オンライン接客とは?ツールの種類から成功のコツ、導入事例まで紹介
2020年以降、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、これまで対面で行っていた接客業務のオンライン化が急激に進みました。オンライン接客へのシフトを検討しつつも、具体的な導入や運用の部分で疑問を抱えている方も多いのではないでしょうか。この記事では、オンライン接客の概要、メリットとデメリット、導入事例について解説します。
オンライン接客とは
オンライン接客とは、チャット機能やビデオ通話などの機能を使い、非対面で接客を行うことです。Web接客とも呼ばれており、どちらも「Web上のプラットフォームを介した接客」という意味で用いられています。
しかし、Web接客は狭義では「独自のサイトやアプリを活用して、顧客に対して接客サービスを提供すること」を指しており、オンライン接客のうちの一つとするケースもあります。
オンライン接客ツールの種類を比較
前述のとおり、オンライン接客にはさまざまなパターンがありますが、接客の方法によっていくつかの種類に分けられます。大きく分けると、主に以下の3種類です。
●ポップアップ型
●チャット型
●ビデオ型
また、ビデオ型については、利用するプラットフォームとして以下の4つがあります。
●Zoom
●Skype
●Google Meet
●Microsoft Teams
以下では、それぞれの接客方法、オンライン会議ツールについて解説します。
ポップアップ型
ポップアップとは、スマートフォンやパソコンの画面上で、1番前に現れるウィンドウのことです。OSやアプリケーションのアップデート情報や注意喚起のほか、LPやECサイトにおけるおすすめ情報などがポップアップ表示されるケースもあります。
ポップアップ型のオンライン接客では、顧客の閲覧履歴や購入履歴などをもとに、メッセージや割引情報などを表示するものが一般的です。
チャット型
チャット型とは、チャットフォームを設けて顧客の疑問や悩みを解消できる接客機能です。チャット型には有人と無人の2パターンがあります。有人チャットの場合、カスタマーサポートセンターなどを設置する必要がありますが、より細やかな接客サービスを提供できます。
一方、無人チャットでは、あらかじめ疑問や質問の内容を想定して、回答を用意しておく仕組みです。そのため、リソースの負担はほとんどありませんが、イレギュラー対応が難しい点が課題です。
ビデオ型
ビデオ型とは、オンライン会議ツールなどを利用して画面越しに接客できる機能です。ポップアップ型やチャット型に比べて、店頭での接客とあまり環境を変えずに運用できる点がメリットです。
以下では、それぞれのオンライン会議ツールについて解説します。
Zoom
Zoomは、世界的に有名なオンライン会議ツールです。コロナ禍において急激に利用者数が伸びたプラットフォームであり、ビジネスシーンにおける導入実績も豊富です。
Zoomの特徴として、通信の安定性が高く、豊富な機能を備えている点があげられます。ただし、無料プランだと会議の時間や参加人数が制限されるため、本格的に運用するには有料プランの契約が必須です。有料プランを契約すると、40分以上の長時間の接客、複数の顧客への同時接客が可能です。
Skype
Skypeは、個人ユーザーが多い通話ツールです。オンライン会議に特化したツールではなく、個人間のコミュニケーションにも広く用いられています。
Skypeの特徴は、無料で国境を超えて通話できる点です。通話時間を問わず、無料で利用できるうえ、最大で50人までビデオ通話に参加できます。
Google Meet
Google Meetは、Googleが提供しているオンライン会議ツールです。セキュリティがしっかりしている点に加えて、GMailやGoogleカレンダーをはじめとする外部ツールとの連携機能に長けています。とくにGoogle WorkSpaceを利用している企業では、主要な社内システムと連携できるため、拡張性が高いサービスとしてよく導入されています。
また、Googleアカウントをもっているユーザーは多いため、toC向けの接客サービスとしてもおすすめです。
Microsoft Teams
Microsoft Teamsは、Officeシリーズで有名なMicrosoftが提供するオンライン会議ツールです。無料版と有料版がありますが、基本的なビデオ通話に使用する場合は大きな差はありません。ただし、無料版ではほかのOfficeツールと連携ができないため、ビデオ通話以外にも機能を求めるのであれば有料プランの契約が必要です。
オンライン接客のメリット
対面接客に比べると、オンライン接客は不便なようにも思えますが、どのようなメリットがあるのでしょうか。
以下では、オンライン接客のメリットについて解説します。
EC顧客のコンバージョン率・顧客単価を上げやすい
ECはスマートフォン一つで商品を購入できる手軽さがある一方、実際に商品を手に取って見られないうえ、店員への質問などもできません。そのため、購入を躊躇してしまうケースも多々あります。
しかし、オンライン接客を導入していれば、顧客は疑問や悩みがあればチャットやビデオ通話を通してすぐに相談できます。また、アップセルやクロスセルにつながる提案ができる点もオンライン接客ならではの強みです。
人材を有効活用できる
実店舗の場合、接客対応ができるのはその店舗に勤務しているスタッフだけです。一方、オンライン接客では各店舗にタブレット端末などを置いておけば、どの店舗からでも接客対応ができます。場所を問わず、手が空いているスタッフが対応できるため、人材の有効活用につながるでしょう。
また、かならずしも店舗に出勤する必要はなく、在宅ワークも可能になります。働く人にとっても負担が減るメリットがあります。
非対面ニーズに対応できる
コロナ禍において生まれた非対面ニーズに対応できる点もオンライン接客の強みです。また、あらゆるシーンがオンラインにとってかわり、顧客側としてもオンライン接客に対するハードルはそれほど高くなくなっています。
自宅で手軽にショッピングができるECのメリットとかけあわせて、ECなのに接客が受けられるオンライン接客を取り入れられれば、実店舗にはない魅力をアピールできるでしょう。
顧客ロイヤリティを高めやすい
オンライン接客では、One to Oneでサービスを提供することが可能です。そのため、顧客は丁寧なサービスを受けていると感じ、企業やブランドへの好感度が高まりやすいといえます。
オンライン接客のデメリット
オンライン接客には、オンライン上で対面に近いサービスを提供できる強みがある一方、デメリットも存在します。そのため、導入にあたってはデメリットを許容できるかどうかもポイントとなるでしょう。
以下では、オンライン接客のデメリットについて解説します。
オンラインならではの難しさがある
オンライン接客では、オフラインで接客するときとは異なり、相手の表情などがわかりにくいこともあります。接客において相手のリアクションが読みとりづらいのは、大きなデメリットとなります。接客するなかで相手の理解を確かめたり、疑問がないかを聞いたりする工夫が求められるでしょう。
顧客がツールを使いこなせない可能性がある
オンライン接客では、顧客側もある程度ツールを使いこなせる必要があります。従業員側はツールの使い方を学習できる研修などを設ければ問題ありませんが、顧客に対して操作のサポートまで提供するのは難しいでしょう。操作がわからない顧客に対して、どのように接客サービスを提供するかはポイントの一つです。
ネット環境に左右されやすい
ツールを使うにあたって、ネット環境を整えることも重要です。スタッフ側と顧客側の両方のネット環境が整っていなければ、スムーズな接客ができないこともあります。とくにビデオ通話をするサービスでは、安定した通信回線が確保できないと、映像が止まったり、かくついてしまったりしやすくなります。
オンライン接客ではできないこともある
オンライン接客では、商品に対する説明や疑問などは解決できますが、直接商品を手に取りたいというニーズには応えられません。しかし、実物を見て検討したい顧客は一定数いるため、サンプルを提供するなどのフォローが求められるでしょう。
オンライン接客を成功させるコツ
オンライン接客は、対面接客とは大きく異なる特徴があります。そのため、オンラインならではの戦略設計が必須です。
以下では、オンライン接客を成功させるコツについて解説します。
目的を明確化させる
まず、オンライン接客を導入する目的を明確にすべきです。たとえば、業務の効率化や人件費の削減など、さまざまな目的が考えられますが、目的に応じて運用方法やツールを選ぶ必要があります。目的を達成するためには、どんな運用体制・ツールが求められるかという観点から検討するとよいでしょう。
スムーズな購入動線を確立させる
ECサイトと同様、顧客が商品を購入しやすい環境を整えることも重要です。直接サービスを提供できるオンライン接客では、顧客の熱量を高めやすいため、コンバージョンにつながりやすくなります。しかし、購入までの流れが長かったり、わかりにくかったりすると離脱してしまうため、購入導線を意識した設計がポイントになります。
オンライン接客のノウハウを蓄積させる
オンライン接客を導入しても、ただ接客をするだけではいけません。接客業務を実施するなかで問題点を見つけ、改善策を練ることでよりよいサービスを提供できます。接客の質を改善することによって、リピーターの獲得やロイヤリティの向上につながるでしょう。
オンライン接客を成功させた企業の事例
前述のとおり、オンライン接客と対面接客のノウハウはまったく異なります。そのため、オンライン接客をはじめて導入する際は、他社がどのようにサービスを提供しているかを調査しておくことも重要です。
以下では、オンライン接客を成功させた事例について紹介します。
[百貨店]三越伊勢丹
三越伊勢丹のオンライン接客は専用のアプリを通して行われます。オンライン接客を通して、とくに大きな成果をあげたのはランドセル販売です。長く使える商品を求めるニーズに対して、店員とコミュニケーションがとれるオンライン接客が刺さったと考えられます。
「LINEチャット→Zoom対応→来店予約」の流れは、ほかのジャンルにおいても成功を収めています。
[不動産]三菱地所レジデンス
不動産業界においては、新型コロナウイルスの流行以降、物件の内見が難しくなってしまったことが課題となっていました。そこで三菱地所レジデンスは、VRを用いた内見、ビデオ通話による商談によってオンライン接客を実現しました。
画面越しではあるものの、実際の部屋の様子を確認できるため、オフラインに近い感覚で契約まで進める点がメリットです。
[アパレル]23区
アパレルブランドの23区では、ビデオ通話を活用して、顧客が家にいながら受けられるスタイリングサービスを提供しています。ファッション分野では、プロである店員の意見をもとにコーディネートを組むニーズが存在しており、オンライン接客サービスは非常に好評となっています。
[コスメ]資生堂
資生堂はもともとLINEやメールなどで接客サービスを提供していましたが、ECサイトである資生堂ワタシプラスにもオンライン接客機能を加えました。その結果、購入率を2.5倍まで成長させています。
[インテリア]ニトリ
家具をはじめとするインテリア用品を展開するニトリでは、以下の2種類のオンライン接客サービスを提供しています。
●ショールームのリモート接客
●リフォーム相談
とくにショールームのリモート接客は珍しく、スタッフ不在時でも顧客がショールームを利用できるサービスとなっています。また、リフォームは、ビデオ通話でリフォームしたい部分を見せながら相談できるサービスとなっており、顧客の家を訪問する負担も軽減可能です。
今後のオンライン接客について
今後のオンライン接客については、ツールや接客システムなどを含めた環境整備が課題です。どうすれば顧客がストレスなくオンライン接客を受けられるかを検討して、改善していく必要があるでしょう。
まとめ
新型コロナウイルスの流行以前は、あまり注目されていなかったオンライン接客ですが、今では多くの企業が導入しています。一方、オンラインならではの不便さもあり、対面と遜色ないサービスを提供するには工夫や改善が求められる点があるのも事実です。そのため、オンライン接客の導入や運用にあたっては、従業員や顧客の声をもとに、どこまで改善を図れるかがポイントとなるでしょう。