約3万SKUもスムーズに入出荷可能! accaがSkypodシステムを駆使し未来型物流システム完成、PAL CLOSETは4年で500億円へ

桑原 恵美子

左から、株式会社アッカ・インターナショナル 代表取締役社長 秀洋一氏、大和ハウス工業株式会社 東京本店 建築事業部 事業部長 村上泰規氏、株式会社パル 取締役 専務執行役員 プロモーション推進部部長 コミュニケーションデザイン室室長 WEB事業推進室室長 堀田覚氏、Exotec Nihon株式会社 アジアパシフィック地域 取締役社長 立脇竜氏

若い世代をターゲットとしたアパレルや日用雑貨等、50を超えるブランドの企画、製造、卸売りを手掛け、全国で1000店近くにも及ぶ実店舗を展開している株式会社パル(本社:大阪市中央区、代表取締役社長:小路順一、以下パル)が、株式会社アッカ・インターナショナル(本社:東京都港区、代表取締役社長:秀洋一、以下アッカ・インターナショナル)と協業し、2024年4月3日に「PAL CLOSET Robotics Solution Center(以下PRSC)」の稼働を開始したことを発表。直営オンラインショッピングサイトPAL CLOSET(パルクローゼット)のフルフィルメント効率化および顧客体験の向上のための施設となるこのPRSCを取材した。

パル×アッカ・インターナショナル×Exotecの3社協業による新倉庫

PRSCがオープンしたのは、約5万4000㎡の広大な敷地面積に建つ、大和ハウス工業株式会社の物流施設「DPL平塚」内。物流の大動脈である東名厚木インター近くにあり、約2時間で、1都3県(茨城県、群馬県南部、山梨県)への広域配送が可能と、立地条件に恵まれている。PRSCの面積も約2300㎡と広大で、天井高も5メートルあり、その高さに合わせたラック(保管棚)を設置。パルとしては従来比3倍の高密度保管を達成した。

PRSC内では約2万6千個の保管コンテナに商材を保管

PRSCオープンに向けてパルは、最新テクノロジーを駆使したアパレルECサイトの運営支援プラットフォームを提供するECフルフィルメント企業のアッカ・インターナショナルと協業。アッカ・インターナショナルは倉庫管理システム「ONE」、およびECデータ管理システム「ALIS」を提供し、在庫管理の最適化を実現している。

さらに今回、Exotec SAS(本社:フランス、クロワ市、CEO:ロマン・ムラン)の100%子会社であるExotec Nihon株式会社(本社:東京都港区、アジアパシフィック地域 取締役社長:立脇竜、以下Exotec)の自動ピッキングソリューション「Skypodシステム」を導入。3次元立体走行自動搬送ロボット「Skypod」約50台を24時間稼働させることで、従来比3倍の注文処理を可能にしたという。

3次元立体走行自動搬送ロボット「Skypod」約50台が稼働

急激な成長に伴う倉庫の課題を、ロボ導入で解決

パルが直営オンラインショッピングサイトPAL CLOSET(パルクローゼット)をスタートさせたのは、2016年。初年度の売上は約10億円だったが、持続的な成長戦略に基づく事業拡大に伴い、2023年度には約200億円に伸長。2028年には500億円の売上目標を立てている。

「現在も将来も当社の企業価値向上にEC事業の成長が大きなドライバー。2024年問題もあり人件費も高騰している中、EC事業を安定的に支える基盤である物流システムを最適化することは、喫緊の課題だった」(株式会社パル 取締役 専務執行役員 堀田覚氏)

そこで従来の物流拠点を1カ所に集約するプロジェクトを1年半ほど前からスタートさせた。

「2028年までに、売上500億円を達成したい」と語る株式会社パル 取締役 専務執行役員 プロモーション推進部部長 コミュニケーションデザイン室室長 WEB事業推進室室長 堀田覚氏

ワンフロアに大きめの倉庫が丸ごと入るほどの、他に類を見ないスケールのPRSCでは、従業員の作業負荷軽減と効率化が重要な課題となる。そこでPAL CLOSET の立ち上げから物流システムをサポートしてきたアッカ・インターナショナルは、パルと協業し独自の物流システムを開発した。

アッカ・インターナショナルは、2017年に日本で初めてAI物流ロボットの稼働を開始しており、ロボットを使った物流のDXを得意とする。そのアッカ・インターナショナルが今回“広さ”という課題を解決するために導入したのが、3次元立体走行自動搬送ロボット「Skypod」だ。

「急成長を続けている中、従来の多層型の倉庫と保管方法、作業では、物流が成長のボトルネックになってしまう。約3万SKUという多彩な商品を日々、最大限に入出荷しなければならないという課題に対して、移動速度が非常に速く、ピッキングの精度も高いSkypodに、私たちが自社開発してきた物流システムを組み合わせることで、未来型のクローゼットポスティングソリューションセンターを完成させることができた」(アッカ・インターナショナル 代表取締役社長 秀洋一氏)

「PRSCは、物流をボトルネックではなく戦略にする施設となる」と語る、株式会社アッカ・インターナショナル 代表取締役社長 秀洋一氏

「標準化されたシステムであるSkypodを、パル様のビジネス環境に合わせてミドルウェアでカスタマイズして最適化することで、スピーディに開発できた」と語るExotec Nihon株式会社 アジアパシフィック地域 取締役社長 立脇竜氏

小型化することで省エネにも貢献

ここからは実際の倉庫の様子をお伝えしよう。

Skypodロボットは毎秒4mで走行し、5mの高さのラックもなめらかに昇降して商材を取り出し、倉庫内作業者がいるステーションまで搬送。システムに注文が入ってから2分以内にピッキングできるという。出荷用ステーションではピッキングされてきた商材の画像や情報が表示され、従業員が目視で確認しながら出荷作業を行う。1時間あたり、約400件の注文処理を行うことができる。

またSkypodロボットは、1つのシステムでECの個配送と店舗向け配送の同時処理を実現できることも、大きな特長。パルでは2024年4月4日から4月16日まで、「パルクロウィーク」を開催。キャンペーン期間中、通常の業務時間帯日勤は50台全てを出荷用に使い、夜勤の時間帯では全てが入庫作業を行った。このように入出庫の量の増減に合わせてフレキシブルに使え、自由度が高いことも大きなメリットだという。

通常は、出荷頻度の高い商材を手前に配置しているが、それだとそのエリアが渋滞しがちなため、あえて出荷頻度に関係なくランダムに配置することで渋滞を防いでいる

1回につき5分の充電で1時間の走行が可能。他社の走行型ロボットは100kgから120kgのため多くの電力を消費するが、Skypodのロボットは小型で軽量のため、少ない電力で稼働できて省エネ。本体は再生プラスチックを使用している。このあたりの環境意識の高さは、フランスで開発製造しているマシンならではの特徴といえそうだ。ただ使用する専用ラックは強度を重視して、日本国内のサプライヤーに製造を依頼している。

ロボットを活用し、アッカ・インターナショナルがパルとの協業で築き上げた物流システムが、今後、どのような発展を見せていくのか、このセンターで確認できるのではないだろうか。


記者プロフィール

桑原 恵美子

フリーライター。秋田県生まれ。編集プロダクションで通販化粧品会社のPR誌編集に10年間携わった後、フリーに。「日経トレンディネット」で2009年から2019年の間に約700本の記事を執筆。「日経クロストレンド」「DIME」他多数執筆。

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