Amazonが国内2拠点目となるAWS大阪リージョンを開設

ECのミカタ編集部

Amazon Web Services, Inc.(AWS)は日本で2拠点目のスタンダードリージョンとなるAWSアジアパシフィック(大阪)リージョンの開設を公表した。

アジアへのビジネス展開で、さらなるアドバンデージ

Amazon.com, Inc.(NASDAQ:AMZN)の関連会社である Amazon Web Services, Inc.(AWS)は 日本で2拠点目のスタンダードリージョンとなるAWSアジアパシフィック(大阪)リージョンの開設を公表した。すでに2018年2月に一部の顧客に提供されているAWS大阪ローカルリージョンを拡張した同リージョンは、3つのアベイラビリティゾーン(AZ)で構成されている。

具体的には、北京、香港、ムンバイ、寧夏、ソウル、シンガポール、シドニー、東京のアジア太平洋地域の8ヵ所にある既存のAWSリージョンに展開する25のAZに加わる。AWSは世界25の地域に80のAZを展開しており、今後オーストラリア、インド、インドネシア、スペイン、スイスで、さらに15のAZと5つのAWSリージョンの開設を計画しているという。

同社では、新たに開設されたAWSアジアパシフィック(大阪)リージョンを利用することで、ローカルでのアプリケーションの実行、アジア全域にわたるエンドユーザーに対する超低遅延でのサービス提供、そして世界をリードするクラウドサービスの広範かつ高度なテクノロジーの活用が可能になるとしている。

AWSリージョンは、1つの事象が顧客の事業継続に与えるリスクを大幅に軽減しつつ、高可用性アプリケーションでの低遅延の実現に向けて、十分な距離のある物理的に異なる地域に設置された技術インフラのAZで構成されている。各AZ には個別の電力源、冷却システム、物理的セキュリティが備わっており、冗長性のある超低遅延のネットワーク経由で接続されている。

高可用性を重視するAWSの利用者は、アプリケーションを複数のAZやリージョンで動作するよう設計することで、より高い耐障害性を実現できることになる。また、日本の顧客は、スタートアップから大手企業、公共機関まで、コンピューティング、ストレージ、データベース、機械学習および人工知能(AI)、モノのインターネット(IoT)などの先進技術を活用したイノベーション推進のためのインフラを追加で利用できる。さらに国内2拠点目となるAWSリージョンの開設により、災害時においても事業継続に重要な災害復旧アプリケーションをサポートするとしている。

名だたる日本の事業者が重要な業務をクラウドに移行

名だたる日本の事業者が重要な業務をクラウドに移行

日本においては、ミッションクリティカルな業務をクラウドに移行している企業として、ベルシステム24、ジブラルタ生命保険、KDDI、近畿大学、三菱UFJフィナンシャル・グループ、ナブテスコ、NTT東日本、オージス総研、ソニー銀行、プルデンシャル生命保険、三井住友信託銀行、東京海上日動火災などの顧客事業者がいる。

銀行、信託銀行、証券、クレジットカードなどの事業を持つ三菱UFJフィナンシャル・グループ(以下、MUFG)は、2017年に「クラウドファースト」戦略を宣言し、AWSの本格導入を発表した。MUFG 執行役常務 グループCIO 亀田 浩樹氏は以下のように述べている。

「MUFGではアーキテクチャ改革、デジタライゼーションを着実に進めており、AWSを活用して新たなシステムの構築に取り組んでいます。すでにAWSを活用して、銀行内やグループ内のデータを自在に活用できるようにするビッグデータ基盤の構築、AIを用いた大量の手書き入力事務などの効率化、市場リスク管理システムの一部移行、より高度なAIアルゴリズムを始めとする新技術の応用研究などを行っています。こうしたAWSを活用したシステムのなかには、オンプレミスと比較して大幅なコスト削減を実現しているものもあります。当グループはすでに大阪ローカルリージョンを活用してまいりましたが、今回AWSのアジアパシフィック(大阪)リージョンになることで、さらにワークロードやシステムをアクティブに稼働させることが可能になり、多くのお客さまへスピーディーに障害耐性の高いサービスを拡充できます。デジタル活用の巧拙が企業の競争力を左右する環境下、人材の量・質双方の強化・拡充を図り、さらなる価値創造を目指してDXを進めてまいります」

また、ソニー銀行は「フェアである」を企業理念に、個人のための資産運用銀行として 2001 年に開業したインターネット銀行で、外貨預金や住宅ローン、投資信託、デビットカードなどさまざまな金融サービスを提供している。ソニー銀行株式会社 執行役員(システム企画部、システム開発部、システム管理部 担当)の福嶋達也氏は以下のように述べている。

「当社は、2013 年末から一般社内業務システムと銀行業務周辺系システムを段階的に移行し、2019 年末までに全システムの約 80% が AWS 上で稼働しています。これにより、インフラ関連のコストはオンプレミスと比べて最大で 60%削減、インフラ調達・構築期間は半分以下に短縮されています。そして現在、2022 年度に向けてクラウドネイティブなアーキテクチャによる次世代勘定系システムの構築をAWS上で取り組んでいます。AWS の多様なサービスを東京と大阪の両リージョンにおいて活用することで、高い可用性を担保する予定です。引き続き、インターネット銀行としてスピード感のある経営を実現し、お客様に満足いただけるような商品・サービスを提供していきます」

KDDI株式会社は、社内の厳しいセキュリティ基準を満たしたとして、2016年から、AWSをオフィシャルクラウドベンダーとして利用開始している。KDDI株式会社理事 ソリューション事業本部 サービス企画開発本部 副本部長 中島昭浩氏は以下のように述べている。

「AWS Summit Tokyo 2018の基調講演に登壇した際に要望として伝えた、AWS大阪リージョンのフルリージョンへの拡大が、短期間で実現されたことをうれしく思います。KDDIでは現在、電力事業『auでんき』のスマートフォンアプリのバックエンドや、IoTで暮らしを便利にする『au HOME』、QRコードで支払いができるスマートフォンを利用した決済サービスの『au PAY』のサブシステムをはじめとする、60以上ものサービスをAWS上で開発・運営しています。AWSアジアパシフィック(大阪)リージョンを活用し、国内でのマルチリージョン採用によるサービスの安定化を進めます」

1983年に設立された大阪ガスグループ(Daigasグループ)のオージス総研は、コンサルティング、システムインテグレーション、システム開発、ネットワーク構築、サポート、セキュリティソリューションなどを提供するグローバルなITコンサルティングファームだ。大阪ガスグループ企業(Daigasグループ)のITシステムの開発や運営を行う株式会社オージス総研 取締役 執行役員 プラットフォームサービス本部長の中谷 浩介氏は以下のように述べている。

「大阪ガスは、2016年4月にAWSを活用して、日本で初めて家庭用ガス機器分野でIoT技術を導入し、インターネットと常時接続する家庭用燃料電池コージェネレーションシステム(エネファーム)、ガス給湯器などを販売してきました。また、全国の法人のお客様向けに、ガスや電気の使用量などをリアルタイムに計測・見える化し、気づき情報を即時に発信するサービス簡易データ計測サービス『ekul(イークル)』の基盤としてAWSを活用しております。当社は、IoT案件に加え、オンプレで構築された業務システムのAWSへの移行やAWS上でのシステム開発で豊富なノウハウと実績に基づいたクラウドインテグレーションサービスを提供しています。AWSアジアパシフィック(大阪)リージョンがオープンすることで、関西エリアのお客様により低レイテンシーで複数のリージョンが選択可能となり、さらなる可用性が期待できることを大変嬉しく思います」

2007年に創業したSansanは、「出会いからイノベーションを生み出す」をミッションに、法人向けクラウド名刺管理サービス「Sansan」や名刺アプリ「Eight」を提供している。Sansan株式会社CTOの藤倉成太氏は以下のように述べている。

「名刺はビジネスの出会いの証です。『Sansan』『Eight』は、日々取り込まれる名刺を正確にデータ化、活用することで、ビジネスパーソンが抱える様々な課題を解決します。プロダクトの基盤となる当社のアプリケーションを構成するのは、数百台の Amazon EC2 インスタンスです。その他、AWSの多様なサービスを活用することによって、コスト削減だけでなく、プロダクトの可能性を拡張することにつながっています。この度の大阪リージョン開設によって、当社のプロダクトをさらに進化させ、ビジネスインフラとして新しい価値を提供できるようになることを期待しています」

1925年に設立された近畿大学は、医学から芸術まで14学部48学科を擁する総合大学ならびに、附属幼稚園から大学院まで約5万2000人が在籍する西日本最大級の学園だ。近畿大学 総合情報システム部の上田 拓実氏は、次のように述べている。

「近畿大学は『高可用性』『実績』『多機能』『マネージドサービスが豊富』の4つを重要視してクラウド事業者を選びました。その結果、初期投資費用が約70%削減することおよび、10年間の初期投資およびランニングコストを合わせた総費用が、オンプレミスと比べると約20%程削減するという試算のもと、2015年に教務システムと計17のクラウド化可能な全業務システムをAWSに移行することを決定しました。移行後、これといった大きな障害もなく安定して利用できており、この度、大阪リージョンが開設することで、より低レイテンシーな環境を活用できることを歓迎いたします」

日本の顧客事業者の期待に応える

日本の顧客事業者の期待に応える

エンタープライズ企業や公共部門の顧客事業者のAWS移行を支援するSIコンサルティングパートナーには、クラスメソッド、CTC、富士ソフト、iret、NEC、野村総合研究所、NTTデータ、SCSK、サーバーワークス、TISなどが名を連ねている。日本のAPN ISVであるAcroquest Technology、AptPod、デジタルキューブ、はてな、VMware、Works Human Intelligenceなどは、すでにAWSを利用して世界中の顧客にソフトウェアを提供しており、ローンチ時にはAWSアジアパシフィック(大阪)リージョンから日本の顧客にサービスを提供する予定だという。また、顧客事業者はAWS Marketplaceにて、AWSのソフトウェアソリューションをより手軽に「検索・トライアル・展開・購入」をすることができる。

NECは1899年の創業以来、日本のイノベーションをけん引するITベンダーであり、AWSパートナーネットワーク(APN)のプレミアコンサルパートナーだ。AWSは、技術の進歩を通じて社会にポジティブなインパクトを創出するというNECのビジョンを共有している。日本電気株式会社 執行役員 吉崎 敏文氏は以下のように述べている。

「NECは、2020年にAmazon Web Services, Inc.と日本では初となるコーポレートレベルの戦略協業を開始いたしました。これにより、大規模ミッションクリティカルシステムのデジタルシフトを進める官公庁や企業のお客様に対し、AWSが持つグローバルのノウハウとNECが自社システムで培った経験をマネージドサービスとして提供開始しています。NECグループのAWS認定資格保有者も、今後3年間で3,000名を超えることで、デリバリー体制を大幅に強化し、大規模なクラウドシステム構築案件にも継続的に対応してまいります」

Amazonは、VMware Cloud on AWSを2021年下半期にAWSの大阪リージョンに拡大することで、日本の顧客事業者の期待に応えることができると自信を見せている。この拡張により、西日本の顧客事業者には、より多くの地理的な多様性と災害対策の選択肢を提供することができるからだ。また、活用するすべての顧客事業者が、アプリケーションのモダナイゼーションのためにvSphereワークロードをVMware Cloud on AWSに移行する際の柔軟性を高め、俊敏性、コスト、セキュリティを向上させることに寄与することになるだろう。

平井デジタル改革担当大臣も開設に言及

平井デジタル改革担当大臣も開設に言及

Amazonでは、今回の公表に際し、次のように述べている。

「私たちは、西日本で特定のワークロードを実行するお客様を支援するために、AWSアジアパシフィック(大阪)ローカルリージョンを立ち上げました。それ以来、お客様からは、複数のAZと幅広いサービスの選択が可能な第2のリージョンをAWSに提供してほしいとの要望がありました。」とAWSの グローバルインフラストラクチャ &カスタマサポート 担当 バイスプレジデントのピーター・ディサンティスは述べています。AWSアジアパシフィック(東京)リージョンおよびAWSアジアパシフィック(大阪)リージョンは、より低いレイテンシーを提供するだけでなく、複数のリージョンやAZにまたがるワークロードを構築することで、耐障害性、回復性、可用性のさらなる向上を可能にします」

平井卓也デジタル改革担当大臣は次のように述べている。

「この度は、AWS大阪リージョンのオープン、おめでとうございます。日本政府は『クラウド・バイ・デフォルト原則』を掲げ、クラウドサービスの利用を第一候補とした基本方針を策定し、AWSの活用も開始しています。2021年9月の発足を予定しているデジタル庁では、国にとっても地方にとってもデジタル化を進める上で必要となる標準化や相互連携を促進するため、クラウド上でどのようにシステムを動かしていくべきなのかを考えるのが大きな使命だと思っています。AWSを含めた様々な企業と協力して、日本のデジタル化の推進に全力を挙げてまいります」

Amazon、日本への投資を継続

2011年3月、AWSは5拠点目となるAWSリージョンとして、2つのAZを持つアジア太平洋リージョン(東京)を開設させた。2018年には第3、第4の東京AZが追加され、既存の4つのAZにまたがる高可用性と耐障害性の高いアプリケーション構築ができるようになった。

2018年2月には、AWSは1つのデータセンターを分離し、耐障害性の高いインフラ設計で構築された大阪ローカルリージョンを新たに開設。これにより、AWSアジア太平洋リージョン(東京)を利用する顧客事業者は、アジア太平洋地域におけるAWSワークロードの災害復旧対策として、大阪ローカルリージョンが利用可能になった。

大阪ローカルリージョンは、 AWSアジア太平洋リージョン(東京)だけでは対応できない、災害復旧を目的とした国内での地理的多様性を必要とする顧客事業者アプリケーションをサポートしてきた。今回、西日本におけるスタンダードリージョンを求める顧客事業者からのさらなるご要望に応えるため、AWSは大阪ローカルリージョンをスタンダードなAWSリージョンに拡張することで、提供可能な機能を拡張することとなったのだ。それらを通し、ECをはじめとした日本の各事業体のビジネスをさらに加速させることになるだろう。


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