ECサイト運営の将来性は?業界の課題や検討に必要な立ち上げ手順も解説
スマートフォンの普及やコロナ禍の影響で、ECサイトは盛り上がりを見せる中、ECサイトの立ち上げを検討している企業も多いのではないでしょうか。そこで、本記事では検討の際に押さえておきたいECサイト運営の将来性を解説していきます。
ECサイト運営事業の市場規模について
日本のECは、2000年代前後から楽天・Amazonが立ち上がり、それを皮切りに次々とEC事業へ参入する企業が増え、今では人々の生活になくてはならない存在となりました。
ECの市場規模は年々拡大しており、今後も伸びていくと予想されています。以下、経済産業省の取りまとめより引用した、市場規模の増減率です。
BtoC-ECの市場規模及び各分野の増減率
2021年 | 2022年 | 増減率 | |
---|---|---|---|
A. 物販系分野 | 13兆2,865億円 (EC化率 8.78%) |
13兆9,997億円 (EC化率 9.13%) |
5.37% |
B. サービス系分野 | 4兆6,424億円 | 6兆1,477億円 | 32.43% |
C. デジタル系分野 | 2兆7,661億円 | 2兆5,974億円 | ▲6.10% |
出典:電子商取引に関する市場調査の結果を取りまとめました|METI/経済産業省
オンラインゲームなどを含むデジタル系分野では一部伸びに停滞感がありますが、全体としては前年比9.91%増です。
また、近年は「メルカリ」などのフリマアプリが該当するCtoCのECチャネルも盛り上がりを見せています。
ECサイト運営に将来性はある?
これからECサイトを運営していくにあたって、「将来性」はあるといえるのでしょうか。3つの観点から解説します。
世界的な市場規模の拡大
前述の通り、日本のEC市場は拡大しています。それだけではなく、昨今はグローバルな市場の成長も顕著です。
例えば、ドイツのデータ収集プラットフォーム「Statista」によれば、グローバルなEC売上は2024年に4.1兆ドルに達し、2029年までには約6.4兆ドルに達すると予測されています。
出典:eCommerce - Worldwide | Statista Market Forecast
また、アジア、アフリカ、中南米などの新興市場でも、インターネット普及率が向上し、EC利用が増加しています。
世界的に成長しているということは、仮に国内市場が縮小しても、別の手立てがあることを示しています。昨今はShopifyなどを活用した「越境EC」でグローバルにECサイトを展開することも可能なので、市場規模の拡大は、将来性を考える上で好材料となるでしょう。
技術の進化
AIや機械学習の進展により、パーソナライズされたマーケティング、需要予測、在庫管理がより精密に行えるようになっています。これにより、ECサイトは顧客体験を向上させるだけでなく、運営効率も大幅に改善されています。
今後もAIや機械学習については開発競争が進むことが予想されるため、ECサイトにうまく活用することができれば、今まで以上に利益を生みやすくなる可能性があります。
消費者行動の変化
新型コロナウイルスによるパンデミックを契機に、消費者の多くがオンラインショッピングに慣れ、これが新たな標準として定着しました。消費者はより便利で多様な購買体験を求め、ECサイトはこのニーズに応えるために進化を続けています。
また、オフラインとオンラインの購買体験をシームレスに統合する「オムニチャネル戦略」の普及も1つの変化でしょう。実店舗との相乗効果を高め、より多くの顧客にリーチすることができれば、これまでは考えられなかった体験を生むことができるかもしれません。
「ECサイトはやめとけ」と言われる?業界の課題とは
日本におけるECサイト運営について、一部で「やめとけ」と言われることがあるようです。その原因について、以下に、EC業界の課題を交えて解説します。
価格競争に巻き込まれる
楽天やAmazonなどのECモールや、BASEやSTORESのような気軽にネットショップを作れるASPなどの後押しで、ECサイトの数はかなり増加しました。その結果として、多くのECサイトが価格競争に巻き込まれ、利益率の低下が避けられない状況になっています。
価格以外の付加価値をつけることで成功している事業者も多いので、いかにして価格競争を避けることができるかが鍵になります。
物流・在庫管理が複雑になってきている
ECサイトの運営では、商品の保管、梱包、配送といった物流業務が不可欠です。日本では物流コストが高く、さらに2024年問題など、労働力不足や配送業者の値上げが物流コストに影響しています。
また、効率的な在庫管理はEC運営の成否に直結しますが、うまくできなければ、過剰在庫や品切れといった問題が生じます。特に多品種少量販売を行う場合、在庫管理の難易度は一層高くなります。
技術と運営の専門知識の必要性
ECサイト運営において、サイトのパフォーマンス改善、セキュリティ対策、データ分析など、多岐にわたる技術的な課題に対応するためには、高度な専門知識とスキルが求められます。
また、集客でも専門性が求められます。効果的なマーケティングを行うためには、SEO対策、SNS運用、広告運用、コンテンツマーケティングなど、多岐にわたる知識と経験が必要です。
結論として、「やめとけ」と言うのは言い過ぎかもしれませんが、簡単に成功するものではないと言えます。自社に不足している部分があれば、ECコンサルなどをうまく活用して対処することで、成功確率を高めることができるでしょう。
ECサイト運営を始めるときの7つのステップ
実際にECサイトを立ち上げる際の流れを紹介します。
ステップ1:販売する商品の選定
まずは、どのような商品をECで販売するのか決め、トレンドの商品を調査や、売れやすい商品を見極めて仕入れの検討を行います。既存商品の販売だけでなく、新たにオリジナル商品を開発してECで販売することも可能ですが、はじめのうちは自社負担が軽い商品から販売するのがおすすめです。
ステップ2:EC事業計画の立案
ECで販売する商品が決まり、トレンドや競合調査を行った後はECの具体的な事業計画を立てていきます。ECの事業計画とは、「EC事業を成功させるためのKPI」と考えるとよいでしょう。KPIは、目標を達成するまでの中間目標のことを指します。
まずは、今後の売上高や購買件数などの「売上に関する要素」や、商品原価や配送費などのコストに関する要素、その他、広告費や固定費などをカテゴリごとに整理し、EC事業を運営するために必要な費用を数値として算出していきます。
数値として算出することで目標が具体的になるため、根拠に基づいて事業を進めることができ、目標達成までの課題を明確にすることが可能です。
ステップ3:ブランディング方法を決める
ユーザーをどのように惹きつけ、認知させていくかを決めていきます。そのためには、自社ブランドのコンセプトを明確にし、競合他社との差別化を図ることが重要です。まずは、社内で自社ブランドの方向性や認識を統一し、ブランディングを確立していきましょう。
ステップ4:ECサイトの構築
ECサイトで販売する商品や方向性が決まったら、ECサイトのプラットフォームを選びましょう。ECサイトを立ち上げる方法は、「モール型」と「自社EC型」の大きく2種類に分けられます。
モール型なら楽天市場やAmazon等どのモールを使用するのか、自社EC型であればASP型やオープンソース型等どの構築方法にするのかなど、具体的な内容を決めていきます。そのほかにも、サーバー契約やECサイトのデザインなど予算に応じて使いやすいECサイトを構築していきましょう。
ステップ5:ECサイトのオープン準備
いよいよECサイトをオープンするまでの具体的な準備に取り掛かります。決済会社の選定や契約、商品登録や配送会社の手配など作業はさまざまです。
また、ECサイトオープン前には必ず「テスト注文」を行いましょう。テスト注文は、ユーザーが問題なく商品を購入できるかチェックする作業で、ユーザーと同じ導線で購入までのプロセスを踏みます。そこでは、正常に受注できるかはもちろんのこと、スタッフの連携がスムーズに行えているかも確認することで、サイトオープン直後のトラブルを軽減することができます。
ステップ6:マーケティング
ECサイトがオープンした後は、ユーザーの認知度を高めるためのマーケティングを行います。今はリスティング広告や、InstagramやTwitterなどのSNSでの発信、SEO対策が主流です。まずは低コストな集客方法からはじめ、今後は自社のステージに合わせて集客方法を見直しながら進めていくと良いでしょう。
ECサイト運営を成功に導くための3つのポイント
ECサイト運営は、将来性などマクロの視点も大切ですが、目先の成功確率を高めるための努力も重要です。ここでは、成功のためのポイントを紹介します。
具体的なEC事業計画書を作成する
マーケティングを含め、より具体的なEC事業計画を立てることが重要です。事業を立ち上げた当初は、ついECサイトのデザインなど外観に注力しがちです。
しかし、ユーザーの目に触れるサイトの外観も重要ですが、社内の売上目標や予算など内部の綿密な計画が成功を左右します。先を見据えたEC事業計画書を作成することで、スピード感をもって成長することができるでしょう。
同じ価値観を持つチームで運営する
事業の運営には、ECサイトの構築から商品発送まで、さまざまな部署や企業との連携が必要不可欠です。また、規模が拡大すればするほど関わる人も多くなります。
そのため、自社であれ外注先であれ、価値観の共有が重要になってきます。ブランドの在り方や顧客との向き合い方などを適切に共有し、チームで事業を進めていくことで、成果を最大化しやすくなるでしょう。
外注を利用する
人員不足でECサイトを運営できなくなる前に、外部に任せられる業務を精査し、あらかじめ委託することで人件費などのコスト的な負担を軽減できます。
例えば、ECサイトの構築や運用は専門性が高いため、自社で構築運用するにはスキルを持った人員の確保が必須となります。そこで、サポート体制が整った外注先に委託することで、社内の負担軽減や人件費の削減が期待できるでしょう。
そのほか、在庫管理や配送業務などの物流業務は、発送までのプロセスが多岐にわたるため、外注することでスムーズに受発注を行うことができます。EC事業において商品の管理や配送は売り上げに直結する重要な業務なため、コストと品質のバランスを考慮し、先を見据えて外部へ委託する選択肢を持っておくことがポイントです。
ECサイトを制作する際はマッチングサービスがおすすめ!
ECは、今後もさらに市場規模を拡大し、成長していく業界です。今後も増え続ける多くのEC事業者と差別化を図るため、ここで紹介したポイントを踏まえて、売れるEC事業計画を設計していきましょう。
ECのミカタでは、ECサイト制作をはじめ、ECサイト運営に関する外注先を、無料でご紹介しております。専門のコンシェルジュがヒアリングをさせていただいた上で、ご希望の条件に合う企業をご紹介できます。
お困りのことや、ECサイトを運営していく上で効率化したいことなどがございましたら、お気軽にお問い合わせくださいね。