EC/通販事業者のビジネス課題 コロナ対策は2.3ポイントにとどまり、システムの安全性に関心が高まる

ECサイト構築/通販システム構築・支援を主要事業として手掛けている株式会社エルテックス(本社:神奈川県横浜市保土ヶ谷区、代表取締役社長:森久尚、以下エルテックス)は、通信販売事業関与者の実態調査、新型コロナウイルス感染症の流行下での「EC/通販事業者の意識」「テレワークなど業務形態の変化による業界情報の収集状況」と「通販事業全般の課題」「困り事・悩み事」などを集計・分析した調査結果の2020年版を発表した。

通信販売に関する定期調査2020年版

エルテックスでは2000年頃から、ECサイト/通販システムの開発及び構築を積極的に推進し、関連する市場動向把握のために、今回で15回目の独自調査「通信販売事業関与者の実態調査2020」を実施した。

調査では、通信販売事業に携わる担当者の「通販事業へ対する課題」「悩み事・困り事」など昨年と同様の内容定点調査に加え、「新型コロナウイルスの発生・流行」によって影響を受けている実情について集計・分析を行った。
今回は、その第二弾としてEC/通販事業者における「通販事業へ対する課題」「悩み事・困り事」の調査結果を公開する。

システムの安全性に関心が高まる

システムの安全性に関心が高まる

「あなたの会社、事業所の通信販売事業について、ビジネス上重要と思われるものをいくつでもお選びください」と質問をした。(複数回答)

今回、「通信販売事業の課題」に関する調査項目では、「事故が起きない安全なシステム強化」項目のスコアが、前年比で+11.7%の2ケタ増となった。また、年商別のグラフでは、年商100億円以上の企業の過半数以上にあたる53.6%がこの項目を選択した。情報処理推進機構(IPA)がまとめている「情報システムの障害状況一覧」では、2019年に報道された情報システム障害が122件あったと報告された。2017年の48件、2018年の66件に比較すると非常に高い数値となったことも影響していると考えられる。

その他、前年比でスコアが上昇した項目では、「よく売れる商品の開発」+8.3%、「売り上げの拡大」が+5.3%とやや目立った数字となった。

また、本年追加した「新型コロナウイルスなどの感染症対策」に関しては、全体で31.7%が課題と捉えている一方で、約2/3は「課題としていない」という結果であり、年商による大きな差異も見られなかった。

「事故が起きない安全なシステム」項目では、年商によって回答の数値が大きく異なる結果となった。年商100億円以上の事業者では53.6%であるのに対し、年商1〜10億円未満では35.7%と17.9ポイント差があり、意識の違いが顕著となった。

ビジネス上、最も重要なのは「売り上げの拡大」

ビジネス上、最も重要なのは「売り上げの拡大」

「あなたの会社、事業所の通信販売事業について、ビジネス上最も重要なもの一つをお選びください」と質問をした。(単一回答)

ここ5年間での変化はあるものの、前年比で大きく変動したものはなかった。新型コロナウイルス対策の項目は2.3ポイントで、EC/通販事業者にとって「ビジネス上の大きな課題」とは言えないことがわかった。

「広告メディアの使い方や広告投下の配分」が悩み事・困り事の上位へ

「広告メディアの使い方や広告投下の配分」が悩み事・困り事の上位へ

「通販事業全般(EC:エレクトロニック・コマースを含む)のお仕事について、過去〜今現在での悩み事や困りごとで当てはまるものをいくつでもお選びください」と質問した。(複数回答)

EC/通販事業者の「悩み事・困りごと」の質問項目では「広告メディアの使い方や広告投下の配分」が前年比+7.3%スコアが上昇した。過去の調査からも年々スコアは増加し、2016年の約1.5倍となっている。この質問項目でも「新型コロナウイルスなどの感染対策」を選択肢として追加したが、複数回答で15.7ポイント、単一回答で2.0ポイントと低いスコアになった。これらの数値を見ると、EC/通販業界ではビジネス上のインパクトは小さいことが伺える。

「既存の顧客の満足度の向上」課題が上昇傾向

「既存の顧客の満足度の向上」課題が上昇傾向

「通販事業全般(EC:エレクトリック・コマースを含む)のお仕事について、過去〜今現在で悩み事や困りごとで最も重要なものをひとつお選びください」と質問した。(単一回答)

単一回答ではここ5年のトレンドで「新規客の獲得や集客方法」が下降傾向となっている。逆に本年は「既存顧客の満足度の向上」が上昇傾向となっている。消費者全般で、EC/通販で商品を買うという経験は広がっており、こうした中でいかに良質の顧客体験(CX=カスタマーエクスペリエンス)を提供できるのかといったことが悩み事や困りごとであり、課題になっていることが推測される。

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