楽天への「緊急停止命令」を申し立て 今後の送料無料問題の行方は?

ECのミカタ編集部

公正取引委員会は東京地裁に独禁法に基づく緊急停止命令を申し立てた。楽天側はこの申し立てに際して「公正取引委員会による緊急停止命令の申立てについて」と題した文書を公開している。

16年ぶりの「申し立て」

楽天が3.980円以上の購入に対する送料無料ラインの設定について2020年3月18日からの実行を予てから表明する中、この2月28日に公正取引委員会は東京地方裁判所に対して独禁法に基づく緊急停止命令を申し立てた。公取委による同様の申し立ては実に16年ぶりだという。

楽天側はこの申し立てに際して「公正取引委員会による緊急停止命令の申立てについて」と題した文書を公開した。

「公正取引委員会による緊急停止命令の申立てについて」全文

「本日、公正取引委員会は独占禁止法第70条の4第1項の規定に基づき、当社に対する緊急停止命令の申立てを東京地方裁判所に対して行いましたのでお知らせいたします。本件は、当社サービス『楽天市場』における「共通の送料込みライン施策」(以下『本施策』)に関し、独占禁止法第19条(同法第2条第9項5号ハ)違反の疑いがあるとしているものです。

当社としましては、今回、緊急停止命令の申立てを受けた事実を厳粛かつ真摯に受け止め、裁判所の手続きに適切に対応してまいりますが、引き続き、本施策に関しましては法令上の問題はないものと考えております。公正取引委員会の調査につきましては、ご理解を得るべく、全面的に協力してまいります。

当社は、『楽天市場』の出店店舗様の成長を支援するため、従前より各種施策の充実化を図ってまいりました。本施策により退店を検討される店舗様へは特別措置を講じております。さらにセーフティネットとしての新たな支援施策を提供することを出店店舗様へご案内し、店舗様の売上や利益について、ご不安やご懸念を解消するとともに、今後も店舗様、ユーザーの皆様の声に真摯に耳を傾け、本施策の改善に役立ててまいります。

なお今後の経過等につきましては、適宜お知らせいたします。

以上」

送料無料問題の長期化の可能性も

送料無料問題の長期化の可能性も

楽天の送料無料ラインの設定に対しては、一部の楽天市場出店者によって構成される「楽天ユニオン」が結成され、公取委への調査を求めており、それにもとづいて同委員会による楽天への立ち入り調査が行われていた。

通常、調査が行われる場合、違反行為を停止させるには「排除措置命令」が発令されることになるが、楽天による送料無料ラインの設定が2020年3月18日に迫るなか、「排除措置命令」の発令には1年前後の期間が必要となることから、比較的短期間で当該措置の停止を命ぜられる、「緊急停止命令」の申し立てを選択し、実施に踏み切ったものとみられる。緊急停止命令については、裁判所の裁定まで長い場合は3ヶ月を要するが、基本的に過去の例では公取委の主張が全て裁判所に受け入れられている。

今後の楽天の出方には次のようなものが考えられる。あくまで可能性だが、自社独自の判断として送料無料ラインを一時的に停止するか、あるいは裁判所の裁定によって緊急停止命令が発令された場合には、それに従って送料無料ラインの導入を一時的に見合わせることも考えられる。またこれも可能性になるが、緊急停止命令を無視して送料無料ラインを導入し続け、その後の排除措置命令まで導入を続けることも考えられる(その場合は30万円以下の過料が科されることになる)。いずれにしろ長ければ年単位で公取委と楽天側の間で、送料無料問題に関するやりとりが行われる可能性が高いとも考えられ、両者の対応に注目と言えそうだ。

◆考えられる今後の流れ

<緊急停止命令あり>
ケース1:予定通り送料無料ラインを導入・その後も命令を無視
ケース2:命令まで予定通り送料無料ラインを導入・命令後に導入見送り
ケース3:命令を待たずに楽天独自に送料無料ライン導入を見送り

<緊急停止命令なし>
ケース1:予定通り送料無料ラインを導入
ケース2:楽天独自に送料無料ライン導入を見送り

いずれの場合でも楽天側の送料無料ラインへの対応により、措置命令の審査が行われる可能性がある。


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