ペイパルが「中小企業によるEコマース活用実態調査」を発表、コロナ禍の影響や越境ECへの意欲は?

ECのミカタ編集部

ペイパル(PayPal Pte. Ltd. 本社:シンガポール、東京支店 日本事業統括責任者:ピーター・ケネバン)は、「ペイパル 中小企業によるEコマース活用実態調査」の結果を公表した。

日本全国のECを行っている中小企業の意思決定者(310名)を対象に、2021年9月~10月にかけてオンラインで実施した本調査は、コロナ禍が中小企業に与えた影響、今後の見通し、ECの活用状況などについて調べたものだ。調査の結果、ECを行っている約3分の1の中小企業が「コロナ禍によるビジネスへの影響はない、または、プラスの影響があった」と回答していることが明らかとなった。

3分の1以上がコロナ禍のマイナス影響を受けていない

今回調査した中小企業の多くがコロナ禍においてマイナスの影響 (64%)を受けたと回答している一方で、3社に1社以上(36%)の中小企業がパンデミックによって「ビジネスへの影響はなかった、あるいはプラスの影響を受けた」と回答している。

これは、調査対象企業の8割近く(78%)が、コロナ禍においてオフラインやオンラインのさまざまな手段を使ってビジネスを成長させる方法を積極的に模索した結果と言える。中小企業の24%は営業時間の調整を行い、さらにBtoBからBtoCへ、またはその逆へとビジネスモデルを切り替えた企業も18%にのぼった。

8割弱が「パンデミックが日本の消費者の行動に変化をもたらした」

8割弱が「パンデミックが日本の消費者の行動に変化をもたらした」

また、中小企業の78%は、パンデミックが日本の消費者の行動に変化をもたらしたと考えている。

日本の消費者の多くがECにおける行動が変化し(38%)、さまざまな決済方法を利用することに前向きになった(27%)と回答。さらに、ECの利用で変化がみられたと回答した企業(77%)にその詳細を聞いたところ、既存の自社のEC利用者による支出が「減少した(26%)」が「増加した(15%)」を上回った。

さらに、リピート購入については「増加した(21%)」が「減少した(12%)」を上回っていることがわかった。このことは、ECにおいて顧客のロイヤルティを高めることが重要であることを示している。

また、オンラインで買い物をする人の年齢層が変化したと回答した(31%)企業によると、シニア世代によるオンラインショッピング利用が増加(19%)しており、オンラインビジネスを拡大しようとする企業にとって、潜在的なホワイトスペースとなっていることがうかがえる。

ECモールや自社のECサイトが販売チャネルの主流

日本の中小企業がECの販売チャネルとして現在利用しているのは、1位(41%)がECモール(Amazon、楽天、Yahooなど)、2位(36%)が自社のECサイト、3位(26%)が自社のプラットフォーム(公式アプリなどECサイト以外のチャネル)となった。

一方、ソーシャルメディアは18%、ショッピングカート企業(Shopify、BASE、STORESなど)は17%、と導入率が低いことがわかっている。

ソーシャルメディアを利用したECは日本ではそれほど普及していないが、海外では普及が進んでいる。日本の中小企業が海外で自社製品を宣伝・販売しようとする場合、ソーシャルメディアを新たな顧客層を獲得するためのプラットフォームとして検討する余地があるだろう。

成長のための越境EC、約半数が意欲的

成長のための越境EC、約半数が意欲的

新型コロナウイルス感染症の世界的な拡大によって、ECは「便利なサービス」から「欠かせないサービス」へと進化した。そうした中、日本の中小企業においても、越境ECに取り組む意欲が高まっていることがわかった。

今回の調査では、対象者はすでに越境ECに取り組んでいる(28%)か、または計画している(16%)と回答しており、合計で半数近くの企業(45%)が意欲的であることが明らかになっている。

また、すでに導入している中小企業のうち、4割近く(39%)がコロナ禍で越境ECに進出しており、パンデミックがビジネスに与えた影響を反映している。

一方で、中小企業の半数以上(55%)は、今後1年間において越境ECを計画していないこともわかった。その理由は、コストの高さ(35%)や人手不足(27%)などの懸念だという。

デジタル化における重要項目はデータ管理やセキュリティ

今後のビジネスにおける優先事項やデジタル化への取り組みについて尋ねたところ、日本の中小企業はデータ管理やセキュリティを重要視していることがわかった。

とりわけ優先順位が高かったのは、「社内データのより効果的な活用方法の取得(26%)」「IT/技術システムのセキュリティを確保(21%)」「新しいデジタル技術を導入することによる顧客体験の改善(20%)」であった。

現在取り組んでいる、もしくは今後12カ月に予定しているデジタル化への対応については、「顧客データの管理(77%)」「オンラインでの商談・営業(77%)」「情報セキュリティ(74%)」が最も多い回答となった。また、デジタル化をサポートするための最も重要な要素として「技術的な知識や専門性を求めている」(63%)こともわかっている。

コロナ後も重要な意味をもつ越境EC

コロナ禍により日本国内外でデジタル化が急激に進み、国内外のEC市場も拡大している。近いうちにコロナ禍が一応の収束を見たとしても、人口減少による国内マーケットの縮小が進んでいく以上、中小企業にとっても越境ECは持続的な成長を遂げるための選択肢であり続けるだろう。

ECや越境ECに取り組む際は、自社ECで顧客のロイヤリティを醸成するのはもちろんのこと、ECプラットフォーム、ソーシャルメディア、ペイパルなどの決済事業者を含む、さまざまなサービスの手を借りながら、スピード感と柔軟性をもって進めることが重要となりそうだ。

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