スキルシェアサービスのEC需要が1年間で1.6倍に増加「スキルシェア/サービスEC需要のコロナ禍での変化に関する調査レポート」【ネットプロテクションズ調べ】
株式会社ネットプロテクションズは、「コロナ禍におけるスキルシェアサービス需要変化」に関する定点調査を実施し、その結果を公表した。
サービスの認知・利用経験率は10%程度と停滞傾向にある一方、未経験者の利用意向が1.6倍と上昇傾向で明るい兆しも見える。
「スキルシェア/サービスEC需要のコロナ禍での変化に関する調査レポート」
株式会社ネットプロテクションズ(所在地:東京都千代田区、代表取締役社長(CEO):柴田 紳、以下「ネットプロテクションズ」)は、「コロナ禍におけるスキルシェアサービス需要変化」に関する定点調査を実施し、その結果を公表した。
<調査結果サマリー>
・サービスの認知・利用経験率は10%程度に停滞するも、未経験者の利用意向が1.6倍と上昇傾向。
・買い手目線の参加懸念、「個人情報漏洩」が2位に浮上。利用経験者は「価格や提供内容への納得感」が4割超え。
・売り手目線の参加懸念、利用経験者では「あと値決め式」「価格変動式」支持が持続。利用経験を通して相談・交渉形式の煩わしさを感じたか。
◆背景:売り手も買い手も疲弊しない、持続可能な個人間取引のあり方を探る。
働き方改革関連法の施行や新型コロナウイルスの感染拡大といった情勢の変化により、リモートワークや時短出勤などの働き方が「ニューノーマル」と呼ばれるほどまでに浸透しつつある。時間や場所に縛られない働き方が恒常化する現在、より大きな役割を果たす存在のひとつが、個人間でスキルを売買できるスキルシェアサービス・クラウドソーシングだ。
ところが、社会におけるニーズの高まりに対し、これらのサービスが適切な認知を獲得しているとは言い切れない。本調査は、スキルシェアサービスに対する意識をスキル提供者・購入者双方の視点から取得することで、急速に「ノーマル」が刷新されるなかでスキルシェアサービスに求められる要素を調査したものだ。
<調査概要>
調査名:スキルシェア/サービスEC需要のコロナ禍での変化に関する調査レポート
調査方法:ネットプロテクションズ独自のインターネット調査
調査期間:【第1回】2020年3月、【第2回】2021年3月
調査対象:【第1回】20代~50代の男女769人、【第2回】20代~50代の男女842人
スキルシェアサービスは必要とされているのか
スキルシェアサービスの利用経験率は10%で、この一年で増加していない。ただし、未経験層における利用意向は1.6倍と明るい兆しが見られる。
サービスを利用したことがある人の割合は、2020年時点より5ポイント減の11.2%と停滞傾向だった。一方で、サービス利用未経験者のうちスキルを「買いたい」と回答した人は2021年時点の1.8倍となる11.5%、「売りたい」と回答した人は2021年時点の1.5倍となる11.8%であった。
利用経験・利用意向を調査したスキルシェアサービスは下記9種である。
・クラウドワークス(株式会社クラウドワークス)
・ランサーズ(ランサーズ株式会社)
・ココナラ (株式会社ココナラ)
・ストアカ (株式会社ココナラ)
・タイムチケット(株式会社タイムチケット)
・ビザスク(株式会社ビザスク)
・エニタイムズ(株式会社エニタイムズ)
・zehitomo(株式会社Zehitomo)
・Timee(株式会社タイミー)
※()はサービス運営会社
ほとんどのサービスにおいて認知度・利用経験内訳ともに顕著な増加は見られなかったが、ココナラは「知っているが利用したことはない」の回答率が前回比1.3倍の20.5%となった。
人々がスキルシェアサービス抱く懸念
◆買い手にとってのスキルシェアサービスへの不安
利用経験層は「価格や提供内容への納得感」、未経験で利用意向層は「個人間トラブル・個人情報の漏洩の怖さ」が顕著である。
回答者全体では「個人間のトラブル」が前回調査時に引き続き30%超えとなった。スキルシェアサービスの利用経験別に注目すると、懸念事項が明確に異なることがわかる。
▪️利用経験があり「今後も利用したい」と回答した層
「売り手のスキルレベルかわからない」の回答率が前回より8ポイント増加し、4割超え。
▪️利用経験はないが「購入してみたい」と回答した層
「個人間のトラブルが怖い」が3ポイント増加し、過半数を超えた。次いで「個人情報の漏洩が怖い」も41%を占めている。
サービスを利用したことがない人にとっては個人間のトラブルや個人情報漏洩等のセキュリティ懸念が大きな利用障壁となっている一方、実際に利用したことのある人はスキル取引における「納得度」や「妥当性」を求めていると言える。
◆売り手にとってのスキルシェアサービスへの不安
利用経験者は「時間やスキルの安売り」、未経験者は「買い手不在」「個人間トラブルや個人情報漏洩の怖さ」が顕著となっている。
▪️利用経験があり「今後も利用したい」と回答した層
半数以上が「時間やスキルの安売り」と回答、前回より10ポイント増。「個人間トラブル」「個人情報の漏洩」への不安も前年より10ポイントほど増加。
▪️利用経験がないが「提供してみたい」と回答した層
「買い手がつくか分からない」の回答率は前年調査時より10ポイント以上減少するも、「個人間のトラブルへの怖さ」に並び、56.7%を占めている。
サービスを利用したことがない層が「買い手不在への不安」といった信用性への不安感を抱える一方、実際に利用したことのある層は「時間やスキルの安売り」といった不当な対価流通を懸念していると言える。
どのような価格形式が支持されるのか
買い手からみた希望の販売方法、定価式への支持は15ポイント減。販売方法への要望は多様化が見られる。
前回調査での定価式への支持率は全体平均で51%でしたが、37.6%に減少した。スキルシェアサービスの利用経験ごとに注目すると、経験者は未経験者に比べて、「あと値決め式」や「価格変動式」の回答率が約2倍となっている。
売り手視点でも同様に非定価式の支持が増加。利用経験者は「あと値決め形式」、未経験者は「フリマ形式」を支持している。
売り手目線での希望の販売方法においても、利用経験の有無での差異が顕著となった。「オークション式」のうち、利用経験者は「あと値決め式」「価格変動式」、未経験者は「フリマ式」を最も支持している。利用経験を通して、相談形式の煩わしさや主張のしづらさ、価値に対して矮小化された対価流通のあり方を感じていることが伺える。
買い手視点においても、利用経験者における「あと値決め式」「価格変動式」の回答率が未経験者に比べて高かったことから、買い手・売り手双方の立場から相談・交渉形式の販売方法に同様の課題を感じていると言える。
「期待以上のサービスを受けた後に、スキルの提供者に対して事前に決まっていた価格以上を払いたいと思ったことはありますか?」という設問に対しては、利用経験者のうち38.3%が「よくある」と回答し、前回調査時よりも1.5倍となった。利用未経験者も含めた平均と比較すると、「よくある」「ある」と回答した割合は約10倍である。
このことから、実際にサービスを経験した人を中心に、良質なサービスに対する「正当な対価流通」への意識が形成されていることが伺える。さらに言えば、より多くの対価が支払われていたはずの取引が見逃されている現状も明らかとなった。
この調査結果では、買い手目線・売り手目線ともに、利用経験者と未利用者で回答内容に大きな差が出ている項目がいくつもある。
特に目立っているのは、売り手の「時間やスキルの安売り」である。利用未経験者は19.5%が懸念事項として挙げているのに対し、利用経験者は51.1%が挙げており、その差は2倍以上である。それだけ、実際にスキルシェアサービスを利用した売り手が「不当に安い価格で売っている」と感じているということだろう。
安い値段でスキルが買えるのは買い手にとっては嬉しいが、それが続くと売り手は消耗してしまう。スキルシェアサービスの発展は、買い手と売り手双方にとって納得がいく値付けの仕組みにかかっているのかもしれない。