ニトリやエクスコムグローバルにも指摘 「No.1表示」消費者庁が実態調査へ〜景表法で法的措置事件の概要も公表

奥山晶子

2024年3月29日、消費者庁は2月29日までの景品表示法に基づく法的措置件数の推移と措置事件の概要を公表した。法的措置の動向や事例、罰則の実際を解説したうえで、今後行われる「No.1表示」の実態調査について紹介したい。

景品表示法に基づく法的措置とは

景品表示法とは「不当景品類及び不当表示防止法」の通称で、商品やサービスの品質、内容、価格などを偽って表示を行うことや、過大な景品類の提供を規制する法律。消費者がより良い商品やサービスを、自主的に、合理的に選べる環境を守るために定められている。

このたびの公表資料では、とくに合理的な根拠を持たない「No.1表示」(「○○でNo.1!」といった表示)などの誇大広告を中心に措置事例報告が行われた。

画像元:景品表示法違反行為を行った場合はどうなるのでしょうか?(消費者庁)

とくに広告表示において措置対象となった場合、具体的な罰則は以下の4つが代表的だ。

1. 法令違反の周知徹底
合理的な根拠を欠いた広告であったこと、景品表示法に違反するものである旨を一般消費者に周知徹底する。
2. 再発防止策の実施
今後、同じ違反が発生しないよう再発防止策を講じ、これを社内に周知徹底する。
3. 今後、同様の表示を行わない
4. 課徴金納付命令
措置命令及び課徴金納付命令に関する要件を認められる事案である場合に出される。

2024年2月29日現在、2023年度における国からの法的措置の件数は、措置命令が32件、課徴金納付命令が8件。2012年度から数えて合計すると、措置命令が435件、課徴金納付命令は112件に上る(※1)。

※1 出典元:景品表示法に基づく法的措置件数の推移及び措置事件の概要の公表(令和6年2月29日現在)

景品表示法に基づく法的措置事例

本資料では、以下のような措置事例が取り上げられている。いずれも法的措置として、適切ではない表示の取り下げや再発防止が命令された。

・エクスコムグローバル株式会社
モバイルルーターのレンタルサービスをアピールする広告において、「お客様満足度 No.1※ 海外Wi-Fiレンタル」、「海外旅行者が選ぶ No.1※ 海外Wi-Fiレンタル」及び「顧客対応満足度 No.1※ 海外Wi-Fiレンタル」と表示。
あたかも実施の利用者を対象とした調査結果を開示しているようだが、実際には回答者に実際の利用履歴を確認したうえでの調査ではなかったうえ、複数の事業者のウェブサイトの印象を問うアンケートにとどまっていた。また、当該調査結果を正確かつ適切に引用したうえでの表示にしていなかった。

※詳細資料:エクスコムグローバル株式会社に対する景品表示法に基づく措置命令について(消費者庁)

・株式会社 ニトリ
炊飯器の広告において、一般的な炊飯器よりも糖質が48%カットできるかのような表示を記載。消費者庁が表示の裏付けとなる合理的な根拠の提出を求めたところ、提出された資料は根拠を裏付けられるようなものではなかった。

※詳細資料:糖質カット炊飯器の販売事業者4社に対する景品表示法に基づく措置命令について (消費者庁)

・株式会社 ハハハラボ
食品の痩身効果をアピールする広告内で、あたかもその商品を食べるだけでお腹の脂肪が極端に落ちるような表示を記載。合理的な根拠となる資料を求めたところ、提出された資料は合理的な根拠を示すものと認められるものではなかった。

※詳細資料:株式会社ハハハラボに対する景品表示法に基づく措置命令について (消費者庁)

消費者庁が実態調査を実施予定

2024年3月21日には、新井ゆたか消費者庁長官がオンラインにて記者会見を開き、実態調査の予定を公表。景品表示法に基づく法的措置の結果を受けて、とくに「満足度No.1」などと宣伝をする、いわゆるNo.1表示について調査を行うことを明言した。

新井長官は、なかには7冠や3冠といったNo.1表示をいくつか並べる表示も多くみられたことに注目。「これらの案件におきましては、調査会社による営業活動を受けて、問題となるNo.1表示を行ったケースも多く見られたところであります」と、問題の一端に調査会社の存在があることを強調した。

調査結果の公表は2024年秋頃を予定。「問題となるNo.1表示の考え方を示すことによりまして、事業者に対し、安易にNo.1表示を行わないよう注意喚起をするとともに、消費者に対しても根拠のないNo.1表示に注意するよう周知していきたいと考えております」と発言し会を締めた。

消費者庁の流れを受け、EC事業者も改めてNo.1表示を含め行きすぎた表現を行っていないか、広告をよりいっそう注意してチェックする必要がある。アンケート実施において調査会社に依頼している場合は、調査の具体的な方法についても改めて確認したい。

※出典元:新井消費者庁長官記者会見要旨(消費者庁)


記者プロフィール

奥山晶子

2003年に新潟大学卒業後、冠婚葬祭互助会に入社し葬祭業に従事。2005年に退職後、書籍営業を経て脚本家経験を経て出版社で『フリースタイルなお別れざっし 葬』編集長を務める。その後『葬式プランナーまどかのお弔いファイル』(文藝春秋刊/2012年)、『「終活」バイブル親子で考える葬儀と墓』(中公新書ラクレ/2013年)を上梓。現在は多ジャンルでの執筆活動を行っている。

奥山晶子 の執筆記事