層はYahoo好き

シニア層はYahoo好き図表2

では、シニア層は一体どういった目的でインターネットを使用しているのだろうか。生活者のさまざまな情報がID連携によりシングルソース化されたインテージの「生活者360°Viewer」から、インターネット利用者のサイト利用について、60代と10代~60代平均のデータ比較をみてみる。

利用率上位のサイトの顔ぶれには、「Yahoo!」「Google」といったポータルサイトや3大ECサイト、「楽天市場」「Amazon」「Yahoo!ショッピング」、そして「LINE」「Facebook」「Twitter」といったSNSが並んでいる。

シニア層の3大ECサイトそれぞれの利用率は、全体平均並みもしくは全体平均以上となっている。今後、この層のインターネット利用率が上がることで、利用者は増えていくと考えられるとしている。

またシニア層のECサイト利用で特徴的なのが、「Yahoo!ショッピング」の利用率が全体に比べ+13ptと高めに出ている点だ。シニア層において、ポータルサイトの「Yahoo!」が利用率・利用時間ともにトップとなっていることから、ポータルサイトから直接アクセスしやすいといった手軽さや、以前から多くの人々に利用されていて親しみが持ちやすい、などといったことがこの年代の「Yahoo! ショッピング」の利用率を高めている可能性が考えられる。

一方、SNSの利用率は全体平均と比べて格段に低い。最も利用されているのは「LINE」で、SNSの中では唯一、利用率が50%を超えている。家族や孫などと連絡を取る手段としてシニア層にも浸透しているようで、連絡ツールとしての立ち位置を不動のものにしている。「LINE」以外のSNSでよく利用されていたのは「Facebook」と「Twitter」だった。「Instagram」は利用率30%にも満たず、シニア世代での存在感は薄い状況だ。

人付き合いには慎重な一面も

人付き合いには慎重な一面も図表3

「人づき合いをあまり積極的に広げたいとは思わない」との考えの人が過半数と多く、また現在の友人関係については、「プライベートには深入りしたくない」「触れてほしくないことがあるときは、黙って見守るべき」と考える人が7割を超えている。

自分の本音を包み隠さず話し、何でも悩みを相談したいというよりは、お互いのデリケートな部分には触れずに傷つけないように気を遣って接するのが望ましいと考えているようだ。インターネット上でも、新たに人間関係を広げるよりも今つながっている人達との関係を大切にしたいという思いで行動していることがうかがえる。

商品選びのキーは「質実剛健」

商品選びのキーは「質実剛健」図表4

図表5

シニア層は「話題性があっても、品質の裏打ちがなければ買わない」、「ものを買うときは価格に見合う価値があるか吟味する」など、インターネット上で話題になっているものや口コミへの関心は低く、実際に自分で試してより良いものを自分で選んで発見していきたい、という意識が強くみられる。

そして、商品に望む要素としては、「デザインよりも機能」。わくわくするような見た目や新しい機能よりも、基本的な機能や品質がしっかりと保証されている商品を提供してほしいという考えを持つ人が多くなっている。

実際にスマホでの行動に関するデータ(図表5)でも、「クチコミ・評価を調べた」は全体に比べてシニア層では10pt以上低く、SNSで影響されて商品を購入するというような行動も稀な様子がうかがえる。

一方、「気に入った商品を長く使い続ける」という考えも、特徴としてみられた(図表4)。ネットショッピングをするときは、まだ試したことのない新しい商品をネット上で買って挑戦してみるというよりは、以前店頭で実際に購入した経験があるものや、長年にわたって愛用し続けているものなどを選ぶ傾向にありそうだ。

ネットを使いこなすシニア層の出現

調査結果にあるように、シニア層のスマホ利用率は4割 で、2年で10ポイント利用率伸びるも、依然としてPCも同水準で利用されていることがわかった。また利用サイトトップ5は「Yahoo!」「Google」「楽天市場」「Amazon」「YouTube」となり、6位、7位の「LINE」「Yahoo!ショッピング」も利用率5割超えとなった。

さらにシニア層の価値観 として人づきあいは「広げず、深入りせず」、商品選びでは「ネット上の話題やクチコミより自分自身で品質見極め」をしていることが分かった。

日頃の家族との連絡にLINEを使いこなすシニア層も珍しくない昨今、巨大市場となっているネット通販でもシニア世代の利用者が着実に増えている。同社は総務省の「家計消費状況調査」を引用し、2018年時点で65歳以上世帯のネットショッピング利用率は、21.1%で、2007年の7.0%から11年間で約3 倍にまで伸長しており、今後もネット市場での存在感を増していくことが予想されるとしている。

インターネットが普及した90年代、パソコンを手にした当時の30代40代がシニア層に差し掛かっており、今後もネットとデジタルデバイスに慣れ親しんだ世代がボトムアップする中、EC市場としても同世代はますます有力な顧客層となって行きそうだ。

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