新型コロナ禍で進むファッション市場のEC移行 リアルショップでの売り上げ減少と対照的にEC利用は拡大

ECのミカタ編集部

オンライン試着プラットフォームを提供するファッションビッグデータカンパニーの株式会社Virtusize(代表取締役:上野オラウソン・アンドレアス、本社:東京都港区)は、国内大手ファッションEC事業者の300万件を超える購買データを分析し、ファッションECへの新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による影響を調査した。ここではその概要についてポイントを絞って見て行く。

調査概要

[調査期間①]
COVID-19の影響で多くの公立学校が閉鎖を決定した2020年2月28日から2020年3月23日まで

[調査期間②]
調査期間①と同じ数の曜日を含む昨年2019年3日1日から2019年3月25日まで

[調査データ]
国内大手ファッションEC事業者の300万件以上の購買データ

ファッションECの売り上げと注文額は堅調

ファッションECの売り上げと注文額は堅調

同社によればファッションECの売り上げは昨年2019年の同時期に比べて約20%増加している。国内ファッションEC市場の過去5年間の年間成長率が10~20%であることを考えると、この成長は高水準であると言える。興味深いことに、注文回数が増えているだけではなく、購入単価も上昇しているが、1注文あたりの商品数についてはほとんど影響がないとしている。

新型コロナでファッションECの売り上げに重しか

新型コロナでファッションECの売り上げに重しか

オンラインファッションECの販売傾向をより詳細に把握し、収益への影響に関する考察と掛け合わせるために、COVID-19の影響が大きい期間と、前年2019年の同期間について時系列分析を行った。それによるとCOVID-19の影響が大きい期間でも売り上げは堅調であることがわかるとしている。

一方でCOVID-19の影響によって売り上げの成長率が鈍化した可能性もありそうだとも分析している。成長率への影響は今後数週間で、より明らかになるかも知れない。

感染拡大で週末のファッションEC消費が拡大

感染拡大で週末のファッションEC消費が拡大

ファッションECでの購買は通常、週末に行われる傾向がある。興味深いことに、COVID-19の影響により、この傾向はさらに顕著になっているようだ。土曜日と日曜日の2日間の合計売上割合は全体の37%を占めていた。

これは週末に外で買い物をするよりも屋内に滞在する人が増えた結果であるという可能性も考えられるとしている。このことを考慮すると消費者へのアプローチは週末に行った方がより効果的であるという見方もできそうだ。

新型コロナで購買する時間が早まる

新型コロナで購買する時間が早まる

従来、ファッションECでの購買数は仕事先や外出先から帰宅した後の時間と思われる午後9時頃から増加し始めていた。一方、現在では購買数が増加し始める時間は午後7時頃からとなっており、購買自体が早い時間帯に移っている傾向があることがわかったそうだ。

これは外出・外食をする人が少なく、早い時間に帰宅する人が多いことが原因である可能性があるとしている。社会活動と距離をとる動きが広がるにつれて、この傾向は少なくとも一定期間、継続することが考えられる。その場合、購買時間帯に合わせた販売促進施策の調整も行う必要がありそうだ。

EC移行はさらに進む

調査に際して同社では次のように述べている。

「当社のデータは、ファッションECの売り上げが前年比で約20%増加していることを示していますが、外部ソースからの複数のレポートでは、オフラインチャネルでの売り上げが劇的に減少したことを示しています。COVID-19の影響により、2つのチャネル間のバランスに大きな変化が生じたようです。ファッション全体におけるオンラインで販売のシェアについては、昨年は11~12%程度と推定されていますが、現在は20%以上となっています。

オンラインとオフラインチャネルでの販売の変化がどの程度続くかを結論付けることは、まだ時期尚早と考えます。しかし、欧州や米国などの成熟した消費市場においては、オンライン購買への移行はさらに進んでおり、このCOVID-19の影響が広がる以前でも、20%を超えていました。現在の状況は、日本においても今後ファッションECでの販売が大きな割合を占めていくことをただ単に示しているのかもしれません」

このように「巣ごもり消費」はファッション市場でも進み、それによってECでの売り上げが拡大していることが明らかとなった。新型コロナとの戦いが中長期線になるのは必至となる情勢で、こうした傾向もしばらくは続くことになるだろう。また同社も述べているように、仮に感染拡大の影響を一旦、度外視しても、同市場におけるEC化の流れはこれからも進むものとみられ、各事業者としても業界と市場の構造変化、そして消費動向のトレンドに対応していく必要がありそうだ。


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