
ECパッケージとは?比較一覧表や導入するメリットを紹介
ECサイトを構築する手段の1つである「ECパッケージ」は、サイトの運用において必要な機能がひととおり揃っている便利なサービスです。一から構築するよりもコストも抑えられる利点もあります。
とはいえ、一口にECパッケージといっても特徴などはさまざまで、選び方に悩んでいる事業者の方もいるのではないでしょうか。
そこで本記事では、ECパッケージのメリット・デメリットや選び方について解説します。なお、ここでは2024年12月時点の情報を掲載しています。
ECパッケージとは?何ができる?
ECパッケージとは、「ECサイト構築のために提供されるソフトウェアパッケージ」です。ECサイトを運営するために必要な、商品管理や在庫管理、ショッピングカート、決済などの基本的な機能があらかじめ用意されており、自社の要件に応じてカスタマイズして利用します。
ECサイトを構築する際は、ECパッケージ以外にも以下のような手段があります。なお、ここでの分類は明確に定義されているものではなく、実務を考慮して判断しています。
- フルスクラッチ
- オープンソース
- クラウドEC
- ASP(無料/有料)
- ECモールへの出店
ECパッケージとほかの手段を比較すると、一から開発するフルスクラッチよりも費用が安価に抑えられ、ASPやECモール出店よりカスタマイズ性が高い点が特徴的です。
ECパッケージとASPの違い
ASPとの違いについて、もう少し詳しく掘り下げます。
ECパッケージとASPの大きな違いは、メンテナンスを行うのが自社かサービス側かという点です。
ECパッケージの場合、自社で用意したサーバーにインストールを行うため、メンテナンスやアップデートも自社で行う必要があります。
一方で、ASPはサービス側が提供したサーバーにアクセスしてツールを使用するため、メンテナンスなどもASP側で行われます。
カスタマイズ性の高さなどの自由度はECパッケージ側が有利ですが、ASPのほうが管理の手間や費用が安く済む点などで優れているので、用途に合わせて選択しましょう。
ECパッケージを導入するメリット・デメリット
ECパッケージはメリットが多い反面、デメリットもあります。どちらも押さえたうえで導入するかを検討しましょう。
メリット
ECパッケージのメリットを5点解説します。
- 必要な機能が搭載済み
- カスタマイズの自由度が高い
- デザイン面の自由度が高い
- セキュリティが強固
- 瞬間的なトラフィックの増加にも耐えられる
自由度の高さと扱いやすさが大きな利点です。1つずつ紹介するので参考にしてください。
必要な機能が搭載済み
ECパッケージには、ECサイトを開設し、運用するための基本的な機能が最初から備わっています。例えば以下のような内容です。
- 商品管理機能
- 在庫管理機能
- 顧客管理機能
- 注文管理機能
- 売上/決済管理
- 問い合わせ機能
フルスクラッチだと上記のような機能もすべて開発が必要で、膨大な時間とコストがかかります。
ECパッケージならはじめから一般的な機能が搭載されているため、導入から運用開始まで比較的短時間で行えるのが利点です。
カスタマイズの自由度が高い
ECパッケージの場合、フルスクラッチには劣るものの、無料のASPカートなどに比べるとカスタマイズ性が高い点もメリットです。
例えば、ショッピングのしやすさを高めるような機能のカスタマイズや、運営者側の業務を円滑にするための管理機能のカスタマイズ、広告など販売チャネルを拡大していく際の連携機能のカスタマイズなど、自分の思いついたオリジナル機能を実装していくことが可能です。
また、越境ECであればマルチチャネルといった販売形式にも対応しやすいため、自社に必要な機能を追加できます。
購入後のサポートも手厚いケースが多いため、対応に困った場合でも相談しやすい利点があります。
デザイン面の自由度が高い
ECモールやASPカートなどと比べると分かりやすいですが、ECパッケージであれば、サイトのデザインにもこだわれます。
例えば、ECモールでは、管理画面内でしかソースコードを編集できない場合が多くあります。また、ASPカートでは、静的なページを自由に作成できる一方で、システムと連動した動的なページを作る際には制限がある場合があります。
その点、ECパッケージの自由度は高く、大規模ECサイトを構築する際でも利用可能な場合が多いです。
セキュリティが強固
オープンソースなどのようにソースコードが開示されていないため、セキュリティが強固であり情報漏洩などのリスクを低く抑えられます。
そのため、外部からの攻撃対象となりやすい、大規模な事業者にECパッケージは特に向いています。
瞬間的なトラフィックの増加にも耐えられる
例えば、ECモールやASPカートでは、セールイベントや年末商戦、テレビで取り上げられた直後など、一時的にトラフィックが急増するとサーバーがダウンしてしまうことがあります。これは決して珍しいことではありません。
一方、ECパッケージを利用する場合は、使用するサーバーやインフラ環境にもよりますが、事前にしっかりと準備をしておけば、このような急激なアクセス増にも耐えられる仕組みを構築することが可能です。
デメリット
ECパッケージのデメリットを3点紹介します。
- 費用がかかる
- メンテナンスやアップデートが必要
- システムが古くなる可能性がある
メリットと合わせて確認してください。
費用がかかる
ECパッケージのデメリットの1つは、ASPなどと比べると費用がかかる点です。一般的に500万円程度かかるケースが多く、機能の追加などを行うとさらに料金がプラスされます。
また、デザイン面でも自由度が高い反面、社内で制作にする場合でも制作会社に依頼するにしても相応の費用が必要といえるでしょう。
そのため、売上規模が比較的大きいEC事業向きで、初めてECサイトの構築に取り組む小規模事業者の方にはおすすめできません。
費用対効果があるかを見極めたうえで導入を進めてください。
メンテナンスやアップデートが必要
ECパッケージは自社で用意したサーバーにパッケージをインストールして利用する形式であることから、定期的なメンテナンスやアップデートも自社主導で行います。ASPやオープンソース型であれば、アップデートなどはプラットフォーム側で行ってもらえるため手間がかかりません。
サーバーの維持管理コストやメンテナンス費用といったランニングコストがかかる点も覚えておきましょう。
システムが古くなる可能性がある
ECの分野ではシステムやトレンドの移り変わりが激しく、ECパッケージを導入しても、数年経過すれば従来どおりの運用が通用しなくなるケースがあります。ECパッケージは自社でのアップデートが必要なため、その都度コストだけでなく作業工数も必要です。
購入時点でその後のビジネスにおけるビジョンを明確にしておくことが重要なので、導入前に今後のビジネス展開も含めて吟味しましょう。

ECパッケージの選び方のポイント
ECパッケージを選ぶ際は、以下の5点を意識して選びましょう。
- 必要な機能が揃っているか
- デモ機が使えるか
- ベンダーの導入実績や運用体制
- 初期費用、ランニングコストを把握する
- サポート体制は整っているか
- セキュリティ対策は万全か
評判の良い製品や安価な製品が、必ずしも自社に合っているとは限りません。複数のベンダーを比較して選ぶのがよいでしょう。
必要な機能やデザインに対応できるか
ECパッケージはカスタマイズの自由度が高いとはいえ、導入予定のパッケージにより機能的な得手不得手はあります。導入するECパッケージを決めてから、「実は使いたい機能がなかった」となっては大問題です。
まずは、自社にとって必要な機能が揃っているかを確認しましょう。
また、機能だけでなく実際にどのように商品ページを作成するかといったデザインもイメージしながら選ぶのがポイントです。
各SKUの在庫管理手法や、受発注から発送までの一連の流れを行えるのか、1つずつ確認しましょう。
デモ機が使えるか
デモ機やテスト環境が使えるECパッケージを選ぶことも重要です。多くのベンダーではデモ機が用意されていますが、利用可能な期間が制限されているケースもあります。
実際にデモ機を触って、操作性やUIの使いやすさなどをチェックしましょう。
ベンダーの導入実績や体制
ECサイトは業種や商品の種類、あるいは店舗や会社のコンセプトによって仕様がさまざまです。自社のECサイトを構築する際に、「このようなサイトにしたい」とイメージする形があるでしょう。
ECパッケージを導入する際は、提供しているベンダーについて、過去の導入実績や運営の体制も必ず確認しましょう。自社で取り扱う商材と同ジャンルの商品を取り扱った導入実績が複数あると安心です。
また、セキュリティやシステムサポートの体制なども問い合わせておくと、運用開始時にトラブルが発生した際スムーズに対処しやすくなります。
初期費用、ランニングコストを把握する
ECサイトを構築して開店させるまでにかかるコストが初期費用、開店後に運営していくために発生する費用がランニングコストです。どちらもできるだけ正確に把握しておく必要があります。
ECパッケージはカスタマイズやシステム保守費用などが大きくなる傾向があります。どのようなデザインにすべきか、どの機能を利用すべきか、ほかにも保守費用やメンテナンスにかかる費用などを明確にし、計画的に費用を算出していきましょう。
サポート体制は整っているか
ECパッケージを開発する会社との関係は、ECサイトを構築する期間だけに限りません。むしろ、一緒にECサイトを運営するパートナーとして、長期的な信頼関係を築くことが大切です。
そのため、システムに関する知識や技術力だけでなく、連絡のしやすさやレスポンスの早さも重要な判断材料になります。いくらプロダクトとしてのECパッケージが優秀でも、カスタマイズや保守を担当する技術者が不足している場合、運用に支障をきたすこともあります。
さらに、担当者との相性も無視できません。日々のやり取りがスムーズに進むよう、コミュニケーションの取りやすさを事前に確認しておくことをおすすめします。
セキュリティ対策は万全か
ECサイトは商品やサービスを売買するため、多くの個人情報を扱います。そのため、常にハッキングなどのサイバー攻撃を受けるリスクを考える必要があります。
もし情報が漏洩すれば、顧客からの信頼を失い、経済的な損失が発生するだけでなく、最悪の場合、ECサイトの閉鎖に追い込まれる可能性もあります。
ECパッケージを導入する際は、まずセキュリティ対策がしっかりしているかを確認しましょう。パッケージ単体のセキュリティだけでなく、WAF(Web Application Firewall)やウイルス対策ソフトなどの追加対策が必要になる場合もあります。その際、開発会社がセキュリティに関する相談に応じてくれるかどうかも、選ぶポイントとなります。
さらに、導入するECパッケージが常に最新のバージョンに更新されているか、セキュリティに関する更新履歴が適切に管理されているかを確認することも重要です。
ECパッケージの費用相場
ECパッケージの費用相場は一般的に100万~500万円以上です。
自社用にカスタマイズすると別途費用がかかりますが、追加の費用感はベンダーや作業内容によって大きく異なります。
筆者の経験では、EC-CUBEやMakeShopなどのクラウド型のパッケージで追加のカスタマイズを依頼した際、サイト上から出力されるデータに特定項目を追加する内容で100万円弱の料金が加算されました。
詳細な金額見積もりは各ベンダーへ依頼してください。

【比較表】主なECパッケージ一覧
代表的なECパッケージを5社紹介します。
初期費用 | 料金 | 主な機能 | 導入実績 | 特徴 | |
---|---|---|---|---|---|
EC-ORANGE | 要問い合わせ | 要問い合わせ | ・受発注管理 ・商品管理 ・顧客管理 ・決済管理 など |
・株式会社カクヤス ・小田急百貨店 など |
・ソースコードを開示しておりカスタマイズ性が高い ・大量アクセスの処理も可能 |
ecbeing | 5,000,000円~ | 月額200,000~ | ・受発注管理 ・商品管理 ・顧客管理 ・キャンペーン施策 ・メール送信 など |
・株式会社エドウイン ・株式会社 大丸松坂屋百貨店 など |
・業界最大手 ・販売からマーケティングまで対応可能 |
コマース21 | 要問い合わせ | 要問い合わせ | 要問い合わせ | ・KDDI株式会社 ・真宗大谷派(東本願寺) など |
・カスタマイズ性が高い ・バリューチェーン全体を意識したコンサルティングも提供 |
ebisumart | 要問い合わせ | 要問い合わせ | ・受発注管理 ・商品管理 ・ピッキングリスト印刷 ・実店舗/アプリ連携 など |
・ヤマハ株式会社 ・株式会社スクウェア・エニックス など |
・専任の運用サポート ・高いセキュリティ性 |
EC-CUBE | 要問い合わせ | 要問い合わせ | ・受発注管理 ・商品管理 ・メール管理 ・コンテンツ管理 など |
・株式会社ドトールコーヒー ・丸善ジュンク堂書店 など |
・プラグインを活用し圧倒的な拡張性 ・レイアウト機能も充実 |
ECパッケージ導入時の参考にしてください。
EC-ORANGE(株式会社エスキュービズム)
EC-ORANGEは、ソースコードを公開しているため柔軟なカスタマイズ性と高い拡張性を備えたECサイト構築パッケージです。
最新のPHPフレームワークLaravelを採用し、月間売上数十億円規模や商品SKU数千万点に対応可能な安定したプラットフォームを提供しています。
POSシステムとの連携により、実店舗とECサイトの在庫共有が可能で、オムニチャネルやOMO推進にも最適です。
また、API連携を基盤とした設計により、基幹システムや会計システムとのリアルタイム連携が可能で、自社内で保守やカスタマイズを行う内製化にも対応できます。
ただし、ソースコード公開によるセキュリティ面でのリスクにも注意が必要です。
出典:EC-ORANGE
ecbeing(株式会社ecbeing)
ecbeingは、国内で1,600以上の導入実績を持つ業界シェアNo.1のECパッケージです。
BtoCやBtoB、モール型、越境ECなど多彩なビジネスモデルに対応し、柔軟なカスタマイズが可能です。オムニチャネル施策や基幹システムとの連携、ネットスーパー対応など、業種特化型の機能も充実しています。
さらに、売上拡大を目指した課題解決や仮説検証、マーケティングサポートにも対応しており、ECサイト運営全般を支援できるのが強みです。
セミナーも頻繁に開催されており、導入前に具体的な事例や情報を得ることもできます。ただし、機能やサポートが充実している分、コストは高めで、大規模なECサイト向きといえるでしょう。
出典:ecbeing
コマース21(株式会社コマースニジュウイチ)
コマース21は、国内大手の大規模EC向けに300社以上の導入実績を持つECパッケージで、顧客のロイヤルカスタマー化を推進する「ロイヤルカスタマーDXソリューション」を提供しています。
顧客体験価値の向上を通じてLTV(顧客生涯価値)の最大化を目指し、事業成長を支援してくれます。
また、柔軟なカスタマイズ性と高い拡張性を持ち、大規模なデータ処理や複数店舗の一括管理が可能です。ヒアリングから開発、運用までを一貫して同じメンバーがサポートするため、効率的に進行できる点も魅力です。
ただし、小規模なECサイトの構築にはコスト面で不向きな場合があり、こちらも主に大規模サイト向けのパッケージといえます。
出典:コマース21
ebisumart(株式会社インターファクトリー)
ebisumartは、7年連続で国内No.1の実績を誇るカスタマイズ可能なクラウド型ECパッケージです。オムニチャネル、越境EC、BtoBなど幅広いビジネスモデルに対応し、API連携や豊富な拡張機能により独自要件にも柔軟に応えられます。
また、クラウド型であるため、システムのメンテナンスやサーバー管理が不要で、常に最新のシステムとセキュリティが保たれる点も安心です。
さらに、24時間365日の監視体制やWAFによるセキュリティ対策を備えており、専任の運用サポート担当者が導入から運用まで手厚く支援します。
ただし、クラウド型のため自由度は若干制限される場合があり、限られたリソースで独自性の高いECサイトを構築したい事業者におすすめです。
出典:ebisumart
EC-CUBE(株式会社イーシーキューブ)
EC-CUBEは、国内で35,000以上の導入実績を持つオープンソース型ECパッケージで、月商1,000万円以上の利用実績ではNo.1のシェアを誇ります。
ソースコードが公開されているため、自社のビジネスモデルに合わせた自由なカスタマイズが可能です。D2C、越境EC、定期購入など多彩なビジネスモデルに対応し、豊富なプラグインやデザインテンプレートによる拡張性とデザイン自由度も大きな魅力です。
また、初期費用無料で利用できるクラウド版も提供されており、低コスト運用を実現できます。
さらに、8万人以上の開発者が参加するコミュニティがあり、情報交換やサポートを受けやすい環境も整っています。制作会社を軸に構築したい場合や、自社で開発体制が整っている場合にもぴったりです。
出典:EC-CUBE

ECサイトの構築、改善に関するお悩みはプロに相談するのがおすすめ
ECパッケージはオリジナルのECサイトを自由度高く構築できる便利なシステムです。デザインにこだわって、世界観を伝えるECサイトを運営できます。
また、複数のショッピングモールへの出店を統合管理したり、自社の商品・在庫管理の仕方に合わせたカスタマイズしたりと、業務の効率化にも役立ちます。
便利なECパッケージですが、導入には開発が必要なので費用がふくらむこともあります。
導入する際には比較検討して、ECパッケージの機能や拡張性と、ECサイトの構築費用やランニングコストも確認しましょう。また、開発会社の体制や技術力、さらに担当者との相性も大切です。
初めてECパッケージを導入する事業者の方で、どのように選べばよいかお悩みの方はプロに相談することも検討しましょう。
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