回答率約30%増 デジタル時代における顧客対応の救世主は『サポートコミュニティ』?

ECのミカタ編集部

株式会社オウケイウェイヴはデジタルネイティブ世代の特長を利用した、効率的で新しいカスタマーサポートの形に関するレポートをとりまとめその内容を公表した。ここではその概要についてポイントを絞って見て行く。

複雑化するカスタマーサポートを取り巻く環境

同社ではカスタマーサポートをとりまく状況について次のように分析している。現在、IoTが普及してあらゆるモノがインターネットに接続される動きが加速している。

また市場で流通している製品やサービスには他社のアイテムなどが関連して一体として提供されることも多く、今後は製品やサービスの使い方・トラブル等に対するサポートがこれまで以上に複雑になっていくことが予想されるとしている。

トラブルの切り分けが難しくなっている

同社資料より(以下、同様)。

最近では実際に、IoT製品にトラブルが発生した場合に、ネットとの接続の問題なのか製品の問題なのかを特定することが難しく、利用者がどこに問い合わせていいのか分からなくなるケースや、カスタマーサポートに問い合わせても対応に時間かかってしまい、クレーム増につながるといったケースも多く見られる。

このように製品・サービス利用者からの問い合わせに企業が迅速に回答できないケースが更に増え続けることが予想されており、各企業はどのように対応していくかが大きな課題となっている。

出典: IDC Japan, 9/2018

不満トップは「オペレーターの知識不足」

わざわざ問い合わせたにもかかわらず問題が解決しないという結果になると、製品・サービス利用者はネガティブな感情に陥ってしまい、コンタクトセンターや企業に対して不満が生じかねない。

『利用したコールセンターのオペレータに対する不満』の調査データによると、「オペレータの知識不足」が25.5%と最も多く、「質問の意図を理解してもらえなかった」が18.8%と続いている(「特に不満を感じたことはない」という回答を除く・複数回答あり)。

特に新サービスのリリース後だと、想定外の質問に対して回答するまで時間がかかるケースも多くある。自社製品の問題なのか、他社が提供する付属製品の問題なのか、または利用環境の問題なのか等、原因をすぐに特定することが難しいため、カスタマーサポート部門の負荷も高まっていることになる。

出典:コールセンタージャパン編集部・編『コールセンター白書2018』

自分で解決すようとするユーザーが増加している

このような複雑化した問い合わせに対して、最近では製品・サービスの利用者ニーズに合わせた新たなサポートの形である「顧客参加型のサポートコミュニティ」が活用され始めている。その背景には現代人の情報収集手段の変化があるようだ。

総務省の調査(総務省情報通信政策研究所『平成29年情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書概要』)によると、デジタルネイティブ世代である現代の10代~30代は、電話とメールの利用率が年々減少し、代わりにソーシャルメディアの重要度が高まっている。

ソーシャルメディアの普及により、この世代のユーザーは情報収集力に長けており、疑問や悩みを電話やメールで企業に問い合わせするより、自分でインターネットを活用して必要な情報を探し、解決しようとする傾向が見られるのだ。

「サポートコミュニティ」という考え方

このような傾向を受け、製品・サービス提供企業は、「サポートコミュニティ」を活用し始めている。「サポートコミュニティ」とは、利用者同士が悩みを解決し合うQ&Aコミュニティのことで、ユーザーの質問に他のユーザーが回答してくれる仕組みになっている。今まで対応しきれなかった複雑な質問やカスタマーサポート営業時間外の問い合わせに対し、迅速かつ適切な対応が実現できるのが利点だ。

事例として次のものがある。昨年、ソースネクスト株式会社(以下:ソースネクスト)より発売されたAI翻訳機『POCKETALK(ポケトーク) W』は、発売後大きく話題となった。その人気の裏には、ファンを取りまとめたサポートコミュニティがあったという。

IT製品提供企業であるソースネクストでは、提供製品の1つである年賀状作成ソフト「筆まめ」シリーズに対して、毎年年末に問い合わせが増加する。そこで、繁忙期の問い合わせ対応効率化施策としてサポートコミュニティを導入したところ、コミュニティにおける利用者同士の“問い合わせ解決コミュニケーション”が活発化し、顧客満足度が上昇するという結果が得られたそうだ。

その後『POCKETALK(ポケトーク) W』にもサポートコミュニティを導入することとなった。自社の製品に対する質問に回答してくれるユーザーは、製品に困りごとがある他のユーザーを助けてくれていることになり、企業にとって貴重な存在だ。

ソースネクストでは、毎月、同社から優れた回答者に対してメールで感謝を伝える取り組みをしている。『POCKETALK(ポケトーク) W』の場合、この取り組み実施前は問い合わせへの回答率が9.0%だったのに対し、実施後の回答率は36.3%に上がった。加えて顧客満足度も上がり、ファンの拡大にも繋がっていることになる。

顧客とのロイヤリティ構築にもひと役

また「サポートコミュニティ」を設置することは、熱心なファンが集まる助け合いの場を提供することでもあり、顧客ロイヤルティを高めることにもつながることになる。

「知らないことを教えてほしい」「知っていることを教えてあげたい」という利用者と回答者のニーズを満たし、顧客同士に「体験を共有」してもらうことは、企業のロイヤルティ醸成に大きな効果を発揮するだろう。

インターネット黎明期、もっと言えばそれ以前のパソコン通信の時代から、ユーザーが掲示板などを介して製品の使い方やクチコミを共有する動きは根強くあった。まさにデジタル時代の情報共有の在り方だが、そのスキームを企業側がカスタマーサポートの一環として取り入れ出している点が大きな変化と言えるだろう。

顧客対応が企業やブランドとユーザーとの信頼関係構築に直結する反面、そこへオペレーターなどの人員を配置し、その応対の品質を保つのは容易ではない。そうした中でサポートコミュニティはひとつのアンサーとなるのかもしれない。


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