物流倉庫選び、コストより先に考えるべきこと 自社システムや倉庫を持つArtsに聞く物流倉庫選びで重要なポイント
2024年3月29日、MIKATA株式会社(以下、当社)は、株式会社アーツ(本社:東京都中央区、代表取締役社長:齋藤恵里依) 取締役会長 上田直之氏と、同社物流支援事業部 下賀涼平氏をお招きし、物流倉庫に関する勉強会を行った。この勉強会を機に、現在の越境ECの現状や課題・物流倉庫について、ECのミカタに寄せられる事業者の皆さんの直近のお悩みを含め、最近の動向をお届けする。
物流サポートを軸に販売支援を行う「Arts」
ECのミカタでは2024年3月29日、物流サポートを軸に販売支援を行う株式会社アーツ(以下、同社)の取締役 会長 上田直之氏と、同社物流支援事業部 下賀涼平氏をお招きし、物流倉庫と越境ECに関する勉強会を行った。
同社は、自社開発のWMS(在庫管理システム)、国内27の倉庫拠点、国内外の販売支援に強みを持つ。また、グループ会社では、中国・ベトナム・シンガポールに現地法人を設立し進出支援をオンライン・オフラインで行っている。そのため、それぞれの地域に関する国民性や商品ニーズなどに関する相談も可能だ。
コスト重視で選ぶ企業多数、それ故の課題も
EC運営全体の悩みといえば「費用を削減したい」「自社ECの売上を上げたい」「自社に合うサービスが見つからない」など多岐にわたる。同社で物流支援を行う下賀氏は、物流倉庫の選定について費用削減を優先し、失敗している事業者が多いという。
「物流倉庫を選ぶ際は、物流倉庫の様子を初めに現地で見る必要があると私は思っています。それは、現場に行かないと分からない保管状況や担当者の人間性が垣間見えるからです。ただ実際はホームページに記載されている費用を見て、安いところを選ぶといった、費用メインで選ばれる企業が多い印象です」(下賀氏)
EC事業者にとって、コストが重要なのは言うまでもない。ただ費用削減を重視した倉庫選びは、ダンボールが斜めになっていたなど保管状態の悪さやリアルタイムで担当者と連絡がとれないなどの問題が見えないまま選ぶ危険性をはらんでいるという。そのため、物流倉庫を乗り換える企業も一定数いるようだ。
ちなみにECのミカタで寄せられる「物流倉庫に関する相談」で、費用に関連する主な相談は下記の通り。
■倉庫自体の保管費用の値上げで乗り換えを検討したい
■費用をおさえて保管範囲を広げたい
■海外配送したいが、自社倉庫で行うと費用面がかさむため乗り換えたい
昨今の価格高騰によるものや国内外を問わない事業拡大による物流拠点増加のタイミングも物流倉庫を検討するきっかけの一つになりそうだ。
まずは物流会社・倉庫とのコミュニケーションを
コストを重視する前にまずは、実際に現場を見ることが大事だということは分かった。しかし倉庫を見る際に何を見ていけばいいのだろうか。下賀氏は、どの商材にも共通するポイントの一つとして倉庫担当者とのコミュニケーションが取りやすいかどうかをあげた。
「当日出荷の際に、担当者から連絡がなかなかこないことや状況が全く分からないなどで相談いただくことは多いです。状況一つとっても、誰が梱包しているのか、システムを管理しているのは誰かなど工程ごとでも、コミュニケーションが取れていないパターンもあります。だからこそ、実際に倉庫を見て担当者だけでなく、倉庫内の人間関係や連絡ツールなど風通しの良さなども見ていただきたいです」(下賀氏)
商材によるもので言うと、賞味期限管理や温度管理、ギフト対応が可能かどうかもチェック項目の一つとしておさえてほしいとした。また上田氏は物流倉庫を選ぶにあたって、依頼する事業者側が条件をより明確にした方がいいと助言する。
「配送業者や平均客単価、商材がBtoB向けかBtoC向けなのか、交渉がどのくらいできるかなど、詳細を詰めてからご相談いただくのがよりいいです。事業拡大や価格高騰の場合など、将来を見据えて失敗の少ない倉庫選びができると思うので。ただ物流倉庫を選ぶ明確な判断基準がないゆえに、事業者から提示される条件がざっくりしてしまうことはよくあると思っています」(上田氏)
最低限の要件はおさえつつ、自社に合う要件定義を
本勉強会では、物流倉庫を選ぶ上で費用を重視するばかりに倉庫の保管状況の悪さやコミュニケーションのすれ違いなどが起きている現状が明らかとなった。この現状を改善するためにも、物流倉庫を委託したい事業者は、最低限の条件を明確にした上で倉庫へ実際に行くことが重要なポイントとなりそうだ。