楽天グループ 2023 夏トレンド予測 「物価高対抗消費」で「まとめ買い」「冷感」「節電」注目 旅行・レジャー費は支出増へ

湯浅 英夫

楽天グループ株式会社(以下、楽天)は2023年6月27日、楽天の各サービスにおける購買データや調査結果から今夏のトレンドを予測した「楽天グループ 2023 夏トレンド予測」を発表した。生活用品、食品、衣料品、書籍、旅行、音楽、通信など幅広いジャンルから予測したもので、「物販編」「旅行・レジャー編」「エンタメ編」「モバイル編」に分けられる。ECと特に関係が深く、注目なのは「物販編」「旅行・レジャー編」だ。

今年の夏の過ごし方は「国内旅行」がトップ

今夏の過ごし方は、楽天ユーザー1万人に対する調査結果によると「国内旅行」が約21%でトップとなった。そのほか「帰省」(12.7%)や「アウトドア(キャンプ、バーベキューなど)」(6.3%)も多く、国内での観光や移動を予定している人が多い。その一方で「動画配信サービスを観る」(7.8%)や「読書」(6.7%)も多く、家中需要もまだ根強いことがうかがえる。

夏の過ごし方にかける予算は、25.1%が「増やす」、68.1%が「特に変更なし」としている。物価高で節約志向が高まるなかでも夏の過ごし方にはお金をかけようという人が多いようだ。では何にお金をかけるのかというと「ファッション」が18.5%でトップで、「宿泊先(ホテル・宿など)」(14.5%)や「アウトドアグッズ(キャンプ、バーベキューなど)」(8.3%)も高い。「物販編」で後述するが、外出や旅行に関連するアイテムが人気を呼びそうだ。

コロナ明けで「外出・旅行」「イベント」「推し活」需要が急拡大

物販編のトレンドは「Return to Normal消費」と「物価高対抗消費」だ。Return to Normal消費とは、2023年5月の新型コロナウイルス感染症の5類感染症移行により、法律に基づいた外出自粛要請などがなくなった、いわゆる“コロナ明け”を受けての消費傾向だ。

まず、コロナ明けから初の夏休みを迎えるにあたり、外出や旅行に関連した商品の需要が回復してきた。

楽天における流通額を前年(2022年)の同時期と比較すると、外出関連アイテムでは、例えば折り畳み傘の流通額が約1.7倍に、レディース向けの帽子が約1.3倍に伸びている。旅行関連アイテムでは、スーツケースが約2.2倍に、飛行機内などで首に巻いて使うネックピローが約1.6倍に伸びている。

また、新型コロナ禍で制限されていた各地の花火大会や海水浴、フェス、お祭りといった夏ならではのイベントが復活してきた。それに向けた水着、浴衣、推し活関連商品などの需要が拡大している。

楽天における流通額を前年同時期と比較すると、浴衣は約1.8倍、水着は約1.4倍に伸びている。推し活関連も好調だ。コンサート会場などで使う双眼鏡は約1.2倍に伸び、クリア素材のポケットが付いていて、そこに缶バッジなどの推し活グッズを入れて見せられる「痛バッグ」は約6.7倍と大きく伸びている。コロナ明けの需要拡大と、推し活ブームの拡大が合わさってのことと言えそうだ。

物価高で「まとめ買い」「冷感」「節電」が注目キーワードに

もうひとつのトレンドは「物価高対抗消費」だ。食品や電気代といった昨今の物価高を受けて、特に食品や日用品の「まとめ買い」需要が拡大している。楽天で「まとめ買い」をキーワードに含む商品の流通額を前年の同時期と比較すると、約1.5倍に伸びている。まとめ買いによって少しでも節約したいという、消費者心理が現れていると言えそうだ。

「冷感」をキーワードに含む商品の流通額も、前年同時期の約1.4倍に伸びている。アイテムとしては、ベッドに敷く冷感敷きパッド、水や汗を吸収して気化熱で冷感が持続するクールダウンタオル、リモートワークをする部屋やキッチンといった特定のスペースを冷やせるポータブルクーラー、溶けずに高い保冷効果を保つソープストーンアイスボール、気分を涼しくしてくれる南部鉄器風鈴などが挙げられる。電気代の高騰を受けて、電気をあまり使わずに涼しく過ごすためのアイテムが人気を集めており、「節電」も注目のキーワードと言えるだろう。

旅行は「分散型旅行」と「リトリート旅行」がキーワードに

トラベル編のキーワードは「分散型旅行」と「リトリート旅」だ。分散型旅行とは、混雑を避けるために時間や場所を分散する旅行のこと。新型コロナ禍を受けて、人が集中することによる感染リスクの低減や、人気観光地を避けることで新たな観光地の魅力発見などにつながるとして、推進されてきたものだ。

楽天トラベルが宿泊予約を2023年7~8月と2019年7~8月とで比較したところ、連休期間の宿泊予約は2019年の1.2倍に伸びているが、連休以外の宿泊予約は1.31倍と、さらに大きく伸びているという。混雑しそうな連休を避けて旅行しようという人が増えていることになる。

時間だけでなく、場所も分散傾向にある。全国13エリア別に7~8月の宿泊予約伸長率を比べると、全体の伸長率を上回るエリアが2019年は半数以下だったのに対して、2023年は7割あるという。これは、2019年は宿泊予約が特定のエリアに集中する傾向が強かったが、2023年はそれが和らいで全体的に分散しつつあることを示している。混雑する人気観光地を避けて旅行しようという人が増えていることになる。

もうひとつの「リトリート旅」は、普段の生活とは異なる環境でリラックスできる旅のこと。例えば2023年7~8月の国内航空券付きツアーの予約が2019年の約1.2倍に、2023年7月の高速バスの予約が2019年の約1.3倍に伸びているなど、より遠方に旅行する人が増えている。また、2023年7~8月の離島への旅行(宿泊予約)は2019年の約1.6倍、高級宿の宿泊予約も約1.6倍になっている。以前の日常が戻りつつある中で、遠方や自然の多い離島で過ごしたり、高級宿やヴィラに宿泊したりと、リラックスできる非日常を求める人が増えているといえそうだ。


記者プロフィール

湯浅 英夫

フリーライター。新潟県上越市生まれ。1992年、慶應義塾大学理工学部機械工学科卒。PC、スマートフォン、ネットサービス、デジタルオーディオ機器などIT関連を中心に執筆。主な著書に「挑戦すれば必ずできる 自作パソコン完全組み立てガイド」(技術評論社)、「大きな字だからスグ分かる!エクセル2013入門 Windows 8対応」(マイナビ)、「Excel2000 300の技」(技術評論社)がある。

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