モイストの措置命令の影響は?(下) カタログ通販のジレンマ

消費者庁食品表示対策室によるモイストへの措置命令では、モイストが同封チラシを使い消費者にアプローチしていた。健康増進法では誇大広告にあたる可能性を予見し得た場合、媒体社もその責任を問われる可能性がある。チラシを同封していた媒体社は何らかの対策を講じているのか。

チラシを同封していたあるカタログ通販会社は、モイストに「修正を依頼した」と話す。審査基準は、日本雑誌広告協会の示す掲載基準などを参考に判断。モイストの同封チラシは「他社への同封物と比べてもかなり修正を入れて治してもらった」とし、「(それでも違法性の懸念があるので)その後の掲載は提案しなかった」とする。

別のカタログ通販会社も「修正は依頼していた」と話す。ただ、「修正依頼後の広告の改善は確認していない」という。

この通販会社では、同封チラシの依頼を受けた際、その内容を薬事法などの観点からカタログ表示と同じ基準で判断。外部のコンサルティング会社にもチェックを依頼しているという。広告を「明らかな違法性があるもの」や「表示関連法に抵触する可能性のあるもの」に分類。前者は断るが違法性の判断は難しく、可能性のあるものは修正を依頼するという。ただ、その後、広告主が直したかは確認しない。その理由を「納品までの広告の制作や修正にかかる時間もあり、どの程度強制力を持って改善を依頼できるかを考えると難しい」と話す。モイストへの処分を受けても「チェック自体は足りないと思っていない。これまで同様、修正点を広告主にフィードバックする」という。

表現の判断の難しさは理解できるが、こうしたケースは"虚偽誇大であることを予見し得た"と判断される可能性がある。「仮に改善点を確認しても、納品の段階で修正前のチラシをいれられたらチェックできない」とも話すが、改善点の確認の有無は、大きな分岐点になる可能性があるだろう。

"他社のことだから"という通販会社にみられる当事者意識の希薄さは、仮想モールと出店者の関係にも似ている。出店者の表示関連法への抵触の多さから"モール責任論"が度々取り沙汰される中、同封チラシも同じ見方をされる恐れもあるのではないだろうか。

通販を生業としない会社ではよりいっそう当事者意識が希薄なケースもある。

会員向け会報誌に同封していたある会社は、「企業の評判をネットで調べたり、代理店など知っていそうな関係者にクレームがないか尋ね、危ないものは避けるようにしている」とする。ただ、「内部に表示関連法の専門スタッフはおらず、時間の制約もある」として、体制が不十分であることを認める。「今後検討しないといけない」とするが、明確な対応策は出てこなかった。

同封媒体を持つ別の会社は、「場合によっては日本広告審査機構に確認していた」と話す。今後は「より厳しくする。企業の信用性を測る上で民間信用調査機関のリスク情報も参考にしたい」とした。



ある代理店は同封チラシについて「媒体社にとってリストを取られても、それ以上にカタログの配送や製作費のコスト削減効果が大きく、やめられない」と話す。

審査を厳しくしすぎれば広告主が集まらずに本業を圧迫する。広告主からしても、マスでできない表現ができるからこその同封チラシであるとも言える。ただ、その側面ばかりを見て対応が遅れれば、その姿勢を行政に問題視される可能性もある。(おわり)