コールセンターの立ち上げ方は?必要なタスクや費用を解説
顧客対応専用のコールセンターを設置をすることで、顧客のリアルな声を常に聞くことができ、顧客とコミュニケーションがとれるようになります。「コールセンターを新たに設置したいけど何をしたらいいかわからない」「どれだけのコストがかかるのか知りたい」そんな企業に向けて、コールセンターの立ち上げについて詳しく解説します。
コールセンターを立ち上げるために必要な準備・タスク
コールセンターを会社内に立ち上げるために必要な準備やタスクを、手順に沿って説明します。大まかな流れとしては、以下のような流れとなっています。
- コールセンターの目的・運用方針設定
- 現状の調査と課題の洗い出し
- 全体設計
- システム構築
では具体的な手順を紐解いて見てみましょう。
1)コールセンターの目的・運用方針設定
まず、コールセンターを設置する目的と運用方針を決定します。例えば、「顧客満足度の向上」や「質の高いコールセンターの運用」など企業の経営方針に沿った目的を決定し、コールセンター設置の目的を明確に定めましょう。
このとき、具体的な数値として「KGI(重要目標達成指標)」を設定し、「何を目的・目標とするのか」を具体的に決めることが大切です。コールセンターの目的や運営方針が曖昧なままだと、サービスクオリティが低下し、コールセンターを設置しても利益が見込めない状態で運用を始めることになってしまいます。そのため、企業は自社の課題を解決するためにしっかりと目的と運用方針を決定する必要があるのです。
2)現状の調査と課題の洗い出し
次に、現状の調査をおこないます。現在使用している問い合わせセンターなどの簡易的なお客様対応窓口を対象に、下記について調査します。
- 運用フロー
- 管理体制
- 組織管理
- システム環境
- オペレーターの教育、フォロー体制
現状何が不足しているのか、今後新たにコールセンターを導入して解決が見込める点は何かを洗い出します。業務上どのようなシステム環境が必要か、どのようなオペレーター教育が必要かなど、具体的な課題を可視化しておきましょう。
3)プロセスの設計
上記で調査したポイントをもとに、洗い出した問題点の解決策を設計していきます。ここでは、次の4つのプロセスを形にしましょう。
業務プロセスの設計
コールセンターの業務プロセスを策定します。
オペレーションマニュアル、記録方法、報告書の提出、イレギュラー対応、緊急時の対策などコールセンターの業務におけるすべての業務フローを明確にしていきます。
組織の「ムリ・ムダ・ムラ」を最小限にし、スムーズに業務をおこなうためにも、次のような業務プロセスを設計しておきましょう。
- マネジメントの優先順位を明確化
- KGI達成のためのマネジメントの決定
- 意思決定におけるプロセスの明確化
- 体制およびオペレーターの組織図を設計
- 緊急時に使用する連絡網の作成
- 緊急時の運用マニュアルの作成
どのような業務プロセス設計が必要かはコールセンターによって異なりますが、上記の項目を詳細にしておくと、目標達成のための運用や緊急時のトラブルにもスムーズに対応できます。
なお、業務プロセス設計では想定される最悪の事態まで考える必要があるため、様々な部門のスタッフと話し合う必要があります。
マネジメントの設計
業務プロセスが明確になれば、それを実現させるための管理制度を制定します。
どのタイミングで、どんな管理が必要なのかを洗い出しておき、マネジメント体制を構築しておくことでうまく運営ができなかった場合の軌道修正や経営判断基準にもなります。
正しくマネジメントするためにも、『KPI(重要業績評価指標)』を設定して目標を可視化しておきましょう。KPIはKGIの中間指標となるもので、以下の項目はコールセンターのKGIとして設定されることが多いものです。
- 1日の対応件数
- 1件の処理時間
- コールセンターの稼働率
- 顧客からの評価
上記以外でも、自社のなかで重要な指標があれば数値で設定し、オペレーターに共有します。
組織体制の設計
次に、業務の規模や組織規模を算出します。ここまで設計した「業務プロセス」や「マネジメント」を実現するには、どのような体制が必要なのかを考えましょう。さらに、コールセンターの運用に必要な人材の確保や、人材管理の方法を決定します。
コールセンターの規模によって必要なオペレーターや管理者の人数は異なるため、規模感に合わせた組織体制の設計が重要なポイントとなります。
人材育成の体制設計
コールセンターの運営に必要な人材を育成するためのプランや、オペレーターの品質維持のためのフォロー体制、バックアップ体制の整備をおこないます。いくら商品やサービスが良くても、コールセンターの対応が悪ければ、顧客への企業イメージは低下するので、それを防ぐためです。
「コールセンターの対応品質は売上に影響する」ということをふまえ、高品質な顧客対応を実現する人材育成プランを設計しましょう。
また、コールセンターのオペレーターは、離職率が高い傾向にあります。待遇だけでなく研修やマニュアルのわかりやすさや、管理者と定期的にコミュニケーションを取れる環境なども、人材定着を高めるために有効な要素です。
4)システム・体制構築の実装
コールセンター全体の設計が完了したら、設計プランに基づいたシステムの構築作業に移ります。
システム環境整備
コールセンターで使用する回線機器やネットワーク環境の設定、顧客管理システムの導入など、コールセンター運用を円滑に進めるためのシステムの整備をおこないます。とくに電話機とPBX(電話交換機)は、コールセンターのインフラ設備には欠かせません。
ほかにも、オペレーター用のデスクや椅子、ヘッドマイクの設置など、労働環境の整備もおこないます。すべてのシステムの設置が完了したら、しっかりと機能が発揮されるのかのテストをおこないます。自社に既に回線機器やネットワーク環境がある場合は、継続して使用できるのかなども合わせて検討する必要があるので注意してください。
業務フローの整理
次のマニュアル作成に移る前に、一度業務フローを整理しておきましょう。コールセンターを稼働させたあと、現場の業務が円滑に進むかを可視化します。
この段階で疑問点を感じる部分があれば、業務プロセスから見直しが必要かもしれません。
マニュアル作成
コールセンター運用環境が整えば、コールセンターの方針・目的に沿ったマニュアルの作成をします。具体的な内容としては、オペレーターが業務で使用するマニュアルや管理者向けのマニュアルなど、業務フローに合わせた内容のものが必要です。
コールセンター運営に必要なマニュアル例を紹介します。
まず、オペレーターが業務で使用するマニュアル例は、以下のとおりです。
- 顧客とのコミュニケーションマニュアル
- 機材の操作方法マニュアル
- 商品・サービスのマニュアル
- FAQ
- 業務報告マニュアル
- 緊急時対応マニュアルなど
そして、管理者向けのマニュアル例は、以下の通りです。
- PBXの手順マニュアル
- オペレーターの勤怠管理
- システム操作マニュアル
- 品質管理マニュアル
- 業務評価マニュアル
上記以外にも、業務内容や業務フローに関するマニュアルが必要であれば、作成しておきましょう。
人材確保(求人・採用)・育成
組織管理体制で策定した方針に基づいた求人・採用活動をおこないます。採用後は、業務フローを実行するためのオペレーター研修や確認テストなど、コールセンター運用に最も重要なオペレーターの育成をおこないます。
電話対応やコンプライアンス、商品知識など、コールセンター業務に必要な知識をわかりやすく伝えましょう。実際に顧客からの問い合わせを想定したロールプレイングなどもおこなうことで、立ち上げ時でもオペレーターの混乱を防ぐことが可能になります。
また、新たに管理者を雇用する場合は、管理者向けの研修もおこないます。
コールセンターの立ち上げに必要なシステム
コールセンターの環境整備にはどのようなシステムが必要なのでしょうか。ここでは、代表的なコールセンター運用システムについて説明します。
CTI(Computer Telephony Integration)
CTI(Computer Telephony Integration)とは、ネットワーク回線を利用し、電話やFAXの番号から顧客情報の収集が可能なシステムです。
PBX(Private Branch Exchange)
PBX(Private Branch Exchange)とは、企業などの組織内で使用される内線電話交換機のことです。同じタイミングで受けきれないコールがあった際に、施設内の電話機同士で内線通話できるようにしたり、外線(公衆回線)との接続をしたりする役割があります。
ACD(Automatic Call Distributor)
ACD(Automatic Call Distributor)とは、顧客からの電話をオペレーターへ自動的に分配するシステムです。手の空いたオペレーターへの分配をおこなうことで業務の均等化だけでなく、お客様を待たせることなく対応できる利点があります。
CRM(Customer Relationship Management)
CRM(Customer Relationship Management)とは、顧客管理をおこなうことができるシステムです。これは応対した内容を記録するシステムで、再度顧客から問い合わせがあった際に以前の記録をもとに異なるオペレーターが対応できるようになります。
顧客の対応履歴を記録することで情報を均一に管理することができ、誰が対応しても対応クオリティを保つことができるので顧客満足度の向上につながります。
通話録音装置
顧客とオペレーターの通話内容を録音することで、顧客対応の質を向上させることが期待できます。最近では録音した音声を自動的にテキスト化して記録できる機能を搭載したシステムを提供する企業もあります。
定期的に録音内容を振り返り、フィードバックを実施しながら、顧客対応を改善していく際には必要なシステムです。
コールセンター立ち上げにかかる期間
コールセンターの新規立ち上げには、一般的に3カ月から6カ月の期間がかかります。
まず、立地選定や設備の準備に約1カ月、システム導入やインフラ整備に1カ月から2カ月を要します。その後、スタッフの採用と研修に2カ月前後を見込む必要があります。さらに、運営マニュアルの作成や試験運用期間を設けることで、実際の運用開始までに総計で約3カ月から6カ月が必要です。
この期間は、規模や業務内容によっても変動します。
コールセンターの立ち上げにかかる費用
ここまでコールセンターの立ち上げについて説明してきましたが、立ち上げにかかる費用はどのぐらいなのでしょうか。
自社運営の場合
自社でコールセンターを立ち上げた場合、電話機やインターネット、システムの利用料・設置料は30万円〜250万円となり、どのシステムを導入するかによっても大きく異なります。
また、これらの利用料・設置料に加えて月に3万円〜20万円のシステム維持費用・ライセンス料がかかります。
そしてオペレーターの人件費も必要です。コールセンターの時給相場は1,200円〜1,400円とほかの職種と比較し高い傾向にあります。採用のための広告費用も加算されますので、1カ月あたりの人件費は20万円〜40万円ほどになります。
代行会社に委託して運営する場合
コールセンター代行会社に委託してコールセンターの運営をする場合の費用は主に、初期費用、月額固定費用、従量課金費が必要です。
代行会社や選択するプランによって大きく異なりますが、それぞれの想定される費用相場は、おおむね以下の金額です。
初期費用 | 20~50万円 |
月額固定費 | 10~30万円 |
従量課金費用(1コールあたり) | 500~1,000円 |
自社運営と委託運営どちらが良いのか
自社運営のメリットは、コールセンターのシステムを自由にカスタマイズできることです。自社製品やサービスをより深く理解するオペレーターが応対するので、顧客満足度向上に大きくつながります。また運営ノウハウを社内に構築できるため、長期的にコールセンターの運用を検討する企業は自社運営をおすすめします。
コールセンター代行会社に委託する場合のメリットは初期導入費用を抑え、比較的早くコールセンターを開設することができることです。コールセンターのノウハウを持つ企業に委託することで、社内のコア業務に専念できるので、人員が大幅に足りない場合や構築にリソースが割けない場合は委託会社を利用しましょう。
自社運営と委託運営のどちらが企業の顧客対応窓口コールセンターとして適切なのか、社内で検討していく必要があります。
EC専門のコールセンターへの委託先選定はECのミカタへ
顧客対応専用のコールセンターを設置することで、顧客のリアルな声を常に聞くことができ、顧客とコミュニケーションがとれるようになります。
より自社のサービスクオリティを上げたい場合や、社内の生産性アップを図りたい狙いがある場合はコールセンター設置を検討してみましょう。
コールセンターの委託運営を検討する場合は、ECのミカタが運営するマッチングサービスがおすすめです。ECサイトに特化したメディアを運営する専門コンシェルジュが、丁寧なヒアリングをおこなった上で、最適な企業をご紹介します。
そのためコールセンターについての知識が全くなくても、マッチ度の高いパートナーさんと出会うことが可能です。希望する会社が決定すれば、最短1営業日で企業との商談のセッティングをおこないます。商談日や商談方法だけでなく、断りの依頼もすべてコンシェルジュに任せることができるため、じっくり選定に時間をかけることが可能です。
ぜひ、ECのミカタを利用してみてはいかがでしょうか。