ヤマト運輸  「国際クール宅急便」始動、一貫保冷で香港翌日

VN構想けん引する重要サービス

ヤマト運輸は10月28日、小口貨物の一貫保冷国際輸送サービス「国際クール宅急便」の展開を始めた。ヤマトグループが掲げる「バリュー・ネットワーキング」構想を支えるエンジンのひとつと位置づけられるもので、日本から発送した荷物を翌日にアジア各地の顧客へ届ける圧倒的なスピードを武器に、日本の生産者が作った食材のアジア展開などを支援する。食品を扱う通販事業者にとってもメリットのあるサービスと言えるだろう。一方、「国際クール宅急便」の展開でポイントとなるが日本とアジアの結節点となる「沖縄国際物流ハブ」。同拠点で実際にどのような作業が行われているのか、サービス開始初日の様子を見てみる。

「国際クール宅急便」は、日本から発送した冷蔵・冷凍の荷物を「宅急便」ネットワークを有するアジアの国・地域の顧客へ翌日に届ける小口貨物の一貫保冷国際輸送サービスで、法人顧客向けに提供する。

これまで全国で利用可能な小口荷物の国際保冷輸送サービスがなく、日本の生産者が自ら作った食材を海外で販売する際のネックとなっていたが、「国際クール宅急便」では、全国で1個から荷物を集荷。生鮮品などの食材を高鮮度のまま現地顧客に届けることをコンセプトのひとつとし、
第1弾となる香港向けの展開では、関東および大阪、沖縄で当日夕方頃までに集荷・持ち込み(他地域は当日午前までの集荷・持ち込み)された荷物を翌日午後2時以降に配達する体制を敷く。

この圧倒的なスピードを支えるのが、昨年11月にスタートした「沖縄国際物流ハブ」の活用だ。

以前のアジア向け国際貨物輸送サービス(常温)は成田空港を経由する仕組みだったが、通関体制や深夜発着便の制限などの問題から、現地顧客に荷物が届くまでに数日かかっていた。これに対し、「沖縄国際物流ハブ」では、24時間の通関および航空日の発着体制を保有。これにより、深夜の航空便で那覇空港に集められた荷物の通関手続きを速に行うことができ、早朝にはアジア向けの貨物専用機が出発することができる。つまり、通関や深夜発着便の制限による待ち時間がなくなるわけだ。

加えて、アジア主要都市まで航空便で4時間圏内という立地の良さもあり、日本から発送した翌日午後2時以降に現地で荷物を配送する体制を実現した。

これは、「沖縄国際物流ハブ」の活用に関する地元・沖縄県との連携、全日本空輸(ANA=同・東京都港区、篠辺修社長)の航空ネットワーク活用を通じて構築したスキームで、その第1弾サービスとしてアジア主要地域に最短翌日に荷物を届ける「国際宅急便」を今年5月に投入。さらにANAの保冷輸送機能などと連携し、一貫保冷の国際小口輸送サービスとして展開を始めたのが今回の「国際クール宅急便」になる。

また、ヤマトグループでは、アジア圏で構築を進める「宅急便」ネットワークと、日本とアジアを結ぶ結節点となる「沖縄国際物流ハブ」を結び付けることで、従来にないサービス展開を構想。

日本や香港、台湾など各国・地域内にとどまっていた「クール宅急便」を国や地域をまたいだ展開へと広げる「国際クール宅急便」は、この流れを具現化させる独自性と付加価値の高いサービスで、今年7月に公表した「バリュー・ネットワーキング」構想をけん引する5つのエンジンのひとつと位置づける重要な施策になる。

では、「国際クール宅急便」の展開で要衝となる「沖縄国際物流ハブ」では、どのような作業が行われているのか。初日の様子を見てみよう。

「国際クール宅急便」の展開初日となる10月28日の取扱荷物数は約850個で羽田、中部、関西、福岡など各空港から、午前0時以降出発の直行便(福岡は夕方の便)で那覇空港に荷物が空輸された。

当日、那覇空港に最後に着いた関西空港からの便の到着時刻は午前2時過ぎ。午前5時15分の香港向け貨物専用便出発まで約3時間前で、ここからの作業が重要になる。

作業の大まかな流れとしては、空輸されてきた「国際クール宅急便」の荷物を保冷コンテナのまま、ANAの「沖縄貨物ハブ」内のヤマト作業スペースに設置された「定温仕分け室」に搬入し、定温管理下で搬入されたコンテナ内の荷物をひとつひとつスキャンして荷物の到着情報を入力。海外発送用の送り状の内容などをチェックした後、香港発送用のコンテナに積み換えを行う。1コンテナ当たりの作業時間は3分の設定だ。

初日に扱ったのはコンテナ6個分で、コンテナの積み込み作業が完了した貨物専用機は、午前5時過ぎに香港へと出発。6時50分頃に香港に到着した荷物は、通関および検疫手続きを行った後、午前11時頃からグループのロジスティクス会社で現地のセールスドライバーが携行する携帯POS端末に対応した送り状の張り替え作業を実施。正午頃に香港ヤマト運輸のベースに荷物を搬入し仕分けを行った後、午後2時以降に現地顧客へ配送された。

因みに、沖縄に所在する「定温仕分け室」のスペースは約130平方メートルで、X線によるスキャン装置や冷凍および冷蔵の保管庫などを装備。実際の運営では、早い時間帯に到着する荷物や、税関検査などで待機となる荷物も出てくるが、「定温仕分け室」に設置した冷蔵・冷凍の保管庫は、こうした荷物を一時的に貯蔵するためのものだ。

現状、「定温仕分け室」では1日2000個程度までの荷物の仕分けに対応できる体制を整備するが、今後、「国際クール宅急便」の展開エリア拡大などで荷物の取扱量が増えた場合には、拡張することも可能だという。

通販利用で期待される拡販効果

通販利用で期待される拡販効果

通販での「クール宅急便」の利用を考えた場合、やはりメーンとなるのは食品を扱う通販事業者になる。全国で1個から荷物を受け付けるという点で中小の事業者でも使いやすく、発送翌日には現地顧客に商品が届けられる点では、鮮度が求められる生鮮品の取り扱いでもメリットは大きいと言えるだろう。

さらに、より通販の実務的な部分で考えてみると、拡販につながるカギがいくつかある。

「国際クール宅急便」では、夜の航空便を使った全国からの荷物を24時間稼働の「沖縄国際物流ハブ」に空輸することで荷物の発送から現地顧客への配達までのリードタイムを大幅に短縮したのが特徴だが、別の見方をすれば、通販での翌日配達商品の受注締め切り時間を延長させることにもつながる。

実際、関東および大阪、沖縄では通常の営業店の受付時間である午後6、7時頃、他の地域では午前中までに集荷・持ち込みが完了すれば、翌日午後から現地顧客に荷物を届けることが可能だ。
食品を扱う通販事業者からすると、翌日配達商品の受注時間延長は、より早く商品を入手したいという顧客などに対する販売機会の拡大につながり、注文から商品配達までのリードタイムが大幅に短縮されていることを考えれば、キャンセル率の低減による売り上げアップにもつながる。

また、「国際クール宅急便」の通販利用で、もうひとつのポイントと言えるのが荷物の追跡機能。

通常、国内から海外に荷物を送る場合、国内輸送や海外輸送、現地での荷物の保管や配送など異なる複数の事業者が関与するため、途中で荷物の追跡情報が途絶えてしまうことも少なくない。

これに対し「国際クール宅急便」では、日本から現地顧客に荷物を届けるまでの間、ヤマト運輸がポイントごとに荷物の位置情報を把握するため、通販事業者に海外顧客から荷物の発送状況に関する問い合わせがあった場合でも、荷物の位置を伝えることができる。これは、現地顧客の商品・サービスに対する信頼性向上に寄与する機能と言え、ひいてはリピート購入の促進も期待できるわけだ。
展開エリアを拡大来年度中に台湾へ

「国際クール宅急便」の初日の取り扱い荷物が約850個だったことについて、ヤマト運輸側も手応えを感じているもようで、同社の長尾裕常務執行役員は「予想よりも多い」とする。初荷の中身としては、飲食店など業務用食材がメーンだったが、"ドア・トゥ・ドア"の一貫保冷の国際小口輸送サービスという点からすると、やはりターゲットとなるのは通販。今後の展開としても「ECにシフトしていく部分もあると思う」(同)とする。

ヤマト運輸では、2日目以降の「国際クール宅急便」の取扱個数は公表していないが、九州の荷主企業がリピートして香港向けに荷物を出すなど、早くも固定荷主がつきつつあるようだ。

香港向けの「国際クール宅急便」については、年間10万個の取り扱いを当面の目標に設定。また、展開地域も順次広げる計画で、来年度中には台湾での展開を予定する。

日本の食材はアジアの消費者の間で人気があり、今後、通販での取り扱いも増えていくはず。その意味では、これから通販事業者の間で「国際クール宅急便」の利用ニーズが高まっていきそうだ。

定温仕分室の竣工式開催 日本の食材“アジアで食される世界作る”

定温仕分室の竣工式開催 日本の食材“アジアで食される世界作る”

「国際クール宅急便」の初荷受け入れを前に、ヤマト運輸は10月28日夕方、ANAの沖縄貨物ハブ内に設置した定温仕分け室の竣工式を開催し、ヤマトおよびANA、沖縄県から関係者が出席した。

ヤマト運輸の長尾裕常務執行役員は、「国際クール宅急便」の展開を通じ、日本の生産者が作った食材が「アジアの人に食されるような世界を我々が作る」とあいさつ。

また、沖縄ヤマト運輸の赤嶺真一社長は、日本とアジアを結ぶ結節点を担当する立場として、「国際クール宅急便」を顧客に信頼される品質の商品に育てていくとするとともに、沖縄で作られた食材のアジアへの販路拡大など、「沖縄の産業発展に寄与することを考えている」と語った。