スマホ利用のうち92%はアプリが占める 進むECの『スマホシフト』時代のカギを握るアプリの利用状況レポートが公表される
視聴行動分析サービスを提供するニールセン デジタル株式会社(東京都港区、代表取締役社長 宮本淳)は、スマートフォン視聴率情報「ニールセン モバイル ネットビュー(Nielsen Mobile NetView) 」のデータをもとに、2019年の12月の日本におけるスマートフォンの利用時間やアプリの利用個数などの利用状況レポートを公表した。ここではその概要についてポイントを絞って見て行く。
アプリ開発には「差別化」がさらに重要に
「ここ数年スマートフォン利用が加速する中で、アプリは『目新しいもの』から『生活に欠かせないもの』になってきました。日々新しいアプリがリリースされ、日常の様々な場面で活用できるものが数多く存在します。しかし、消費者が一日に各アプリに費やせる時間には限りがあるので、アプリのマーケティング担当者や開発者は新しい機能を追加するだけではなく、競争が激化する市場で差別化に力を入れることが求められてきています」
スマホ利用のうち92%はアプリが占める
日本においては、スマートフォン利用時間のうち92%はアプリが占めていることが分かったそうだ(図表1)。昨年と比較するとアプリが占める割合は8ポイント増加し、アプリの利用はスマートフォン利用時間増加だけでなく全体のメディア視聴にも大きく貢献していることから、アプリのマーケティング担当者やアプリ開発者にとっては大きなビジネスチャンスをもたらしていることが分かるとしている。
利用されるアプリは増えても常に使うものは限られる
アプリの利用時間増加とともに1ヶ月に利用されるアプリの数の増加も見られた。18歳以上においては1ヶ月に1回以上利用される数は平均34.6となり、昨年から約4個増えていることが分かった。増加数が最も多かったのは18-34歳で、昨年から4.5個増加している結果となっていた。
一方で月間利用されるアプリの数は増えても、毎日利用されるアプリが増えるとは限らないようだ。18歳以上が毎日(月間31回以上)利用するアプリの数は8.8個、昨年と比べると0.8個の増加にとどまった。消費者はアプリの選択肢が増えている中でも、日常的に利用するアプリは使い慣れているものにとどまる傾向にあることがうかがえる(図表2)。
いかにアプリの利用頻度を高めるか
数年前までは1カテゴリーにつき1アプリが利用されることが多く、各カテゴリーで利用されるアプリが固定化されている傾向にあったことから、月に利用されるアプリの数には変動が見られなかったそうだ。
一方で選択肢が増えることで、その傾向が徐々に変わりつつあるともしている。図表3は昨年からアプリの増加数が最も多かった若年層において、月間に利用されるアプリの個数が増加したカテゴリー上位5つを示している。エンターテイメントカテゴリーでの増加が最も多く、TikTokの利用拡大や様々な動画配信サービス、漫画やゲームアプリの利用者の増加が影響していることが分かった。
Eコマースやファイナンスカテゴリーにおいては、新しいフリマアプリや各ペイメントアプリが大きく利用者数を伸ばしている。このようなアプリは同じカテゴリーの中で利用時間を奪い合う代わりに、ニッチを見つけ出し、消費者が同じカテゴリー内でも複数の新たなサービスカテゴリーを利用する環境を生み出すことで利用者数の拡大を可能にしているのではと分析している。今後各アプリのマーケティング担当者や開発者はエンゲージメントを高め、利用頻度を高めることが重要な課題になりそうだ。
ユーザーに寄り添うアプリを作ることが求められる
調査に際して同社のアナリストのコヴァリョヴァ・ソフィヤ氏は、次のように述べている。
「アプリの利用時間や利用される数の増加は、各アプリのマーケティング担当者や開発者に絶好のビジネスチャンスをもたらします。このような環境の中で成功の鍵となるのは、どれだけ消費者に寄り添うアプリとなり毎日利用してもらえるか、ということではないでしょうか。消費者が日常的に利用するアプリは、普段使い慣れているものを選択する傾向にあります。豊富にあるオプションの中から自社のサービスを選択してもらうためにも、アプリのマーケティング担当者や開発者は、共感できるコンテンツの提供やアプリのUI・UXの向上、または新しいニッチを見つけ出しサービス展開するなど、高品質なユーザー体験を提供することが一層重要になるのではないでしょうか」
ECビジネスを展開する上においてもアプリの存在感は年々増大している。特にスマホからのEC利用が増えており、それを示すいわゆる「スマホシフト」は近年、特に顕著になっている。まさに「手の平の上のマーケティングツール」とも言われるスマートフォン上で利用されるアプリはビジネスの成否にも直結する重要な要素となっており、今回の調査からもそれが垣間見える結果となったようだ。