消費者はどういった個人情報なら知られても良いのか?アドビと電通デジタルが共同調査『消費者のデジタル体験に関するインサイトリサーチ』の結果を公表
アドビ システムズ 株式会社(本社:東京都品川区、代表取締役社長:ジェームズ マクリディ、以下 アドビ)と株式会社電通デジタル(本社:東京都港区、代表取締役社長:鈴木 禎久、以下電通デジタル)は、日本の消費者1,000人を対象にデジタル体験の好みや企業への期待について調査した「消費者のデジタル体験に関するインサイトリサーチ」の調査結果を発表しました。ここではその概要についてポイントを絞って見て行く。
調査概要
今回のレポートは、アドビと電通デジタルがEdelman Japan調査部門に委託し、2019年7月に日本の20~60代の1,000人を対象にデジタル体験について実施したオンライン調査となっている。
また今回の調査で使われている「コンジョイント分析」とは、商品やサービスを購入する際、消費者が手に入れることができるものは、複数の要素(スマートフォンあれば、メーカー、色、カメラの画素数、価格)で構成されており、要素ごとに様々な水準 = 選択肢(メーカーA, B, C)があります。プロモーションやお知らせについても同じように、「●●の情報を参照されるのは嫌だけど、内容が▲▲であればそれは許容できるし、むしろ嬉しい」と自分にメリットのあるものが選別されている。
このように消費者は、制約と無数の組み合わせがある中で、何かを重視すると同時に諦めながら物事を選別しており、その際どのような状態であればどれくらいプラス/マイナスに作用するかを示す値を「効用値」と呼ぶ。
理論上、最も高い効用値の組み合わせが「最高の組み合わせ」となり、最も低い効用値の組み合わせが「最悪な組み合わせ」になる。仮に幾つかの要素でマイナスの選択肢があっても、組み合わせる他の要素によってはマイナスが相殺され、逆に差し引きプラスになることも可能だ。
検索履歴など個人情報のマーケ利用「知っている」が約6割
今回の調査によると、約6割(61.7%)の消費者がインターネットやスマホアプリの検索や利用の状況、会員情報や購買履歴、位置情報などを企業が参照してマーケティング活動を行っていることについて、「知っていた」または「そうかもしれないと思ったことがある」と回答している。
一方で、企業にデモグラフィック情報等の個人情報を参照されても構わないかという質問に対しては、「参照されたくない」という回答は約5割(53.5%)に留まった。このうち「個人情報」の中で、どのようなデータであれば参照されても構わないか聞いたところ、「性別/年齢」(37.1%)や「趣味/興味/関心」(22.2%)は比較的高い結果だったのに対して、「転職や引越のようなライフスタイルの変化」(2.2%)は低い結果となった。
有益なサービスにつながれば個人情報の参照も「アリ」
消費者の潜在意識を探るために、デジタル体験を構成する要素の最適な組み合わせを探るコンジョイント分析*を実施したところ、個人情報の中で「転職や引越のようなライフスタイルの変化」は+0.02との結果となった。
これは「ライフスタイルの変化」に関する情報についても、消費者が自分にとってメリットのあるデジタル体験を積み重ねる中で、参照されても構わないと感じるポテンシャルがあることを表している。
記念日での情報発信はポジティブに受け取られやすい?
同様のコンジョイント分析で、情報の参照元や個人情報、プロモーションやお知らせを受け取るタイミングや方法等の要素をうまく組み合わせることで、消費者がデジタル体験をポジティブに受け取る可能性があることもわかった。
例えば、情報の参照元であるSNSの公開情報 (-0.27) で、個人情報の中でも家族や子供の情報 (-0.29) を参照されることには抵抗が強いものの、受け取るタイミングが購入日や会員登録から何周年というような節目であり (+0.22)、受け取る方法はSNS広告 (+0.05) で、その内容はセールなどの催事案内 (+0.74) を受け取れば、合計 +0.45 となり、消費者にとってポジティブなデジタル体験になり得るとの結果となった。
必要な人に必要な場所で必要なタイミングに情報を提供
今回の調査について、アドビ システムズ 株式会社 代表取締役社長 ジェームズ マクリディ氏は次のように述べている。
「デジタル体験への期待が高まる中、企業は、顧客のコンテクストに沿ったオファーを、適切なチャネルを用いて、適切なタイミングで届けることで、顧客体験を向上させることができます。アドビは、高度なテクノロジーを搭載した製品群とコンサルティングサービス、人材育成支援によって企業の優れた顧客体験管理(CXM)の実現を支援してまいります」
また、株式会社電通デジタル 代表取締役社長 鈴木 禎久氏は次のように述べている。
「電通デジタルは、課題を人(People)基点でとらえなおし、本当に必要な人に、必要な場所で、必要なタイミングに情報を提供することをゴールとして、戦略を立案し施策を実施・運用していくことが、顧客企業にとって期待されるデジタル体験であると考えています。今後も、マーケティングROIの向上を実現する『デュアルファネル™ソリューション』を提供し、"人"基点の統合マーケティング『People Driven Marketing®』を推進してまいります」
調査結果にもあるように消費者は企業に参照されてもよいと感じる情報の内容について、自分にメリットがあるかどうかを潜在意識で判断している。
その中でもプロモーションやお知らせ等、自分のメリットに繋がることがイメージしやすい情報については、参照されても構わないとする一方で、「転職や引越のようなライフスタイルの変化」については通常企業側から直接的に質問をする機会が少ないため、現在のところ消費者にはメリットが感じにくいのではないかと考えられる。
今後、消費者にメリットがあるデジタル体験が増えれば、ライフスタイルの変化についても企業に公開してもよい情報としての認識が高まることが期待されるだろう。