「ポリシー濫用」の実態調査を実施 ホリデーシーズンを中心に不正利用が増加、半数以上が「返金・返品請求」を手作業で行うことが明らかに
Riskified Japan株式会社(以下:Riskified)は、セールシーズン前にEC事業者にとって重要な課題となりうる「ポリシー濫用」について、実態調査を行い結果を公表した。本記事では一部内容を抜粋して紹介する。
調査概要
現在日本では、クレジットカードの不正対策をするEC事業者は増加傾向にあるが、今後「ポリシー濫用」が新たな課題となると考えられる。そこでRiskifiedは、世界中のEC事業者に対して、ポリシー濫用の実態と意識調査を実施。調査概要は以下の通りとなる。
◆調査時点:2023年
◆調査対象:世界中の年間総売上5億ドル以上の企業。業界はファストファッション、スポーツ用品、フードデリバリー、家電、旅行ブランドなど。
◆有効回答数:300社
◆調査方法:電話インタビューとインターネットでのアンケート調査
◆調査:Riskified調べ
1000億ドル(約15兆円)の損失になっている可能性
被害規模について、Riskifiedのデータによると、ポリシー濫用はチャージバックコストよりも大きな損害を加盟店に与えており、ECエコシステム全体で1000億ドル(約15兆円)以上の損失になっている可能性が考えられるという。
主なポリシー被害と割合は以下の通りとなる。
◆INR不正(※INR=Item Not Received)
商品を受け取らなかったと虚偽の主張をして、不正に商品に対する返金や交換を得ること
◆返品不正
実質無料で商品をためすために正当な理由なく返品したり、使用済みや損傷した商品を新品のように返品すること
◆プロモーション・ロイヤリティ不正
セールのプロモーションオファーやロイヤリティプログラムを悪用すること
◆転売不正
転売目的で価格の高い限定商品を大量に購入すること
ホリデーシーズンを中心に被害が増加
年間のショッピングシーズンを比較したところ、70%が夏のショッピングシーズンと回答。ブラックフライデーとサイバーマンデーを含む、秋冬のホリデーシーズンについては約56%の回答が集まった。
また、バレンタインデーや母の日のようなシーズンについても、回答者の半数近く(49%)が増加する傾向にあると回答。
世界中のEC事業者の回答であるため、セールシーズンは日本と異なる点も含まれるが、ホリデーシーズンにはポリシー濫用の危険性が高まると考えて良いだろう。
半数以上が返金・返品請求の大半を手作業で行う
事業者側の対策としては、62%が自動化システム(機械学習など)を導入していないと回答。一方で、この中の94%が今後2年以内の導入に関心を持っていることが判明した。
また、ポリシー濫用に対する現状の対策としては、回答者の65%が返金・返品請求の大半を手作業による審査に頼っていると回答。そのうち、返金・返品請求のすべてを手作業による審査に頼っているという回答も7%含まれた。
セールシーズンなどで返品が大量に発生した際に、返品リクエストの確認と解決を迅速に行う自動化プロセスが整備されていない場合、企業はリソースを浪費することになるだろう。
ポリシー濫用がもたらす被害を正しく認識し、被害拡大を防ぐ
本調査の結果に対して、アカウント・エグゼクティブのナボン恵子氏は以下のようにコメントしている。
「日本国内ではポリシー濫用を緊急な課題として取り組んでいる事業者は稀です。サービスを重要視する日本は、ポリシー濫用がもたらす『被害』に正しい認識がない可能性もあります。またこのような課題に最先端技術とAIを駆使して施策を提案しているソリューションベンダーも国内ではこれまで存在しなかったのではないかと思います」。
ポリシー濫用には返金・返品ポリシーの乱用、クーポンの不正利用、ギフトカードの詐欺など様々な行為が含まれている。被害は欧米を中心に増加しつつあり、この傾向は日本国内においても例外ではないだろう。特に「転売不正」を目的とした大量購入は価格を大きく吊り上げ、適切な消費者の手に渡らないといった社会問題として注目を集める。
今後、事業者にはポリシー濫用対策を目的としたシステム構築が求められるだろう。安心感を伴った健全な運用を実現させるために、部署間での連携を高め、ポリシー濫用についてよく理解し、被害拡大を防ぐ必要があるはずだ。