中国系EC「Temu」が個人情報盗難やオンライン詐欺対策でAPWGに加盟 世界のIT大手と対策へ

三浦真弓【MIKATA編集部】

2022年に登場し1年半で約50カ国にまで拡大した米国を拠点にする中国系EC「Temu(テム)」が、個人情報の盗難やオンライン詐欺対策に取り組む世界的な連合体である「アンチ・フィッシング・ワーキング・グループ(Anti-Phishing Working Group 、以下APWG)」への加盟を発表した。今後はMicrosoftやMetaのようなIT業界の大手企業とともに、フィッシングやサイバー犯罪に対して対策していくという。

現在約50カ国で展開する「Temu」がフィッシング問題に関する国際組織に加盟

ファストファッションを主に取り扱うEC「SHEIN(シーイン)」とともに、米国で躍進する中国系ECとして注目の「Temu(テム)」。SHEINは現在、本社をシンガポールに移し、女性向けアパレルを中心に全世界150以上の国と地域に向けて販売するグローバルECとなっている。一方のTemuは、中国EC大手の拼多多(ピンドゥオドゥオ)を運営するPDDホールディングス傘下のEC事業者で、2022年9月に米国で設立。「消費者が最高の生活を送れるようにすることを使命」とし、世界中の何百万もの販売者、製造者、ブランドと消費者をつなぐオンラインマーケットプレイスとして急拡大。日本には2023年6月に上陸。現在約50カ国で展開する越境ECだ。

そのTemuが、フィッシング問題に関する国際組織APWGへの加盟を発表した。2003年に米国で設立されたAPWGは、フィッシング、クライムウェア、なりすましメールなどの増加する問題に起因する個人情報の盗難や詐欺の撲滅に焦点を当てた非営利の業界団体。金融機関、オンライン小売業者、ISP、ソリューション・プロバイダー、法執行機関、政府機関、多国間条約機関、NGOが加盟し、世界で2200以上の企業が参加している。

TemuはAPWGへの加盟を機に、今後はMicrooftやMetaのようなIT業界の大手企業とともに、フィッシングやサイバー犯罪に対して対策していくという。

サイバー犯罪防止に関し世界から遅れを取らない姿勢でさらに拡大へ

背景には、世界的なフィッシング詐欺の増加がある。APWGによれば、2023年に全世界で約500万件という過去最高値のフィッシング詐欺による攻撃があったといい、日本でも2023年11月末時点での被害件数は5147件、被害額は約80.1億円となり、警察庁・金融庁が改めて注意喚起を行っているほどだ(※)。

Temuは今後、顧客データの保護や、なりすまし行為の阻止におけるノウハウをAPWGに提供。また、世界的なオンライン脅威の最新動向、フィッシングURLや電子メールの詳細、悪意のあるIPやドメインに関する情報などを共有することで、顧客保護能力も高めていく考えだという。

Temuの広報担当者は、「安全なショッピング体験は、当社の顧客にとっても、最も重要なことであり、特に当社が世界的により多くの市場に進出するにつれて、その重要性が増しています。APWGへの参加は、ユーザーを詐欺から守り、サイバー犯罪防止における最新情報にキャッチアップし、遅れを取らないという当社の姿勢も表しています」とコメント。

急拡大してきただけに、日本でも「Temuでの買い物は安全なのか」などの懸念を持つ消費者が見かけられる。しかし安全性の確保に向けた今回のような取り組みにより、世界的な信頼を得て、さらに拡大していくことも考えられるだろう。

※出典元:警察庁「フィッシングによるものとみられるインターネットバンキングに係る 不正送金被害の急増について(注意喚起)」