【通販各社の効果あるキャンペーンとは?】 安心感やワクワク感がポイント

「消費者の興味をどう喚起するか」「初回購入を促すにはどうすればよいか」──。通販各社は自社の商品やサービスをより効率的により多くの消費者に認知してもらい、購入してもらおうと日々、様々なキャンペーンなどを行っている。効果的なやり方があったとしても、すぐに他社に真似されたり、同じ手法では飽きられるため、手を替え品を替えて、消費者の"心を動かす"工夫を各社とも行っているようだ。通販実施各社の注目すべきユニークな販促キャンペーンの内容や効果について見ていく。

【ニューヨーカー、ロコンド、アマゾン】“返品可能な”福袋など

【ニューヨーカー、ロコンド、アマゾン】“返品可能な”福袋など

初回購入や継続購入を促すために安心感やお得感を与えるキャンペーンを展開する通販実施企業は多いが、その中でもユニークな事例を挙げていく。

トラッドスーツなどを製造・販売するニューヨーカーでは11月11日から、自社通販サイト「NYオンライン」の開設4周年を記念し、配送料や商品交換・返品時の送料、代引き手数料(通常は315円)、裾上げ(同420円)、ネーム入れ(同210円)を無料で提供する「商品代金以外はいただきません!」キャンペーンを開始している。

同施策は12月11日までの1カ月間で、期間中は何度でも購入商品の交換・返品が可能だ。

同社では、顧客への調査から、消費者は店頭で購入する時と同様、通販でも商品代金以外は払いたくないという気持ちが強いことが分かっており、「顧客の心理に沿ったネーミングとした」(酒井英・販売統括本部e推進部長)ことが奏功し、スタートから間もないものの、新規客、既存客ともに「かなり効いている」(同)という。

靴とファッションのネット販売を手がけるロコンドは、気軽に返品できる福袋を販売することで、通販サイト「ロコンド」の特徴でもある"送料無料・30日間返品無料"のサービスを体験してもらい、新規顧客の開拓や既存客の満足度向上につなげている。

同社がキャンペーンで販売するのは「返品できる福袋」(税込5000円)。本来は返品できないのが当たり前の福袋であっても、自宅でゆっくり試着してもらい、気に入らなければ返品を受け付けることで「ロコンド」利用のメリットを感じてもらうのが目的だ。

当該キャンペーンは昨年に続いて2度目で、前回は12月26日に販売開始したところ、1時間以内で用意した100袋が売り切れたという。

今回は、「正月=福袋」のイメージに合わせて1月1日午前零時に販売をスタート。福袋の販売数は婦人靴限定で30袋に絞るが、前回は3万円相当だった中身を約4万5000円~5万円にグレードアップし、そのうち数点は定価で7万円以上が入った目玉福袋として展開するという。

福袋の中身は、今すぐ履ける冬物や春夏用のサンダルなど、年間を通して使えるラインアップとした。購入はひとり1点のみ。返品は「ロコンド」の通常のショッピングと同様に、30日以内は返品送料も無料で受け付けるが、福袋に入った全商品の返品に限る。

アマゾンジャパンでもユニークなキャンペーンを10月28日から展開中。同社サイト内で販売するコミックやライトノベルの"第1巻"を対象に実質、1割引で販売するキャンペーン「コミック・ラノベ・BL第1巻ポイント10%還元キャンペーン」だ。対象となる約2万点のコミックやライトノベルのそれぞれの"第1巻"について、販売価格の10%分を同社ポイント「アマゾンポイント」で顧客に還元する。第1巻の購入を促し、その先の巻の購入につなげる狙い。キャンペーン期間は11月30日までとなっている。

訴求力はあるが、商品原価が高く、新規獲得の入口商材に向かない商品は少なくない。イワシ由来の「サーデンペプチド」を配合したトクホもその一つ。これまで、多くの通販企業が商品化したが"血圧対応"という明確な機能を持ちながら、新規獲得の入口商材として露出が少ないのもこうした背景があるとみられる。その中で、飲料メーカーのダイドードリンコではこのトクホを使った割引施策を展開。顧客満足を高める施策に活かそうとしている。

同社では09年に「燕龍茶(やんろんちゃ)フラボノイド」を配合した飲料「燕龍茶レベルケア」で、今年9月にはイワシ由来の「サーデンペプチド」を配合した「ペプチドパワーレベルケア」でトクホを取得している。いずれも「血圧」に対応するが異なるメカニズムを持ち、幅広い顧客ニーズに対応することをめざしている。ただ、これら商品を新規獲得にはあまり活かせていない。販売量が少ないこともあるが、商品原価が高く、投資回収期間が長くならざるを得ないためだ。

そうであれば既存客の満足度を高める施策に活かそうと来年1月から、ダイドーでは定期顧客向けの割引施策を実施する計画。ダイドーがラインアップする何らかの健食の定期コースに入会する顧客を対象に、2品目以降の商品をすべて半額で提供する。中でも、利用を促していくのが、2つのトクホ。女性が中心となるケースが多い健食通販にあって、ダイドーは「ノコギリヤシ」や「マカ」といった商品を展開し、男性を中心に顧客基盤を構築している。これら男性客の多くが抱えている共通の悩みが「血圧」であるためだ。

ダイドーは、高度経済成長の時代に「ダイドーブレンドコーヒー」を発売、コーヒーを愛飲していた顧客の多くが中高年層となっている。これら男性層を健康面で支えることを目的に、男性客を中心とする通販事業を展開しており、来年からのキャンペーンを機に事業拡大を進める狙いだ。

【ディノス・セシール】“6秒の家具のPR動画”を募集

【ディノス・セシール】“6秒の家具のPR動画”を募集

ディノス・セシールでは一般のネットユーザーから同社家具の「6秒間のプロモーション動画」を募り、優秀作品には賞品を贈呈するユニークな試みを11月上旬から実施している。動画作品はSNSを介して投稿するスタイル。これによりネット上で様々なユーザーが作成した様々な「PR動画」が投稿され、拡散されることになり、同社や同社商品の認知度向上や拡販につなげたい狙いだ。

同社が11月9日からスタートしたキャンペーンは「6秒間プロモーションムービーコンテスト」。同社では同日からディノス事業で展開する家具「ディノス家具」をPRするため、東名阪でテレビCMの放映を開始したが、それに連動した試み。一発撮りのほか、コマ撮りのストップモーションムービーも簡単に撮影でき、最大6秒間のループ動画(繰り返し連続再生される動画)を作成することができる人気の動画共有スマートフォンアプリ「Vine(ヴァイン)」を利用してもらい、一般のネットユーザーにテレビCMと同様、「ディノス家具」をテーマにオリジナルプロモーションムービーを募るもの。

作成したPR動画は、ハッシュタグ「♯dinos_kagu」を付け短文投稿サイト「ツイッター」に投稿してもらい、優秀作品の投稿者には同社でも人気商品となっているロボット掃除機「ルンバ」やロボット型収納箱「eteロビット」、トイレットペーパーケース「ペーパーポット」を贈呈するもの。なお、動画募集は来年2月15日まで。

「ヴァイン」は利用者が増加している人気アプリで、これを活用した企業のキャンペーンも出てきているが、通販企業がキャンペーンで活用するのは珍しい。

同社では人気動画作成アプリを活用したキャンペーンで、一般ユーザーにより作成された様々な「ディノス家具のプロモーション動画」が「ツイッター」で投稿され、拡散することでテレビをあまり視聴しない層も含め、ネット上でも「ディノス家具」をアピールしたい狙いがあるようだ。

【オークローンマーケティング】クイズ動画で興味喚起

【オークローンマーケティング】クイズ動画で興味喚起

オークローンマーケティングは新たに販売するエクサイズDVDのPRのため、人気子役を起用した一風変わったクイズキャンペーンを展開している。

同社はシリーズ累計150万枚を売り上げたダンス&ボーカルグループ「TRF」の曲に合わせ、ダンス要素を取り入れたエクササイズをレクチャーするDVD「TRFイージー・ドゥ・ダンササイズ」の後継商品として、エイベックス所属の4組のアーティストの楽曲を使用した新たなエクササイズDVDを12月中旬に発売する予定。

同商品の販促の一環で、どのアーティストの楽曲を使用するか明かさず、新作DVD参加のアーティストと楽曲の"ヒント"映像を公開、当該アーティストと楽曲を当てるキャンペーン「TRFEZDODANCERCIZEavexSpecialEdition発売キャンペーン」を11月15日からスタート。

特設サイトでは楽曲の音声をなくした状態で、オリジナル楽曲の振り付けを踏まえ、TRFのメンバーが振り付けした新作DVDのダンササイズをNHKの朝ドラにも出演する人気子役、豊嶋花さんが見よう見まねで踊っているかわいらしいヒント動画を流し、音がなくてもどの楽曲を使用しているのか分かる人には分かるようになっている。豊嶋さんのダンス映像は11月下旬までに4回に渡って順次、当該特設サイトで配信。クイズの正解者には抽選で商品券1万円分をプレゼントする。人気子役を起用したクイズで新商品に対する期待感やワクワク感を演出し、興味喚起を図る狙いだ。