「顧客体験を成功させるには人材もツールも愛情を持って育てていくこと」 CXの今と未来を考える『Relia Success+ 2019』が開催される
りらいあコミュニケーションズ株式会社(本社:東京都渋谷区、代表取締役社長 網野 孝、以下りらいあコミュニケーションズ)は、丸ビルホール(東京都千代田区)において、初の自社単独開催となるイベント「Relia Success+ 2019」を開催した。
最新のCXトレンドや事例を紹介
1987年の創業以来、リアルからデジタルまでの顧客接点を一貫してサポートするりらいあコミュニケーションズが「シームレスな顧客体験」をテーマに開催したこのイベントでは、当初の想定を大幅に上回る約150社300名もの方々が参加した。
りらいあコミュニケーションズ代表取締役社長の網野氏より来場者に向けて発せられたのは次のようなメッセージだった。
「シームレスな顧客体験をいかにして実現していくのかが、多くの企業にとって最重要な課題である。りらいあコミュニケーションズは、デジタル化によるオムニチャネルの流れの中で、心地の良いCX(カスタマーエクスペリエンス)を設計する役割を担っていく」
こうしたフィロソフィーのもとイベントでは消費者行動が複雑化・多様化する中、いかにCX向上に取り組むべきか最新のCXトレンドとともに各社での具体的な取り組み事例などが紹介された。
人材もツールも愛情を持って育てていくことが基本
同社は「りらいあコミュニケーションズだからこそ伝えられるもの、それは顧客接点の最前線である現場でのリアルな体験だ」と語る。イベントでは、りらいあコミュニケーションズが実現したCX創造への取り組み事例を各現場責任者が紹介し、株式会社ラーニングイット 代表取締役社長の畑中伸介氏のリードのもとパネルディスカッションも展開された。
CX創造を経営方針として掲げている企業は多いものの、目の前には様々な課題があり、その対応に追われてCX向上への取り組みに着手できていないという企業も少なくない。今回取り上げた3つの事例は業界も異なれば、課題やその改善施策のプロセスも異なるが、いずれもデジタルツールやフレームワークは活用しながらも、ヒトを介在させCX創造を成し遂げた内容となっており、目の前の課題解決そのものが実はCX創造につながっていることを、具体的な課題からその改善施策、成果を通して確認できたとしている。
モデレーターの畑中氏はセッションの最後に、「現場では日々、様々な施策が実施されており、それが日常的な業務のひとつとなっているため、自分たちがやっていることがCX創造につながるという発想になりにくい。さらに、現場での継続的な改善活動、人材もツール(テクノロジー)も愛情を持って育てていくことがCX創造の基本的な活動になる」と、現場での継続的な取り組みの重要性を強調した。
ロイヤルティを形成する「機能的価値・情緒的価値・社会的価値」
パネルディスカッションの3つの事例でも共通するように、顧客の視点では依然として「ヒトの対応」が重要視されている。消費者にとって心地の良い顧客体験の実現に向け、デジタル化を推進し最適な顧客接点を創出する一方で、リアルの接点もさらに強化していく、それこそがりらいあコミュニケーションズが目指すシームレスな顧客対応だ。
イベントでは、りらいあコミュニケーションズ デジタル・マーケティング本部より小長谷渉氏が登壇し、CXのトレンドを伝えた。顧客体験のサービス化が進み、利用中に限ったモノ消費の時代から、利用前、利用中、利用後を通じ顧客とのサービス接点を創造していくことが重要な時代へと移行していること、さらに、ロイヤルティを形成する機能的価値・情緒的価値・社会的価値の3つの価値について触れ、コモディティ化が進む社会では、「情緒的価値」を顧客に伝えロイヤルティを高めていくことが特に重要になってくると解説した。
「顧客接点のデジタル化が進展しているが、デジタル特有の無機質なコミュニケーションが顧客との関係を希薄化させている」と、データを用いて説明した上で、昨今の顧客体験の創造には、多様化する顧客接点を確立すること、そしてリアルの体験価値を見直し、顧客との距離を縮めることが重要であると締めくくった。
CX活動に終わりはない
基調講演では、予防医学研究者で医学博士の石川 善樹氏を迎えた。まずはデジタル化、効率化された顧客体験は、コミュニケーションの希薄化を生むことについて、カーシェアリングの事例が紹介された。また、EX(エンプロイーエクスペリエンス)において、「良い組織とは信頼の文化があること」、「体験と評価は異なるものであり、評価は‟最後の体験“に大きく影響されるものである」という研究者としての視点からの説明があった。
このEXの考え方は、CXにもつなげることができる。直接の顧客接点を持つコールセンターの存在価値について、石川氏は「コールセンターの役割は非常に大きい。なぜなら、エンドユーザーにとって最後の接点であるから」と述べた上で、CXだけでなく、カスタマーエバリュエーションという視点をもってCX創造に取り組んでみてはどうかと投げかけた。
ゲストとして登壇した株式会社プリンスホテル執行役員 佐々木潤氏は、プリンスホテルのDX(デジタルトランスフォーメーション)戦略について講演した。プリンスホテルでは、売上の向上を目指す攻めのDX、コスト削減や正確性の向上を目指す守りのDXを定め、デジタル推進を図っている。
モノ消費からコト消費へ、コト消費からトキ(瞬間)消費へと顧客価値が変化する中で、顧客とのサービス接点を旅マエ・旅ナカ・旅アトと設定し、様々なデジタルコミュニケーション戦略の事例を紹介した。佐々木氏は、「マーケティングとは、顧客を創造しつづけること、その顧客を優良顧客にし続けること」と説明し、ライフタイムバリューの価値について触れた。旅ナカだけでなく、旅マエ、旅アトを通じた顧客コミュニケーションを一気通貫して行う、これがホスピタリティを生業とするプリンスホテルの目指すDX戦略であると語った。
同じくゲストとして登壇した株式会社セブン銀行専務執行役員 松橋正明氏は、セブン銀行が社会課題解決を担い取り組んできたCXデザインアプローチについて講演した。セブン銀行は、在住外国人の方々の不安を払拭するための「海外送金サービス」をはじめ、海外カード利用やバリアフリー対応など社会課題解決に向けて日々取り組んでおり、サービス開始当初から途切れることなくそのサービス、機能をアップデートしている。
松橋氏は、「CX活動に終わりはなく、絶えず改善活動が必要。CX改善活動にはコストがかかるが、最終的には収益貢献の可能性が高い。それを踏まえていかに企画、実行するかが重要」と説明した。徹底したお客様視点でのアプローチ、そして自らの商品に対する愛情は、必ず消費者にも伝わり、CX向上につながると来場者へ強く語りかけた。
日々アップデートしていくことが重要
イベントのテーマである、「シームレスな顧客体験」は、いかにして実現するのだろうか。パネルディスカッションで紹介された3つの事例はいずれも、最初の行動指針は「CX強化」ではなく、「目の前の課題を解決すること」だった。顧客対応の最前線でCXを創造していく糸口が、現場における目の前の課題解決への取り組みであることは確かだ。
セブン銀行の松橋氏が強く訴えていた「CX向上には着地点はなく、日々アップデートしていくことが重要である」というメッセージ。イベントを締めくくったこの言葉のように、デジタルテクノロジーの発展により企業と消費者の環境が大きく変動する中で、企業が目指すCX活動に終わりは無い。絶えずアップデートしていく重要性を再認識し、りらいあコミュニケーションズは消費者にとって最適なCX創造を目指していくとしている。