生鮮食品EC「Amazon Fresh」 ニューヨーク進出し拡大路線へ

Amazonが成功させたいビジネス オンライン生鮮食品販売事業

Amazonは10月17日(米国現地時間)、2007年より同社が運用するグロサリー配達サービス「Amazon Fresh」をニューヨーク都心部のブルックリンで開始することを発表した。かねてよりニューヨーク進出の噂がささやかれていたが、今回正式に実現するに至った。同社によると、午前10時までに注文した品物は当日の夕食に間に合うよう配達され、午後10時までに注文すると翌日の朝食に間に合うように配達されるとのこと。最低注文総額35ドル以上で一時間単位で配達時間を指定できる。朝、出社前に夕食の材料がなかったり、夕食で具材を使いきってしまった際など、買い物に行く暇のない日常での不便を大幅に削減できるサービスとなっている。2015年より年会費が299ドルかかるが、これを高いととるか相応ととるかは利用者次第であろう。

「Amazon Fresh」より十年ほど前、ウェブヴァンという食料品ECサイトが生まれていたが、18ヶ月で9都市圏拡大というスピード成長を遂げたものの物流面を主たる要因に倒産している。それ以降も生鮮食品の即日配送業は失敗事例が続き、名だたる大手も伸び悩んでいることから成立の難しいビジネスモデルとされていた。
一方で、AmazonのCEOであるジェフ・ベゾスは「ウェブヴァンになくAmazonにあるものは既存の膨大なデータベースである。我々のユーザーは本や家電と一緒に食料品もネット購入してくれるはず」と語り、事業成功への自信をみせていた。2007年のサービズ開始時にシアトル市内の2地域で始まった同サービスだが、カルフォルニア州サンフランシスコのベイエリア、サンディエゴ、ロサンゼルス、オレンジ郡など西海岸を中心に着実に展開を広げている。今回初の東海岸での展開を受け、今後のさらなる拡大が想像される。

将来的には配送網も自社運営か 「Amazon Fresh」が持つ何重もの狙い

これまでAmazonは、運送大手の米フェデックスや米UPSを下請けで利用していた。今回の「Amazon Fresh」では、Amazonが所有する巨大倉庫からユーザー宅まで食料品を配送するのは独自運営の緑色のトラックである。年々増加の一途をたどる配送費用はAmazonが抱えるネックの1つであり、これを抑えるため「Amazon Fresh」を入り口に自社配送ネットワークを構築する目論見がありそうだ。食料品以外も同じトラックで配達することで効率化をはかり、また指定時間も一時間単位で決められるという気配りは、忙しく買い物に行く暇がないというターゲットユーザーの「かゆい所」に手が届くサービスであろう。世界的に優秀とされている日本国内の流通業者でも、指定時間の幅は3~4時間あることからも、その秀逸さがうかがえる。
「Amazon Fresh」は現在も実験期間中であると同社は語るが、将来的にシステムをさらにブラッシュアップし、自前の配送網を徹底することにより配送時間の面でも完璧にコントロールしていくつもりなのではないだろうか。
日本国内に「Amazon Fresh」が進出してくる日も、そう遠くないのかもしれない。