誇大広告に注意! オルリンクス製薬に行政処分

奥山晶子

2024年4月9日、消費者庁は特定商取引法に違反したオルリンクス製薬(本社:名古屋市中区)に対し、3カ月の一部業務停止命令を出した。誇大広告などの違反内容や行政処分の概要を解説するため、広告表現で気をつけるべき点を知りたい事業者は参考にしてほしい。

オルリンクス製薬、業務停止命令の経緯

株式会社オルリンクス製薬は、サプリメントや健康食品、化粧品などを扱う通信販売事業者。2023年11月から、少なくとも2023年12月19日までに表示した広告や定期購入契約に関する手続きが表示される映像面において、表示義務違反行為を行ったとして、4月9日に業務の一部停止命令と再発防止策を講ずることなどの指示が出された。

■行政処分の内容
オルリンクス製薬は、このたびの行政処分により、2014年4月10日から7月9日までの3カ月間、通販に関する商品の販売条件について広告すること、売買契約の申し込みを受けること、売買契約を締結することができない。

また、問題の発生原因について調査分析のうえ検証し、法令遵守体制の整備その他の再発防止策を講じ、スタッフへの周知徹底をすることが求められた。さらに本サプリの購入者へこのたびの処分について詳細を通知するよう命令が下されている。

■親会社の「売れるネット広告社」にも影響
オルリンクス製薬は、通販コンサルティングを手がける「売れるネット広告社」(本社:東京都港区)の子会社。このたびの一部業務停止命令を受け、親会社である売れるネット広告社にも影響が及んでいる。

売れるネット広告社はオルリンクス製薬に対する行政処分に関して「お客さまをはじめとしたステークホルダーの皆様に、多大なるご心配とご迷惑をお掛けしておりますことを、心よりお詫び申し上げます」とした上で、行政処分の内容はオルリンクス製薬が子会社化する前の販売手法であることを示し、「グループ一丸となって再発防止に向けて取り組んで参ります」とした(※1)。

※1 出典元:当社子会社(株式会社オルリンクス製薬)に対する消費者庁からの行政処分に関するお知らせ(株式会社売れるネット広告社)

特定商取引法の主な内容

そもそも特定商取引法とは、事業者による悪質な勧誘行為などを防止して消費者の利益を守ることを目的とした法律だ。訪問販売、通信販売など消費者トラブルを生じやすい取引を対象として、事業者が守るべきルールなどを定めている。

そのなかでも今回のケースで問題になったのが、同法12条「誇大広告等の禁止」だ。表示事項などについて、著しく事実に相反する表示や、実際のものよりも著しく優良であり、あるいは有利であると人を誤認させるような表示を禁止している。オルリンクス製薬の広告は、誇大であると指摘された。

なお、同法12条の6には「特定申込みを受ける際の表示」についての取り決めもある。ここでいう「特定申込み」とは、事業者が作成した所定の様式の書面に沿って通販申込みを行う場合や、ネット通販の契約を行う場合だ。

特定申込みを受ける際には、消費者が必要な情報を一覧で確認できるようにすることが求められている。必要な情報とは、分量や価格、代金の支払方法、商品の引き渡し時期のほか、契約の申込みの撤回または解除に関する事項も含まれている。この取り決め、とくに契約の申し込みの解除に関する事項について、このたび違反が認められた。

参考元:特定商取引法ガイド 特定商取引法とは(消費者庁)

問題視された広告の内容

このたび問題となったのは「ZiGMα」と称するサプリ(以下「本サプリ」)の定期購入契約に関する広告内容だ。以下、2つの表現が問題視された。
■簡単な解約が可能であるかのように見せかけた広告

※出典元:特定商取引法違反の通信販売業者に対する業務停止命令(3か月)及び指示並びに当該業者の元代表取締役に対する業務禁止命令(3か月)について(消費者庁)

上記広告のように本サプリの販売条件について広告したとき、定期購入契約に対して「24時間365日自動音声で解約可能」、「限られた時間内でしか解約の出来ない不便さは一切ありません 面倒な手続き・解約阻止の説得などもゼロ」などと表示した。

しかし実際には、消費者が本サプリを受け取った後、次回の発送日の7日または14日前までに解約・休止専用窓口に電話をかけ、自動音声による案内が終わった後に届くSMS内のURLからメッセージアプリの専用アカウントに登録し、さらにアプリ上の操作が複数必要になるなど複雑な手順を経る必要があった。

この広告表現が、特定商取引法第12条における誇大広告とみなされた。

■購入契約の手続きが表示される映像面も問題に
※画像2

出典元:特定商取引法違反の通信販売業者に対する業務停止命令(3か月)及び指示並びに当該業者の元代表取締役に対する業務禁止命令(3か月)について(消費者庁)

上記の画像は、本サプリを定期購入契約する際、注文の確認時点で現れる画面。申し込み手続きの詳細が表示されているが、解除方法については一部しか表示されていないとされた。また、本サプリは別に表示されるチャットボット上でも購入できるが、その注文ページにおいても同様に解除方法の説明が不十分とされた。

これにより、特定商取引法第12条の6第1項に違反するとして処分の対象となった。

増える広告表示違反、事業者側が気をつけること

オルリンクス製薬の例は、主に通信販売の申込み段階における表示が問題視された。自社のサイトが適切十分な表示になっているかどうか、利用者の立場に立ってもう一度見直してみたい。特定申込みを受ける際の表示については、消費者庁が出しているガイドライン(※2)も読み込んでおこう。

なお、オルリンクス製薬の例は特定商取引法の違反だったが、通販広告においては、景品表示法違反も増えている。2024年2月29日に公表されたデータによると、2023年度における国からの法的措置の件数は、措置命令が32件、課徴金納付命令が8件となった(※3)。景品表示法に基づく法的措置事例には、いわゆる「No.1表示」のほか、合理的な根拠の提出ができない誇大広告表示に関するものが多い。

また、公平な調査に基づいていないNo.1表示や、虚偽が疑われる体験談、実際には期限がないのに表示されるカウントダウンタイマー広告についてはとくに、公益社団法人日本通信販売協会(JADMA)が警鐘を鳴らしている。

EC事業を行う上で、特定商取引法と景品表示法の2つの法律については再度確認し、自社の広告が問題とみなされないかチェックを徹底しておきたい。

※2 参考元:通信販売の申込み段階における表示についてのガイドライン(消費者庁)

※3 出典元:景品表示法に基づく法的措置件数の推移及び措置事件の概要の公表(令和6年2月29日現在)

関連記事:ニトリやエクスコムグローバルにも指摘 「No.1表示」消費者庁が実態調査へ〜景表法で法的措置事件の概要も公表 「No.1表示」「体験談や使用者画像」「カウントダウンタイマーや在庫表示」は要注意! 2023年度通販広告実態調査報告書


記者プロフィール

奥山晶子

2003年に新潟大学卒業後、冠婚葬祭互助会に入社し葬祭業に従事。2005年に退職後、書籍営業を経て脚本家経験を経て出版社で『フリースタイルなお別れざっし 葬』編集長を務める。その後『葬式プランナーまどかのお弔いファイル』(文藝春秋刊/2012年)、『「終活」バイブル親子で考える葬儀と墓』(中公新書ラクレ/2013年)を上梓。現在は多ジャンルでの執筆活動を行っている。

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