「持続的な成長のため」送料無料化ライン統一3/18に実施【楽天新春カンファレンス2020】

利根川 舞

1月29日、楽天株式会社(以下、楽天)は「楽天新春カンファレンス2020」を開催。カンファレンスの冒頭には代表取締役会長兼社長の三木谷 浩史氏が登壇し、これまでの振り返りと今後の展望について語り、3月18日に実施される「送料無料ラインの統一化」についても言及した。

注目の”送料無料ラインの統一化”

楽天市場において、注目されている”送料無料ラインの統一化”。

この施策に対して、出店店舗による反対表明が報道されていたが、楽天としては予定通り実施することを度々主張していた。

「商魂逞しく『商品を安くして、送料で儲けてもいいじゃないか』と思われる方もいるかもしれません。昔はそれでもよかったかもしれない。しかしもうそういう時代ではないですし、ユーザーもバカではありません。ユーザーに詐欺ではないか思われたら、その店舗で買わないだけでなく、皆さんの店舗で商品を買わなくなってしまうんです」と三木谷氏。

意図的に商品を安く見せることで誘導し、送料を足した合計金額になると他の商品よりも金額が高くなってしまう商品や、トータル金額がわかりにくい商品も少なくなかった。こうした送料のわかりにくさに対して、ユーザーからは不安や落胆の声も寄せられていた。

また、楽天の調査によれば、ECサイトでの購入にあたり、送料について消費者の不満は高く、最終金額がわかりやすい表示を好む結果が出たことから、「送料無料ラインの統一化」と至った。

「Amazonに負けている理由は送料」

「Amazonに負けている理由は送料」

講演の冒頭で、グローバル規模で激化するEC市場のなかで、Amazonの成長について触れていたが、独自で実施しているNPS調査においても未だにAmazonの存在は大きいようだ。楽天市場に対する数値も上昇しているものの、一歩及ばない。

「NPS(ネットプロモータースコア)の数値がAmazonに近づいてきていると申しましたが、負けている理由は送料なんです」と三木谷氏。

送料が原因で購入を諦めた7割のユーザーも送料がわかりやすければ、楽天市場で購入してくれる、という算段だ。

「だからこそ、送料無料化ライン統一を何が何でも成功させたいと思っています。海外の事例でこういう施策を行った時、だいたい流通総額が30%〜40%上がります。確実にとは言えませんけども、おそらく十数%は流通総額が上がるはずだと確信しています」と三木谷氏は力強く語った。

アリババが淘宝網(タオバオ)から「天猫」が、Yahoo!ショッピングから「PayPayモール」が生まれたように、商品や出店者を厳選したモールを生み出すという手段も取れたはずだ。しかし、三木谷氏は次のように語る。

「僕は楽天市場の5万店舗の中から一部を取り出して、送料を統一したモールを作るということはやりたくないんです。あくまでも、5万店舗が一体となって、多様性をキープしつつ、安心・安全・便利、消費者が迷わないサイトを実現していかなければ、楽天市場の持続的な成長はあり得ないと考えています。

当然、送料を変えることは皆さんにとっても大変なことと理解していますが、これはワンデリバリーのファーストステップであり、みなさんが成長していくためには必要なことだと思っています。ぜひご理解をいただいて、みなさんと一丸となって成長していきたいと思っています」。

「なぜ楽天市場が負担しないのか」という声も

AmazonではAmazon.co.jpが発送する商品に限り、注文金額が2,000円(税込)以上の場合、通常配送料を無料としている。そうした事例があるだけに、今回の楽天市場での送料無料化ライン統一では、店舗側の負担が大きく感じられ、「なぜ楽天市場が負担しないのか」という声も挙がっている。

「世の中の報道とか見ていると、店舗さんの負担が増えている、楽天は何もしていないと報道されている。しかし、我々は2,000億円の投資をして、FBAよりも安い価格で、便利で効率性の高い物流システムを構築し、『ワンデリバリー』を提供しています」と三木谷氏は述べている。

ユーザーに対する分かりやすさがファン化につながり、結果的に店舗にとっても利益につながる。そして、楽天市場も店舗の負担を減らすべく、努力をしているという主張であるが、実施されてみなければわからない部分や不安も大きく、”2,000億円の投資”が店舗にとって響いていないというのが実情である。

3月18日の実施を見据え、販売戦略や売価の変更を行わねばならない店舗も少なくない。退店という選択もあるが、楽天市場での出店を選択するのであれば、折り合いをつけて売り上げを、そして利益をあげていく工夫をしなければならないだろう。

【店舗が対応すべきこと】
①配送方法設定の確認
他商品と同梱できない商品は「単品配送方法」を利用する
②店舗ページ等の送料に関する表記の見直し
③商品価格の調整検討

【スケジュール】
・1月:RUx動画、データ確認ツールの提供
・2月18日:配送機能の追加
単品配送設定、宅配便(特定送料)の追加
・3月18日:共通の送料無料ライン開始


記者プロフィール

利根川 舞

ECのミカタ 副編集長

ロックが好きで週末はライブハウスやフェス会場に出現します。
一番好きなバンドはACIDMAN、一番好きなフェスは京都大作戦。

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EC業界を発展させることをミッションに、様々な情報を発信していきます。

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