【2022年のネット広告業界のトレンド】最優先メディアはモバイル・動画・SNS、 最大の懸念事項は「アドフラウド」

ECのミカタ編集部

Integral Ad Science(Nasdaq:IAS)は、2022年を方向づける業界の動向を明らかにする調査レポート「The 2022 Industry Pulse Report 日本版」を発表した。

本レポートは、日本のデジタルメディア専門家125名を対象に実施したアンケート調査をまとめたものだ。本調査結果から、今年の日本の広告活動における最大の関心事は、モバイルエクスペリエンスの向上、ソーシャルメディアキャンペーンの品質保証、デジタル動画の活用拡大であることが明らかとなった。

マーケターはモバイル、デジタル動画、ソーシャルメディアに注力

メディアの専門家の60%が、最優先メディアとして「モバイル」を挙げた。2022年、国内インターネットユーザーの81.2%が携帯型デバイスを介してメディアを消費するようになるとの予想からも、当然の結果と言える。

コロナ禍における規制は長引いているものの、人々が再び外出できるようになると、モバイル広告への支出は10%増加し、2022年に1兆7,000億円を超える見込みだ。これにより、モバイル広告費は日本のデジタル広告支出全体のおよそ4分の3を占めるようになると予測されている。

次に重要視されているのは「デジタル動画(53%)」だ。2022年に最もイノベーションの可能性を秘めているメディアとして、調査回答者の5人に3人が「CTVとデジタル動画」を挙げた。2022年には総人口の3分の2近い7,700万人までの拡大が予想されている国内の動画視聴者に対する広告効果に、業界の期待が集まっている。

2022年のデジタル動画広告費は24%増で4,800億円を突破し、デジタル動画広告費の92%はモバイルが占めると予想される。

優先メディアの第3位は「ソーシャルメディアプラットフォーム(45%)」だ。業界関係者は、ユーザー生成コンテンツ人気の高まりや、インフルエンサーマーケティングの成長を大きな機会と捉えている。

アドフラウド、ブランド毀損リスク、ビューアビリティへの注目が高まる

モバイル、デジタル動画、ソーシャルへの広告費が増加するにつれ、アドフラウドの脅威が大きくクローズアップされており、回答者の73%は、今年はモバイル環境における最大の懸念事項として「アドフラウド」を挙げている。また74%が、広告付き動画の在庫量が増加するにつれ、デジタル動画においてもアドフラウドはより深刻な課題となると回答している。

一方、ソーシャルメディア広告に関しては、アドフラウド以上に深刻な懸念として「ビューアビリティ」をあげ、54%の回答者が、ソーシャルメディア広告の評価基準はビューアビリティが最優先であると答えている。

また「ブランド毀損リスク」については、71%がCTV環境におけるブランドリスクは、CTV在庫量とCTV販売者数が増加するにつれて増していくという意見に同意、または強く同意していることがわかった。

モバイル環境(50%)やソーシャルメディア(26%)のブランドリスクに対する脆弱さも強く指摘され、これらの状況から、メディアの専門家はモバイル環境(71%)およびデジタル動画環境(79%)におけるブランドの安全性を確保するためには、第三者による検証が重要になると考えている。

メディア品質はパブリッシャーだけでなくチーム全体の課題

広告予算が縮小される中、アドフラウドやブランド毀損リスクを回避するためには、バイサイドとセルサイドの両方が広告検証プロバイダーと密接に連携し、チームとしてそれぞれが重要な役割を果たしていくことが求められる。

広告業界の専門家の大半が、モバイル(71%)やデジタル動画(79%)の広告在庫の品質を確保するためには「第三者による検証が重要」だと回答。ソーシャルメディアキャンペーンにあたっては、回答者の46%が、ソーシャルメディアプラットフォーム における品質指標の透明性が不十分な場合、広告費の支出にマイナスの影響を及ぼすと回答している。

しかし、アドフラウドやブランド毀損リスク回避の責任の所在については、回答者の大半がパブリッシャーやサプライサイドにあると考えているようだ。調査では、回答者の39%がアドフラウド削減の責任はパブリッシャーにあるとしており、42%はブランド毀損リスク対策もまたパブリッシャー主導であるべきだと回答している。

SNS広告においては「透明性の不足」「消費者の信頼低下」が課題

ソーシャルメディアキャンペーンで最優先されるのは「品質」だ。eMarketerのデータでは2022年のSNS利用者数が約7,000万人に達するとされる日本国内で、ソーシャルメディア広告費は17%増加し、7,000億円近くに達すると予測されている。

ソーシャルメディアは間違いなく、日本で最も価値のある広告機会のひとつになるだろう。一方で、本調査からは今後の課題も浮き彫りになり、マーケティング担当者の39%がソーシャルチャネルのアドフラウドに対する脆弱性を懸念していると回答。

また専門家らは、ソーシャルメディアにおける品質の「透明性の不足(46%)」と、ソーシャルメディアに対する「消費者の信頼低下(39%)」がともに広告支出を見直す重要な要因になり得ると答えた。

高まるメディア品質とビューアビリティ向上の重要性

本調査結果から、日本のメディア専門家はモバイル、デジタル動画、ソーシャルメディアを最も重要な広告メディアと捉えていることがわかった。

また、今回の調査において、マーケティング担当者からは「メディア品質」の問題に加えて、「クッキーの非推奨化」や「データプライバシー関連規制」の変更に対する懸念も挙がったという。業界自体がよりコンテキスト(文脈)と関連づけた広告配信への転換を図る中で、今後、メディアの品質をより重視していく必要がある。

日本国内の動画広告ではCPM(インプレッション単価)が高くなる傾向があるため、広告主は、質の高いインプレッションを期待できるさまざまなタイプの広告を組み合わせ、アドフラウドやブランド毀損リスクを回避しながら、ビューアビリティを向上させるよう努めることが大切と言えるだろう。

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