限界利益4倍・欠品率10分の1の成果事例も データ一元管理「ストアレコード」でEC経営にスピードと力を!
EC市場の拡大に伴い、事業運営はますます複雑化している。売上や在庫、広告費などのデータが各システムに分散したままでは、迅速かつ的確な経営判断は難しい。こうした課題を解決するのが、小売・EC企業向け経営データ一元管理プラットフォーム「ストアレコード」だ。商品ごとの限界利益の可視化や需要予測、データの一元管理を通じて、利益を生み出す経営を支援している。
同サービスは、どのような発想から生まれ、EC事業者の経営をどう変えるのか――。ストアレコード株式会社 代表取締役の樋口幸太郎氏に、開発の背景や導入効果、AIを活用した今後の展望について話を聞いた。
「勘と経験に頼らない」データ経営への転換
――EC事業において経営データを一元管理すべき理由は何ですか。
意思決定の精度を高め、売上や利益を最大化するためです。小売業は「仕入れ・価格設定・販促・販売・再仕入れ」という一連のサイクルで成り立っています。そのため、「売上」「費用」「仕入れ(発注・納品)」「在庫」といったデータを横断的かつ一元的に管理し、意思決定に活かすことが不可欠です。
――多くのEC事業者が抱えているデータ運用の課題と、その現状を教えてください。
多くの企業では、データ基盤や管理体制が十分に整備されていません。特に複数のECモールに展開している企業では販売データが分散し、仕入・在庫データと一元管理するには多くの工数がかかってしまいます。売上やSKU(最小管理単位)が増えるにつれ、Excelによる手作業管理は限界を迎え、十分な分析ができなくなります。
これは大手企業でも同様で、複数展開している各ECモールからCSVでダウンロードし、共有フォルダに保存して手作業でデータを集計しているケースが少なくありません。多額の投資をしてデータ基盤や自動収集システムを構築できる企業は、ごく一部に限られます。またデータ基盤を構築している企業でも、BIツールの利用にはリテラシーが必要で、結局、現場でBIツールを使えるのは少数の人だけになっているようです。
――そのように、データをリアルタイムに一元管理できていない場合には、どのような損失が生じるのでしょう。
経営判断が「勘と経験」に依存しやすくなり、業務の属人化や利益を損なう意思決定につながります。例えば、発注済みで未納品の「発注残」が正しく反映されていなければ、在庫不足と誤認して二重発注を行ってしまい、過剰在庫を抱えてしまう恐れがあります。一元管理ができていないと、こうした在庫の偏りや欠品による販売機会損失、コスト増加を招き、結果として「限界利益」を圧迫します。
ストアレコード株式会社 代表取締役 樋口幸太郎氏。商社を経てWebメディア事業を共同創業。子供服ブランド「pairmanon(ペアマノン)」運営会社でCOOを務めた後、2022年にストアレコード社(旧社名・株式会社Bizgem)を創業した
――EC経営において重要とされる「限界利益」ですが、そもそも「限界利益」とは何でしょうか。また、なぜ重視すべきなのでしょうか。
限界利益とは、売上から変動費(原価、モールでの手数料、配送費、クリック課金広告費など)を差し引いた利益のことです。ECは変動費率が極めて高いため、粗利が出ていたとしても広告費などがかさみ、限界利益ベースでは赤字というケースが珍しくありません。また、広告費などは請求時期がずれるため、財務会計だけではリアルタイムの収益状況を把握しにくいといった課題があります。日次で限界利益を可視化することで、人材採用や追加の広告投資などの重要な経営判断を、実態に基づいて行えるようになります。
EC事業の利益構造を変えるデータ基盤の構築
――そうした課題を解決するために生まれた「ストアレコード」ですが、開発したきっかけを教えてください。
前職の子供服ブランドのスタートアップでCOOを務めていたときに、会社の売上が10億円を超えるタイミングでスプレッドシートによる管理が限界を迎え、社内向けに経営データ一元管理のツールを自分で開発したのが原点です。その後、M&Aでその会社を売却した際に、大手企業の経営管理システムやデータ分析基盤に触れ、「この仕組みを中堅・中小企業にも使いやすい費用感で提供したい」と考えたことがストアレコードを起業するきっかけになりました。
小売業の本質はものづくりです。「ストアレコード」によって経営管理業務を自動化・効率化し、事業者が商品開発や販売といった本来注力すべき領域に集中できる環境を実現したいと考えています。また、既存の受注・在庫管理システムやカートを変更せず導入できる点も特徴です。
――「ストアレコード」の具体的な機能と、その活かし方について伺います。各種データ収集を自動化し、限界利益の自動算出機能も備えていますが、商品別の限界利益を可視化することで、広告費投資はどのように最適化できますか。
ECモールなどから取得したデータを基に、SKU単位で広告費を自動的に紐付けます。その結果、「売上はあるものの利益が残っていない商品」をすぐに把握でき、広告予算を「利益が見込める商品」へ柔軟に配分できます。売上だけでなく限界利益を基準に判断することで、より精度の高い広告運用が可能になります。また、ブランドやカテゴリ、SKUなど分析軸を自由に設定できるダッシュボード機能も備えています。
「ストアレコード」は売上や在庫、費用といったデータをAPI・RPA連携で自動で収集(連携対象外もCSVでアップロード可能)。その他にも多様なダッシュボード機能、限界利益の自動算出、需要予測、発注・納品管理といった、さまざまな機能を備える(画像は商品別に限界利益率を表示した例)
――広告投資の最適化に加え、利益を最大化するには在庫管理も重要です。需要予測機能では、どのように適正な発注数を算出しているのでしょうか。
定番商品向けと季節商品向けの2方式を採用しています。定番商品向けの「在庫日数方式」は、設定した在庫日数から必要数量を算出します。一方、アパレルなど季節商品向けの「販売終了日方式」は、シーズン終了までの需要を予測して発注数を算出します。
これらに直近の販売実績や前年52週のトレンド、実在庫、発注残などを組み合わせ、SKUごとの最適な発注数を自動で算出します。
――料金体系と導入支援について教えてください。
料金は月額基本料2万円(税別)に、受注件数に応じた従量課金を加えたシンプルな体系です。自社でセットアップする場合、初期費用は不要です。また、システム担当者のいない企業様向けには、商品マスター登録やデータ移行、システム連携などを当社で支援するサービスも提供しています。
「ストアレコード」は各種ECモールだけでなく、ネクストエンジンをはじめとする在庫管理システムとも連携し、それらのデータを一元管理できる。詳細は樋口氏とネクストエンジンを提供するNE株式会社 松尾厚氏との対談動画を確認してほしい(「ネクストエンジン」YouTubeチャンネルより)
限界利益4倍の好事例も。一元管理と分析で実現する在庫戦略
――「ストアレコード」を導入した企業では、具体的にどのような在庫削減や経営改善の効果が出ていますか。
ペット用品を扱うある企業では、複数モールのCSVを手作業で集計していたため、データ確認の頻度が低く、欠品が頻発していました。しかし、「ストアレコード」導入後は毎日のデータ確認に基づく発注へ切り替えたことで、欠品率は10分の1まで改善しました。発注残の可視化により、不要な二重発注も防げるようになりました。(※1)
また、あるアパレルブランドでは、売上をほぼ維持したまま過剰在庫を削減し、在庫高を前年比40%削減しました。商品別の限界利益やキャッシュフローを分析し、一見黒字でも資金効率が悪かったブランドの撤退を早期に判断できた事例もあります。
――帽子やアパレル雑貨を扱う株式会社nakotaでも、大きな利益改善が見られたそうですね。
nakota様では従来、親品番単位で商品を管理していたため、2色展開のキーホルダーが月40個売れていても、シルバー36個、ゴールド4個というSKUごとの販売実績を把握できておらず、各色20個ずつ発注していました。売れ筋のシルバーはすぐに欠品する一方、ゴールドは5カ月分の過剰在庫になる、という状態でした。
「ストアレコード」導入いただいた後は、SKU単位で販売動向を把握できるようになり、適正な発注判断や滞留在庫への早期対応が可能になりました。その結果、約180日だった在庫日数は120日を下回るまで短縮され、キャッシュ効率も改善しました。
――セール対応の面でも改善があったそうですね。
楽天市場のスーパーSALEでは、前年は1日180万円を売り上げたものの、クーポンや広告費が膨らみ、限界利益は約4万円にとどまっていました。「ストアレコード」導入後、「売上を追う」ことから「利益を残す」運用へ転換した結果、売上は前年比55%減となりましたが、限界利益は4倍以上に伸びました。さらに、SALEイベント翌日の朝には前日の限界利益レポートを確認できるスピード感も、高く評価いただいています。
株式会社nakotaは自社ECのほか、楽天市場、Amazonといったモールで帽子を中心としたアパレルを展開。樋口氏が「理想的な使い方」と称賛する同社の「ストアレコード」活用術については、代表取締役 吉田真太郎氏と樋口氏、NE 松尾氏の動画で具体的なエピソードを交えて語られている(「ネクストエンジン」YouTubeチャンネルより)
※1:参考:欠品率10分の1に改善!売上2倍でも同じ人数で運用できる仕組みの構築をストアレコード導入で実現(ストアレコード株式会社)
AIがより迅速な意思決定を支援。「次世代の基幹システム」目指す
――6月から外部のAIツールと直接連携できるMCP対応(MCPサーバーの提供)をスタートさせています。これにより事業者の実務はどのように変わるのでしょうか。
ChatGPTやGeminiなど、日常的に利用しているAIツールからストアレコードのデータへ直接アクセスできるMCPサーバーの提供を開始しました。
これにより、AIが売上や在庫、利益データを取得し、Excel資料の作成やチャットへの報告までを実行できます。週次レポートの作成や最適なタイムセールの設定、発注アラートなども自動化できます。集計業務をAIに任せることで、人は本来注力すべき経営判断に集中できるようになります。
MCP対応により、普段使っているAIツールから「ストアレコード」の売上・在庫・利益データを呼び出して分析できるようになった。また、AIエージェントによるExcelやスプレッドシートの資料作成も可能に(画像はAIエージェントが作成したスプレッドシートの例)
――「ストアレコード」が今後予定している機能アップデートや、中長期的に目指す姿について教えてください。
大きく2つの方向性があります。 1つ目は、AIによる意思決定支援の高度化です。単にデータを集計・表示するだけでなく、「今週はクーポンを何%発行すべきか」「推奨発注数はいくつか」といった具体的なアクションプランをAIが提案し、人は意思決定に集中できる環境を目指しています。
2つ目は、ストアレコードを次世代の基幹システムへ進化させることです。重厚なERP(Enterprise Resource Planning)ではなく、クラウド型POSレジや自動出荷システムなどの専門SaaSと連携し、意思決定に必要なデータを蓄積・分析する基盤を目指しています。
その実現に向けて、社内権限管理の強化に加え、先入先出法や移動平均法などに対応した、より高度な原価管理機能の実装も進めていきます。


