脱!価格での消耗戦 LTV向上からみる販売戦略セミナー【ECのミカタイベントレポート】
2019年11月20日(水)開催のECのミカタセミナーイベント「脱!価格での消耗戦 LTVからみる販売戦略セミナー」。
EC業界の拡大と変化の中で、既存顧客の重要性が言われて久しい。新規参入も多く、同じやり方を続けていたのでは、長期的な成功は難しい。今回のイベントでは、実際にEC企業を運営している企業を始め、LTVを向上させるためのサービスを提供している企業に登壇してもらった。そのそれぞれのポイントを紹介する。
顧客実感を考えたセグメントでCRMを活用する
第一部の登壇企業である株式会社プラスアルファ・コンサルティングは、CRM/MAツールを利用した『カスタマーリングス』システムを提供し、通販事業のCRMを軸に500社を超える企業との契約実績を持つ。
カスタマーリングス事業部セールスコンサルティングGの山本氏は、CRM/MAツールを上手く活用しきれていない企業が多くある現状について、具体的な課題とともに対策を語った。
「ツールを導入している多くの企業は、需要な分析フローがブラックボックス化していて、誰に何をやっているかが見えない状態で進んでいることが多い。また、マーケティングの現場では、大量のデータは取れているのに扱いきれていなかったり、作業負荷が増えて新しい施策にも手が回らないなど、多くの課題が挙げられます。
それらは、①一人ひとりの顧客を理解する ②顧客ごとの最適なコミュニケーションを図る ③顧客の反応を効果検証し新たな施策を考える という3つのポイントを押さえてセグメントを整理することが鍵となります」
CRM/MAを有効に活用し、通販会社の業務効率化へと導いてきた実績を持つ『カスタマーリングス』システムを取り込む重要性も含めて、山本氏はこう続けた。
「結局はお客様が置き去りになっている事が大きな要因です。ツールの課題を検討していく上で、データを統合し、どんな分析・対象抽出にするか、それによってどんなアクションを考え、効果測定するかという流れがあるかと思います。しかし、それで終わりではなく、そこから振り返ることが大事なのです。フィードバッグも含めた取り組みを検討フェーズで考えられることで、運用として定着するのではないでしょうか。
『カスタマーリングス』は、通販会社が持つ様々なデータをカスタマイズせずに統合でき、定量だけでなく定性のデータも取れるので顧客一人一人の見える化が可能です。また、重要なセグメントを自由に設定できるため、最適なシナリオ設計ができる。つまり、先で述べた3つのポイントをしっかり網羅することが可能になるのです」
CRMにおいてセグメント作業の重要性が理解できたところで、メールでの全配信を例に挙げ、“伝わる”から“伝える”配信を考えた顧客実感型の戦略について解説した。
「全配信すると、開封率が少ないのが現状です。裏を返せば、セグメンテーションをしっかり行い、対象を絞ると開封率が高くなるのです。例えば、『タイトルのA Bテスト』というものがあります。10万人に配信するメールに対して、まず1万人にABCの3パターンのタイトルを3分割して配信後の反応をみます。そこで反応の良かったものを残りの9万人に送る。これを手作業でやると大変時間がかかりますがカスタマーリングスなら1回の設定で自動的に配信を行います。また、メールがよく開封される時間をユーザー単位に情報を付与する。こうした結果を俯瞰的に確認することができるので、全配信を減らしつつ最適な勝ちパターンを作っていくのです。
顧客を知って提供価値を磨いたり、セグメントでの配信で“伝わる”戦略を試みることがLTVの向上につながるのではないでしょうか」
オウンドメディア以外で成果を出すコンテンツ施策
第二部は、コンテンツマーケ・オウンドメディア・SEO対策分析ツール『MIERUCA』サービスを提供する株式会社Faber Companyが登壇。「オウンドメディアじゃないコンテンツマーケで150%の成果を生み出したブランディアの手法」をテーマに、S E O対策の観点から、現場で活かせるコンテンツマーケティングのノウハウを伝授した。
まず、Googleでの検索順位を上げるシステムを理解し、ユーザーのCVを上げる施策を行うことが大切だと語った上で、サイトを検索上位にするには情報不足を補う他に「サジェストキーワード」に注力したと言う。サジェストキーワードとは、対象と一緒に検索されやすいキーワードをGoogleが表示してくれる機能のことである。
「ブランディアを例にすると、ユーザーの欲している情報は、価格やエリアや状態、種類やシリーズが挙げられます。そこで、キーワードの順位やヒットしているページの調査、どういう意図を持ってユーザーが検索しているかを調べて、必要なページが何かをグルーピングしていきました。文字量ではなく検索意図に合わせて最適なページ分割を行うことで、サジェストキーワードの順位が2位まで上昇したのです。SEOは時間がかかるイメージですが的確な施策を行っていけば数ヶ月でも結果が出せます」
ところが、肝心のアクセス数やCVは増える気配がなかったと続けた。2位のクリック率は1位のキーワードの20分の1程度だと言う。そこで、上位表示をさせてアクセスが増えそうなキーワードを考えることも必要となってくる。
「次に注意すべきは、順位が上がっていないキーワードに対して検索結果を確認していただきたいということ。そして、ユーザーが使いやすいキーワードをあらかじめ設定しておくファセットナビゲーションが重要なファクターとなります。業界知識がなくとも現実的なファセットページを作ることはできるので、社内での役割分担もしやすく非常に効率も良い。こういったことをブランディアが抱える7000ブランドに水平展開したところ、数ヶ月でアクセス数が150%に上がり、CV数も増え、結果的に125%増になったのです。
記事コンテンツの集客で最も重要なのは、検索意図を反映させること。SEOは、今欲しい、探しているというユーザーに対してちゃんと答えを出してあげるために、商品一覧にこそ検索意図を反映させるべきたと考えています。そのため、まずはファセットナビゲーションを作り、実際の検索から商品を探す切り口を発見し、商品ページの改善を試みるべきでしょう。
1ページで網羅すると言う考えではなく、サイト全体で網羅することを考えたり、検索結果を確認して優先順位の仮説立てをすることが集客UPにつながります。見ない人が多い検索結果にこそ必ず答えがあるのです」。
手厚いサポートで信頼を獲得するオーダーメイドサービス
第三部は、株式会社FABRIC TOKYOが登壇。メンズビジネスウェアを扱うECブランド「FABRIC TOKYO」を軸に、9月には月額制サポートのサブスクリプションサービス「FABRIC TOKYO 100(ハンドレッド)」の提供を開始。
今回は、「ブランド設立以来重要視してきたユーザーとのリレーション構築」をテーマに、スーツやシャツを手軽に買うことができるオーダーメイドサービスについて、D2Cという新しいビジネスモデルと合わせて解説した。
「オーダーメイドと聞くと、敷居が高く、時間もかかって大変そうだというイメージがありますが、その面倒なイメージを払底し、気軽に適正な価格でオーダースーツが買える“スマートオーダー”システムを構築しました。
これは、店舗でお客様が体を採寸してクラウド上に情報を保存し、オンラインでの注文を可能にするシステムです。売り上げは3期連続200%の達成見込みで、パーソナルデータの保有数は10万件以上になります。また、年間のリピート率は普通のアパレルのECに比べて1.5倍です。このリピート率の高さは、“売らない店舗”があるから。売り上げノルマを追うのではなく、お客様の満足度の向上を追っており、来店後はオンラインでのコミュニケーションに特化しているのがこのサービスの特徴です。
ビジネスモデルのD2Cは、データドリブン分などによって短期間で急成長を目指すライフスタイルブランドで、複数のチャネルで直接お客様との接点を持つことができるwebサイトと同じような設計を行っています。距離が近いことでブランドの魅力をちゃんと伝えることができ、素早く商品のサービスや改善に回すことができることが最大の強みなのです」
D2Cは急成長しているブランドが多く、2019年以降は未上場でもユニコーンに値するブランドが増えている。ではなぜD2Cが増えてきたのか。それにはAmazonの存在が一番の理由だと語る。
「まだまだ拡大中で中では売れない商品があり、それをD2Cのブランドが構成することによってその穴を埋めています。裏を返すと、Amazonで売れる商品はD2Cでは売らないことです。また、お客様の悩みは『EC上だと完成度がわからない』『生地感や色がわからない』という悩みが多い。そう言った人のために無料の生地サンプルを付与することで、その後の購入率はぐっと上がっています。SNSの活用としては、サービスの紹介などで企業側の一方通行がよく見られますが、我々は情報発信の場ではなく情報を受け取る場所と考え、それをサービスの改善として使っています」
こういったブランドへの体験満足度を高められるコミュニケーション作りを図り、お客様の声を集めて利便性の高いプロダクトを生み出しているのだ。
まとめ
登壇企業の戦略は、顧客データを有効活用するシステムや、Googleの検索エンジンを利用したコンテンツマーケティングなどが挙げられたが、共通して「顧客をよく知る・知ろうとする」ことこそが施策の重要なポイントではないだろうか。
新規顧客の獲得や、優良顧客の育成に熱をあげるEC業界で一歩抜き出るには、有効なツールを活用したり、顧客との良好な関係を構築することが必要だと言えるのではないでしょうか。