ネット上でネガティブ評価・クレームが多い業種とその内容は?【アラームボックス調査】
AI与信管理サービスを提供するアラームボックス株式会社(本社:東京都新宿区、代表取締役:武田浩和、以下「同社」)は、7,924社を対象に2022年1月~6月にSNS等インターネット上で投稿された各企業に関連する口コミや評判からネガティブ評価・クレームを抽出し、「2022年上半期 インターネット上で悪評・クレームが多い上位10業種」を集計し、その結果を公表した。ここではその概要についてポイントを絞って見ていく。
調査概要
[調査期間]
2022年1月1日〜2022年6月30日
[対象企業]
アラームボックスでモニタリングしており業種登録がされていた7,924社
[対象データ]
インターネット上に投稿された口コミのうち、アラームボックスが「悪評・クレーム」と分類したもの
調査結果
◆1位
無店舗小売業:1社あたりの平均悪評・クレーム数:4.48件(前回ランキング:1位)
▷主な事業:通販事業
昨年に引き続き、通販事業を主力とし複数のネットショップ(楽天、Yahoo!ショッピング、Amazon、自社サイトなど)を設けていることが多い無店舗小売業が1位となった。梱包や配送についてのクレームが多く、「発送予定日を1週間過ぎても発送されない」「梱包が粗雑で商品が壊れていた」といった書き込みが多発していた。また、昨年度の調査において、業種内で一番クレームの多かった企業が、今年度も変わらず一番のクレーム数となっており、一時的なものではなく、恒常的に起こっているクレームが発生していることがわかった。
◆2位
その他の小売業:1社あたりの平均悪評・クレーム数:3.57件(前回ランキング:3位)
▷主な事業:じゅう器,医療品,化粧品,書籍,文房具,中古品などの小売店など
クレームが多かったのは、書籍やCDを販売する小売店の通販事業だった。特にその他の小売業の場合、実店舗を構えていることもあり、「商品が思ったものと違う」というクレームは無店舗小売業より少ない反面(中古品販売を除く)、店舗があることにより在庫管理が難しいのか、「在庫ありとなっていたから購入したのに、購入後に在庫切れとなり無断キャンセルされていた」といったクレームが複数の企業で見られた。また、化粧品に関する悪評・クレームも多くあり、レビューサイトやSNS上での書き込みが活発に発生していた。
◆3位
化学工業:1社あたりの平均悪評・悪評クレーム数:1.87件(前回ランキング:21位)
▷主な事業:化粧品メーカー、理容用品メーカー、製薬会社、油脂加工品製造会社など
昨今は、メーカーも楽天やアマゾンといったECモールに直接出店しており、顧客と直接の接点を持つ機会が多くなっているが、通販事業のノウハウ不足により、配送や梱包といった製品とは関係の無いクレームが多く発生していた。また、コスメやスキンケアなどの化粧品、シャンプーや育毛剤といった理容品は、レビューサイト上で口コミが書き込まれることが多く、その中で悪評・クレームに関する内容も多く含まれていた。その他、「定期購入の解約ができない」「勝手に定期購入に移行されていた」「ねずみ講のようなものに誘われた」といった、製品ではなく購入方法に関する悪評が発生している企業もあった。
◆4位
各種商品卸売業:1社あたりの平均悪評・クレーム数:1.85件(前回ランキング:40位)
▷主な事業:多品目の商品を卸す商社
BtoBでの販売を主業態としてきた商社なども、通販事業への取り組み、消費者への直接販売を始めたことで、これまで一般の目に触れにくかった卸売業者に関する悪評・クレームがネット上に発生するようになった。具体的には、「検品されたと思えない汚れがついていた」「ギフト包装で注文したのに、包装がなく送られてきた」といった、ECショップ運営に対する対応が不完全な企業が数社あった。なお、集計対象となった61社のうち悪評が発生していた企業は12社だけで、一番多かった企業では56件の悪評・クレームが発生、全体の約半数を占める結果であったことから、複数社にクレームが集中している状況となっている。
◆5位
各種商品小売業:1社あたりの平均悪評・クレーム数:1.62件(前回ランキング:19位)
▷主な事業:百貨店や総合スーパーなど、衣食住にわたる各種商品を一括して販売する小売業
百貨店や総合スーパーなどを代表とする各種小売業では、実店舗に対するクレームと通販事業に対する口コミがおよそ半数ずつという結果になった。店舗に対する口コミは主に地図アプリに書き込まれており、食品売り場やトイレなどでの衛生面を指摘するクレームや、「店頭のアルコール消毒がいつも切れている」といったコロナ禍だからこそ気になるクレームが発生していた。また、通販事業に対する口コミでは、他業種と同様に、配送や梱包、不良品に関するクレームが多く発生していた他、返品や交換対応に関するクレームが多く指摘されており、ネット販売時においても柔軟な顧客対応を求める声が散見された。
◆6位
飲食料品小売業:1社あたりの平均悪評・クレーム数:1.61件(前回ランキング:15位)
▷主な事業:健康食品販売、コンビニエンスストア、弁当販売など
クレームが集中していたのは健康食品の通信販売だった。「定期購入の商品が未開封でも返品できないうえ、解約の連絡は繋がらないので勝手に送られてくる」「間違った商品が送られてきた挙句、交換してもらおうとしたら、家族が使用できることや使用期限がまだあることを理由に、企業の不手際なのに交換を渋られた」といった社内オペレーションの不手際によるクレームが多く発生していた。その他、コンビニエンスストアや弁当販売店に対する接客や料理の質に関わるクレームが掲示板に書き込まれていた。
◆7位
宿泊業:1社あたりの平均悪評・クレーム数:1.55件(前回ランキング:5位)
▷主な事業:ホテル、旅館、学生寮など
地域割りの適用やコロナ禍で抑制されてきた旅行を解禁した人が多くいた半面、「奮発して泊まったのにサービスが悪い」といった内容での口コミが多く発生していた。特に多かったのは「チェックイン後の部屋にホコリや髪の毛が落ちていた」、「洗面や排水など水回りに汚れやごみが残っている」、「フロントで長時間待たされた」など、清掃面やサービス面への不満が散見された。また、同調査の集計対象ではないが、従業員からの口コミ情報では「コロナ禍によって人員が削減され、現場がきつい」という書き込みもあり、コロナ関連で人員を制限せざるを得ない状況が原因となり、悪評・クレームにつながっている事態も多いと分析している。
◆8位
その他の卸売業:1社あたりの平均悪評・クレーム数:1.39件(前回ランキング:27位)
▷主な事業:主として家具・建具・じゅう器,医薬品,化粧品,その他の商品を仕入卸売する事業所
化粧品に関する口コミと、ネット通販をしている商社が扱う商品に対するクレームが書き込まれていた。化粧品に関しては使用感に関するものが多く、その他のネット通販に関しては、「ヒビが入ったものが送られてきた」「初期不良のものを仕様といって交換してもらえなかった」という商品の検品体制を疑うものや、「母の日ギフトなのに母の日に間に合わなかった」「時間指定の通りに届かなかった」といった配送に関するクレームも発生していた。
◆9位
織物・衣服・身の回り品小売業:1社あたりの平均悪評・クレーム数:1.33件(前回ランキング:11位)
▷主な事業:アパレル販売店など
ネット通販でレディース服を販売する企業に対する口コミ情報が多く、「縫製が思ったより悪い」「サイズ交換ができない」「穴が開いていた」など、実物が見られないことを原因とするクレームが多く見られた。また、アパレル独特のものとして、サイズ感や色味に対するクレームが他業種より多い傾向にった。オンライン試着などのデジタル化が進む中で、直接販売とオンライン販売時における購入体験の差異をいかに無くすかで、消費者の購入体験の向上や口コミ情報の内容も変化していくと分析している。
◆10位
銀行業:1社あたりの平均悪評・クレーム数:1.06件(前回ランキング:7位)
▷主な事業:都市銀行、地方銀行、ネットバンクなど
「コロナの影響で窓口の予約を求められたが、10日以上先しか予約できない」「手続きに対して融通がきかない」など窓口対応に関するクレームが地図アプリや掲示板に書き込まれていた。また、コロナ禍により普及が進んだネットバンクやアプリについては、「使い勝手が悪い」など機能面への不満がネット上に書き込まれているだけでなく、「問い合わせても電話が繋がらない」といった二次的なクレームも発生していた。
同社による主な調査結果と考察
オンライン上に存在する口コミ情報などの定性情報を業種別で分析した結果、通販事業、美容、サービス業に関する悪評・クレームが多く発生していることがわかった。
◆通販事業
前回同様、総合通販事業者を始めとする無店舗小売業に対する悪評・クレームが多く、昨年度に引き続きランキング1位となった。また今回の調査では、小売業や卸売業が営む通販事業でも悪評・クレームが増加しており、特に、在庫管理や梱包、配送ミスに関する内容、購入時の写真と実際に届いた商品の違いに関する内容などが多く投稿されていた。小売業や卸売業を本業とした企業が通販事業を展開する場合は、配送や在庫管理、インターネットマーケティングなど、通販事業独自のノウハウを得た上で取り組むことが、悪評・クレームの削減につながると分析している。
◆美容に関するレビューの増加
前回調査と比較すると、コスメやスキンケア、シャンプーや育毛剤などの美容系商材に対する悪評・クレームが多く発生する結果となった。「使用してみたが期待する効果は得られなかった」「自分の肌や体に合わない」といった使用感に関する内容が多かった他、「定期購入の解約ができない」「勝手に定期購入に移行されていた」といったクレームも多く見られた。美容系商材のレビューサイトやまとめサイトが増えていることもあり、消費者はSNSやレビューサイトを事前に確認した上で購入していることが多く、口コミ需要の高さが目立つ。また、コンプレックスを刺激する美容系商材の広告内容に対して「ルッキズムを増長させる」といったような悪評・クレームが集まり、企業に対して抗議を行う署名活動に至ったケースもあり、利益だけを求めた過激な表現には注意が必要となりそうだ。
◆ウィズコロナにおけるサービス業
2021年に3回にわたって発生した緊急事態宣言を背景に、対面でのやり取りを中心とするサービス業では、三密回避や消毒対策、キャンセル時の対応に関するクレームが多く発生していた。今回の調査では、ウィズコロナならではの悪評・クレームがサービス業界において発生していた。宿泊業においては、感染者数が落ち着き旅行需要が徐々に回復していた一方で、「フロントで長時間待たされた」、「部屋の清掃が十分でなかった」といったクレームが多く発生し、銀行業では、「窓口予約が10日以上先しかできない」といった窓口対応に関するクレーム、「ネットバンクやアプリの使い勝手が悪い」、「問い合わせようとしても電話が繋がらない」といったクレームが多く見られた。ウィズコロナにおけるサービス業では、コロナ前と異なるサービス内容に困惑している消費者の実態を捉えた上で、顧客満足度を高めていく施策を行っていくことが重要であると言えそうだ。
サマリー
調査結果にあるように、2021年調査に続き無店舗小売業が1位となり、通販事業へのクレームがネット上に頻出していた。また小売業や卸売業から通販事業に参入した企業への商品違いや配送時のクレームが頻出しており、美容関連の商品はレビュー活用の需要が高く、口コミでの悪評が頻出し上位にランクインしていた。
EC事業にフォーカスしてみると、自社で発送を行っていない場合、フルフィルメントサービス提供事業者や、配送業者におけるサービス品質に大きく依存せざるを得ない部分も多く、各ショップにおいて改善できる余地は少ないだろう。
一方で、自社で発送を行っていたり、受発注や商品管理、顧客対応の面では、ショップにおけるサービス品質が評価にも直結することになり、限られた人的リソースや資金の中でも、その面で日々改善することが、顧客とのロイヤリティ醸成を通した高評価へもつながることになり、売上向上にも寄与することになりそうだ。