企業間取引に最適なBtoB-ECカートは?受発注を効率化する6つのメリットと選び方
BtoB-ECの専用カート・システムとは?
近年コロナウイルスの影響により大手企業だけではなく、中小企業やスタートアップ企業もBtoB-ECの専用カートを利用しています。BtoB-ECの専用カートとは、企業間取引(Business to Business)に使用するカートを指します。既存取引先との受発注処理も、BtoB-ECの専用カートを導入することで効率化可能です。従来までは、受発注システムを導入する際は、オンプレミス型と呼ばれる自社運用型しかありませんでした。
デメリットとしてオンプレミス型では、サーバー構築や運用をすべて自社でおこなう必要があるため、高い初期費用やランニングコストが発生します。そのため、中小企業やスタートアップ企業は費用面で、BtoB-ECの専用カートの導入ができないのが現状でした。しかし、技術革新によりクラウドでBtoB-ECの専用カートを運用できるため、導入コストが安く中小企業やスタートアップ企業でも導入できます。
また、BtoCであれば、商品の販売価格は公開されている価格から変動することはありません。しかし、BtoBの場合、販売価格が公開されていないため、取引先によって商品の販売価格を変更します。そのため、BtoB-ECの専用カートには「取引先別価格設定機能」が必要です。多くのBtoB-ECの専用カーには、「取引先別価格設定機能」が搭載されており、取引先ごとに異なる販売価格の設定が可能です。
BtoB-ECの専用カートだけでは業務をすべて補うことはできません。しかし、多くのサービスではサードパーティーと連携できるものが多く、自社に必要な機能を選んで利用可能です。
BtoB-ECの市場規模・動向
日本国内のEC市場規模やEC化率の推移といった動向は、経済産業省が継続した調査を行っており、毎年報告書を作成・公表しています。2023年8月には、「令和4年度 電子商取引に関する市場調査報告書」が公開されました。
報告書によると、2022年の国内BtoB EC市場の経済規模は420兆2,354億円です。前年に比べて約50兆円増加しています。また、EC化率は前年から1.9%増え、37.5%となりました。どちらも拡大傾向にあります。
<BtoB-EC 市場規模の推移>
報告書にあるBtoB EC市場規模の推移を見ると、新型コロナウィルスの影響を大きく受けた2020年には、一時的に縮小しています。ただし、この年もEC化率の伸びは順調です。そのため、BtoBビジネス全体が新型コロナウィルスによって、取引金額を押し下げられたためであることがわかります。
その後、2021年には従来の成長傾向に戻り、2022年も順調に推移しました。2022年の市場規模の成長率は、前年比で12.8%です。また、EC化率もさらに上がっているので、業界全体でEコマースが浸透していることも見てとれます。
日本のGDPの成長率は、2013年から2022年までの10年間、毎年2%以下に留まっています。さらに、新型コロナウィルスの影響を受けた2019年と2020年はマイナス成長でした。つまり、日本全体の経済に比べると、BtoB ECの領域では市場規模もEC化率も非常に急激な成長を続けているのです。自社の成長のためにも、BtoB ECへの参入を前向きに検討すべきでしょう。
なお、「令和4年度 電子商取引に関する市場調査報告書」によると、国内のBtoC ECの市場規模は約23兆円です。ECサイトというと、楽天市場やamazonなどBtoCのものが思い浮かびます。しかし、実は市場規模ではBtoB ECの方がはるかに大きいのです。
その理由は、BtoB ECが、常に効率化を求められる業務の一貫であるためです。BtoBの分野では、近年のDX化の傾向にともない、受発注のシステム化が進んでいます。その過程で、多くの企業がBtoBでもECを利用するように業務フローを切り替えているのです。電話やFAXだけでなく、BtoB-ECカートを用意することは、市場のトレンドに乗り遅れないためにも必要です。
BtoB-ECを導入する6つのメリット
BtoB-ECを導入することで、さまざまなメリットが存在します。導入するメリットは大きく分けて以下の6つです。
1.人為的ミスの削減
2.作業時間の短縮
3.コストの削減
4.問い合わせ対応の削減
5.販促強化で既存顧客の受注増
6.新規顧客の獲得
メリット1.人為的ミスの削減
BtoB-ECを導入することで、人為的ミスを削減できます。手動でおこなっていた電話やFAX・メールでの注文処理は、どうしてもミスが発生してしまいます。しかし、BtoB-ECを採用すれば手動での作業がすべてルーティン化できるため、ミスを防ぐための確認作業自体も削減可能です。
メリット2.作業時間の短縮
BtoBでは入力作業や確認作業など、固定化された業務が多く存在します。たとえば、入力作業などは量が多ければ多いほど、人がおこなうと時間がかかるのです。単純な入力作業だけでも、かなりの時間を費やすため、別の業務対応時間を圧迫してしまいます。
しかし、BtoB-ECを導入することで単純作業は自動化できるため、作業時間の短縮が可能です。また、作業時間の短縮は業務効率化に直結しますので、BtoB-ECを導入することで別の業務に力を注げます。
メリット3.コストの削減
BtoB-ECを導入して人が対応していた作業を自動化し、作業時間を短縮することで、生産性が向上します。作業時間を短縮できれば、これまで発生していた作業に対するコストを削減可能です。また、作業がデジタルベースになるため、ペーパーレス化を推進できます。
メリット4.問い合わせ対応の削減
電話対応の場合、商品の単価やスペック情報・注文履歴・在庫状況など、さまざまな問い合わせを受けます。その度に担当者が電話で対応していくため、複数の作業に追われることになります。BtoB-ECを導入することで、電話することなく取引先は知りたい情報を確認可能です。
また、問い合わせの数自体が減少するため、同様の運営体制で受注量を増やせます。BtoB-EC導入により、無駄な問い合わせを減らせるため、より生産性が高く効率の良い業務をこなせるでしょう。
メリット5.販促強化で既存顧客の受注増
BtoB-ECを導入することで、顧客との取引状況をリアルタイムで確認できます。また、ECサイトの利用状況に関しても可視化できるため、データ分析をおこない既存顧客の販促強化が可能です。データ化された情報を元に、既存顧客に有効なマーケティング施策の考案ができるでしょう。
メリット6.新規顧客の獲得
新規顧客の獲得は、スタッフの実力や経験によって大きく異なります。しかし、BtoB-ECを導入すれば実力や経験に左右されることなく、同じ品質で新規顧客に訴求可能です。また、製品情報はすべてWebで管理しているため、顧客に対してスムーズに情報提示できます。
BtoB-ECカート選び方のポイント3選
BtoB-ECカートを導入すれば、業務効率化を推進できます。しかし、BtoB-ECカートを選ぶ際に注目すべきポイントが3つ存在しています。
選び方のポイントは以下の3つです。
1.費用感
2.自社に必要なシステムが揃っているか
3.既存システムと連携可能か
費用感
BtoB-ECカートを選ぶ際は自社に合わせた費用で、導入を検討する必要があります。費用は以下の2つのタイプによって異なります。
1.ASPクラウド型
2.パッケージ型
ASPクラウド型
ASPクラウド型とは、ECのプラットフォームをレンタルして運用する方法を指します。プラットフォームを自社で構築しないため、比較的安価な初期費用と月額費用で利用が可能です。また、必要最低限のスペックから、複数の機能を搭載したハイスペックモデルまで選択できます。そのため、自社に合わせたプランでBtoB-ECカートを導入できます。しかし、事業規模が拡大していくにつれて、機能面に不足を感じる可能性が高いです。
パッケージ型
パッケージ型とは、ECプラットフォームをパッケージとして導入、カスタマイズしていく運用方法を指します。ASPクラウド型よりも導入費用は高めですが、自社に合わせた機能をカスタマイズできるため、柔軟性が高い部分が特徴です。そのため、事業規模が拡大したとしても、最適な機能を継ぎ足して運用できます。しかし、パッケージ型は、サーバーインフラの整備に関しても自社でおこなう必要があります。
自社に必要なシステムが揃っているか
BtoB-ECカートを選ぶ際は、自社に必要なシステムが揃っているかがポイントです。とくに請求書などを読み取り文字コードの列へ自動で変換する、OCR機能や顧客別に取引条件を設定などの機能が挙げられます。
業務の中でもデータ入力が多い企業であれば、業務効率化を測れるOCR機能の導入が求められます。既存顧客の受注を増加させたいと考える場合、顧客別取引条件を導入すると良いでしょう。
また、対応している決済方法の確認も必要です。近年クレジットカードや銀行振込以外にも、QRコード決済やコンビニ払いの対応も求められます。顧客満足度向上のためにも、対応決済方法は確認しておきましょう。
既存システムと連携可能か
BtoB-ECカートを導入する上では、既存システムとの連携可否の確認が必要です。既存システムには、これまでの商品情報や受注情報が蓄積されているため、連携できなければ業務効率が悪くなります。そのため、BtoB-ECカートを導入する際は各種APIを利用して、基幹システムと連携できるタイプを選択しましょう。
BtoB-ECカートシステム比較11選
以下の11種のBtoB-ECカートシステムを比較しながら、具体的な詳細を解説していきます。
1.Bカート
2.楽楽B2B
3.アラジンEC
4.Bee Trade
5.CONNECT
6.MakeShop(BtoBオプション)
7.EC-Rider B2B
8.HIT‐MALL
9.ebisumart
10.SI Web Shopping
11.ecbeing BtoB
Bカート
Bカートとは株式会社Daiが提供している、受発注業務のEC化を目的とした、ASP型サービスです。600社以上に導入実績が存在しており、BtoB取引に特化した必要な機能が揃っています。主な機能としては、顧客別取引条件設定や取扱商品案内や注文など、複雑な取引に関しても一元管理可能です。BカートではWMSや集客支援サービスなど、幅広いサービス連携も対応します。月額料金は9,800円となり、最短3日からサービス利用が可能です。BtoB-ECカートの中でも、比較的安価な費用設定であるため、簡単に社内導入できます。
楽楽B2B
楽楽B2Bとは、BtoBの受発注業務専門のASP型ECカートです。取引先の際に必要な掛け率や価格を細かく設定可能です。また、取引先別や商品別・商談別に掛け率の変更など、BtoB取引に必要な機能が揃っています。楽楽B2Bでは、決済サービスや物流・ERP・メール共有管理システムなど、他社のEC関連サービスとの連携が充実しています。
複数のサービスと連携できることで、自社に合わせた機能を自由にカスタマイズ可能です。また、楽楽B2Bでは業界初となる、AIによる注文書自動読み込み機能を提供しています。AIによる注文書自動読み込み機能とはOCR機能の1つで、多様なフォーマットでも大量の注文書の読み取りが可能です。
アラジンEC
アラジンECとは、ASPクラウド型とパッケージ型のBtoB-ECカートを利用できる、BtoB専用EC・Web受発注システムです。ASPクラウド型では、低コストで簡単に導入できるためコストを抑えて、スモールスタートしたいと考えている場合に適しています。パッケージ型の場合、ASPクラウド型よりも初期費用や月額費用は発生しますが、フルスクラッチと同等の柔軟性とカスタマイズ性を実現します。
自社の状況に合わせて導入システムの選択が可能です。同社は20年以上基幹システムを自社開発・サポートしてきたため、ECだけではなく基幹業務関連に関しても、豊富なノウハウが蓄積しています。
Bee Trade
Bee TradeとはBtoB ECに特化したパッケージ型のWeb受注システムです。BtoB業務特有のルーティン業務に対応しており、卸価格の設定や購入時の上長承認設定などのさまざまな機能を備えています。また、BtoB ECに必要な取引先毎に価格・販路・決済方法に関しても設定可能です。運営会社であるアピリッツは、EC支援やASP運営10以上の実績があるため、ノウハウを活かしたサポート体制を整えています。
そのため、はじめてBtoB ECを運営する場合でも、専用のコミュニケーションツールで気軽に相談可能です。また、同社は他のサービスとの連携を想定した設計ですので、最小限のカスタマイズでさまざまなサービスに対応しています。
CONNECT
CONNECTとは、株式会社ハイドアウトクラブが提供するWeb型のBtoB-ECカートです。受発注に特化したサービスとなっており、スマホやPCから簡単に発注可能です。スマホからサービス利用ができるため、出先や移動時間に発注業務に取り組めるため、業務時間を短縮できます。また、CONNECTでは、発注先がサービスを導入していなくても利用可能です。発注先が導入していない場合は、自動でFAXやメールに変換して発注書を送信します。
過去の発注品目はすべて管理されているため、再発注に関してもクリックするだけで完了します。また、発注情報に関してもチームで共有できるため、細かい履歴も自動的に管理可能です。発注状況についても自動的に共有されることで、発注ミス、発注漏れを防げます。LINEと連携機能も備わっているため、商品発注と通知の受け取りが可能です。
MakeShop(BtoBオプション)
MakeShopは、GMOグループが開発・提供するECサイト構築サービスです。基本的にはBtoC向けシステムですが、BtoBオプションの付加により、BtoB-ECカートとしても利用できます。
BtoB-ECに必要な機能を備えているのはもちろん、企業の基幹システムや会計システムとの連携も可能です。個別のカスタマイズにも対応してもらえるので、自社の利用環境に合ったシステムに仕上げられます。
また、BtoBだけでなく、同時にBtoCのECサイトとしても運営できることも特徴です。法人顧客には卸売価格を表示し、一般顧客には小売価格を表示する、といったことができます。そのため、BtoBとBtoCの両方を展開している場合に便利です。ユーザー画面はBtoBとBtoCそれぞれ用意され、システム側では統合できるため、効率的な運営が可能です。
EC-Rider B2B
EC-Rider B2Bの一番の強みは、言語切り替えができることです。あらかじめ多言語に対応しているので、越境ECの展開がしやすくなっています。もしくは、外国から仕入れて日本で販売しているといった企業にもおすすめです。
また、ASP型とパッケージ型の2種類が用意されていることも特徴です。ASP型なら、自社でサーバーやシステムを構築する必要がないので、簡単に導入できます。パッケージ型なら、専用のサーバーを用意し、独自システムとして運用できます。
もちろん、卸売サイトの開設や、卸売りと仕入れの管理など、BtoB-ECカートの基本的な機能は備えられています。一般的な外部システムとの連携も可能で、必要なカスタマイズもできるので、自社のビジネスに合わせて導入できるでしょう。
HIT‐MALL
HIT‐MALLは、アイテック阪急阪神株式会社が開発・提供する、パッケージ型のBtoB-ECシステムです。ECシステム構築のノウハウだけでなく、百貨店経営の知見も活かされている点が特徴です。そのため、BtoBのシステムに加えて、BtoBtoCにまで展開できます。
また、サポート体制が充実していることもHIT‐MALLの強みです。BtoB ECサイトの構築だけでなく、運用や物流管理についてのサポートも相談できます。さらに、プロモーションやセキュリティー対策のコンサルティングも受けられます。
機能面、サポート面どちらも信頼できるので、コストは大きくなることがあります。そのため、比較的大規模なビジネスを展開している企業向けシステムです。
ebisumart
ebisumartはSaaS型のECカートシステムとして大きなシェアを誇っています。利用者が多いためノウハウが集まりやすく、システムの改修やアップデートも素早く行われるのが強みです。
常に最新のシステムが使えるので、機能面だけでなくセキュリティ面でも安心です。また、BtoB独特のビジネスフローや複雑な商慣習についても順次システムに組み込んでいくため、自社独自に費用をかけてカスタマイズする必要がありません。
構築・運用コストが比較的安いにもかかわらず、サポートが手厚いことも特徴です。導入企業ごとに専任のサポート担当者がつくので、導入から運用まで、わからないことを相談できます。ebisumart主催のワークショップなども頻繁に行われているので、ebisumartを使いながら自社内の担当者育成も可能です。
SI Web Shopping
SI Web Shoppingはパッケージ型のECサイト構築システムです。BtoB専用のシステムではありませんが、カスタマイズ性が非常に高いため、あらゆる事業形態に対応できます。
SI Web Shoppingを使えば、基本的なECサイトはあらかじめ用意されたテンプレートやオプション機能を組み合わせるだけで構築可能です。さらに、カスタマイズすることを前提としたシステムになっているので、自社のビジネスに合わせて柔軟に機能を追加できます。
また、自社内にシステム開発ノウハウがない場合は、サポートを受けられます。内製化支援プログラムが用意されているため、運用しながら外部SEの支援も受けつつ、カスタマイズやメンテナンスを行えるのです。
ハイスペックなECサイトが構築できるため、費用は高めになります。導入までの初期費用に数千万円かけられる、大規模な事業を行っている企業向けのシステムです。
ecbeing BtoB
ecbeing BtoBは、株式会社ecbeingが開発しているBtoB-ECシステムです。株式会社ecbeingは、1,600以上のECサイトの構築・運用・マーケティング支援の実績を持っています。ECに関するシステムを幅広く提供している中で、BtoB向けのシステムに位置付けられているのが、ecbeing BtoBです。
これまでの幅広いECサイト構築ノウハウをベースに開発されたので、ecbeing BtoBは非常に多機能になっています。クローズド型のECサイトというだけでなく、企業間取引に独特な商習慣が多数組み込まれています。もちろん、外部システムとの連携も可能なので、自社のシステム環境に合わせて導入可能です。カスタマイズ性も高く、希望通りのBtoB ECサイトが構築できます。
システムが高機能なことに加え、サポートを重視していることも特徴で、比較的大規模な企業向けのシステムになっています。
まとめ
BtoB-ECカートを導入することで、無駄を省き取引業務は効率化できます。また、既存顧客の販促強化や新規顧客獲得にも有効です。しかし、BtoB-ECカートは提供している企業によって特徴が異なります。そのため、本記事で紹介しているBtoB-ECカートの選び方を参考に、自社に合ったBtoB-ECカートを導入してみてはいかがでしょうか。