OMO・BtoB EC・越境ECまで! 生活の木が実現するマルチ展開の背景とは【生活の木 セミナーレポート】

ECのミカタ編集部

ECのミカタが2024年10月31日に開催した「Shopify活用最前線カンファレンス2024」。当日はShopify Japanによる基調講演を皮切りに、Shopify運用に成功した事業者や、Shopifyと連携したサービスを提供する企業がセッションを行った。

その一社として登壇した株式会社生活の木は、ハーブやアロマをはじめとする自然の恵みを生かした商品に強みを持つメーカーであり、直営店での販売から自社EC、モール、BtoBと、幅広い販路でビジネスを展開している。今回は同カンファレンスから、生活の木でEC事業本部 マネージャーを務める中村佳央氏と、ECのミカタ(MIKATA株式会社)の吉見紳太朗によるパネルディスカッションをレポートする。

Shopify移行前は「わからない」だらけ!?

MIKATA株式会社 ECのミカタ事業本部 情報システム開発部 リーダー 吉見紳太朗(以下、ECのミカタ 吉見) Shopifyの活用について伺う前に、貴社が展開しているEC事業について教えていただけますか。

株式会社生活の木 EC事業本部 マネージャー 中村佳央氏(以下、生活の木 中村) 弊社は「自然」「健康」「楽しさ」を提案するライフスタイルカンパニーとして、Shopify Plusで運用している3つの自社サイト(BtoCの2サイト、BtoBの1サイト)に加えて、楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピングといったモールにも出店しています。BtoBは主にサロン様や薬局様に向けた小口卸の通販を行っています。

※画像提供:株式会社生活の木(カンファレンス登壇資料より)

ECのミカタ 吉見 貴社はECだけでなく全国で実店舗を運営されています。そのためOMO(Online Merges with Offline)の取り組みが重要になってくると思うのですが、以前はそこに課題があったと伺いました。どのような課題だったのでしょう。

生活の木 中村 ユーザビリティの不足とデータの分断のため、結果的に施策の立案が論理的に行えていませんでした。

直営店は百貨店に入っている店舗が中心で、POSデータが取れず、お客様の動向が見えていませんでした。ポイントシステムは別途フルスクラッチで導入していましたが、それでは消費額しかわからず、誰が何を買ったのかわかりません。ECでの購買履歴はお客様のメールアドレスと紐づいていましたが、OMOの推進に必要な店頭でのマーケティングデータが取れていなかったんです。

また自社ECのカートシステムはほぼフルスクラッチで制作したものだったので、ちょっとしたサイト改修でも数百万円の費用がかかっていました。さらにBtoCとBtoBとデータが混在していたことも問題でした。ユーザーに対する解像度が低く、買っていただいたお客様が“toB”なのか“toC”なのかもわからず、広告の出稿先も整理できない状態でした。

顧客データの一元化でOMOが見える化&加速

ECのミカタ 吉見 そうした中で、2024年に自社サイトをShopify Plusに移行されました。どのような点が変わり、どんな効果を感じていらっしゃいますか。

生活の木 中村 まず変わったのは、CDP(Customer Data Platform)です。お客様に関する情報は全て、アプリを組み合わせることでShopify Plusに寄せています。移行を機に全直営店に「スマレジ」を導入し、「Omni Hub」を介してお客様の情報をまとめ、「どこポイ」を使ってポイントの管理もShopify上で行っています。一部の物流・配送機能だけは弊社の基幹システムを使っているのですが、Shopifyを基軸にしてとてもシンプルになりました。

画像提供:株式会社生活の木(カンファレンス登壇資料より)

店舗とECのデータ管理が一本化されたことで、お客様に対する解像度が高まりました。今までは、なんとなく「リピーターが多いよね」と思っていた程度でしたが、現在は複数回リピートしてくれる方の購入の傾向が把握できたり、逆にリピートいただけていないお客様へのアプローチに課題があるのではないかといったことも見えてきました。

例えばポイントアップキャンペーンはロイヤルカスタマーの方には利用いただけますが、“1回限り”のお客様にはあまり響きません。客層に合わせたマーケティングが展開できるようになったことは大きな成果です。弊社では分析用アプリをBI(Business Intelligence)ツールと連携し、商品軸、お客様軸といったさまざまな角度でデータを活用しています。

ECのミカタ 吉見 OMO施策といえば、先ほども例にあがったポイント制度は重要だと思います。データを統合することで実店舗にはどのようなメリットがあったのでしょうか?

生活の木 中村 Shopify連携でポイントが自動付与されるようになったことで、複雑なポイント制度の運用におけるオペレーションミスや業務負荷を削減できました。弊社では公益社団法人アロマ環境協会の会員様はポイント5倍、JAF(一般社団法人日本自動車連盟)の会員様は50ポイントをプラスする(※1)といった特典があるのですが、以前はそれぞれの処理を店頭で従業員が計算して手打ちで入力していましたので。また、実店舗でお客様から「私が前に購入した商品はどれ?」と質問いただいた際にもマイページに履歴が残っているのですぐに答えられるようにもなり、顧客体験の面も向上しました。
※1:Tree of lifeメンバーシップ

BtoBの顧客対応人数が1/3に

ECのミカタ 吉見 貴社はBtoB領域にも販路をお持ちです。Shopifyへの移行に際して、BtoBはどのようにリニューアルしたのでしょうか?

生活の木 中村 BtoB向けショップの「生活の木 ビジネススマート」は、登録審査から債権管理までの行程がWebで完結するようになりました。また、約11人いた専従スタッフを3.5人に削減でき、浮いた工数はスタッフに本来やってほしかった施策立案に回せています。

従来は紙で登録を審査し、お客様からは毎日発注のFAXが30通も届き、在庫切れや未払いのお客様に電話をかけるなどの業務に多くの人員が割かれていました。特に、督促を受けて喜ぶ方はいないので、従業員も“心を捨てて”取り組む業務があったことは事実です。

改修後の審査はフォームで完結するためアプリを確認すれば終わりですし、登録後すぐに注文したい方も最短数時間で発注可能になりました。債権もShopify ペイメントと「Paid」でアウトソースしたため、未回収債権などのネガティブな業務負荷がなくなりました。Shopifyアプリの組み合わせだけで、同じメンバーがメルマガ作成など、CRMや企画立案を行えるようになったことがうれしいです。

画像提供:株式会社生活の木(カンファレンス登壇資料より)

事業構造の変革とShopify一本化で「利益が」3~7%UP

ECのミカタ 吉見 ポジティブで高付加価値な業務へと従業員がシフトできたのですね。事業構造に変化はありましたか?

生活の木 中村 2024年9月に組織体制が変わり、同じお客様に対しては同じ部署が追跡、販促できるようになりました。現在の組織ではCRMをEC部門に統合し、ブランディング部門は広報に、カスタマーサポート部門はお客様対応に特化しています。

結果、現場の定性的なフィードバックによって進んでいた販促が、Shopifyから得たデータに基づいて定量的に判断できるようになり、施策の質と速度が上がりました。

ECのミカタ 吉見 そうした結果、利益・売上にも変化はありましたか?

生活の木 中村 店舗でもメルマガの効果を計測できるようになったことで、お客様のセグメント化が進み、CVが上がりました。地方の百貨店減少で実店舗の売上が落ちる中でも、総売り上げは維持できています。コスト面では以前のフルスクラッチシステムにかかっていた運用費と修繕費が激減し、月によって約3%の営業利益が向上しているので、大きな経営的恩恵を受けられています。

画像提供:株式会社生活の木(カンファレンス登壇資料より)

体験型サービスと海外進出に意欲

ECのミカタ 吉見 着実にECで収益を伸ばされているなか、今後のShopify運用の展望をお聞かせいただけますか?

生活の木 中村 体験の提供と、越境・インバウンド需要へ挑戦したいと思っています。Shopify Plusを導入したことで、ロイヤルカスタマーは「体験」を求めていることがわかってきました。そこで、スクールやワークショップなどをオンラインで予約できるサービスを検討しています。

越境に関しては、Shopify Plusのプラン機能である、9ストアまでプラン内で展開できる要素を活用したいと考えています。インバウンドのお客様も増えていますし、シンガポールや台湾へ進出することで新たな販路を開拓しようとしています。

Shopifyの導入はネガティブな業務からの脱却や、施策効果の可視化などを通して従業員のモチベーションを改善する効果がありました。さらに、アプリを使えばノーコードで機能を導入できるので、新たな販促への挑戦もスムーズになります。

中村佳央(なかむら よしお)
株式会社生活の木 EC事業本部 マネージャー AEAJアロマテラピーアドバイザー&ナチュラルビューティスタイリスト。2014年株式会社生活の木に入社。店舗・マーケティングの部門を経て2022年よりEC事業本部を統括している。2024年に自社ECをshopifyにリプレイスを行った。


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