楽天SOYグランプリのJoshinが語る、「SOY TRIP」で受けた刺激と「AIと人」で目指す新たなEC体験

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佐藤周平

株式会社Joshin 執行役員 EC事業担当 J-web営業部長 木原辰浩氏

ECが成熟し、同じ商品が複数の店舗に並ぶ時代、価格やポイントだけで継続的に選ばれることは難しい。品ぞろえ、欠品を防ぐ調達力、届くまでの速さ、購入後の安心、そして「迷ったときに頼れる」専門知識。顧客が体験する一連の価値を、どこまで磨き込めるかが問われている。AIが商品との出会い方を変えようとする今、人の力をどう組み合わせるべきか。

楽天ショップ・オブ・ザ・イヤー2025で総合グランプリを受賞し、受賞出店者が参加できる研修旅行「SOY TRIP」にも参加した株式会社Joshin(楽天市場「Joshin web 家電とPCの大型専門店」)の取り組みから、次代のECに必要な条件を探る。

専門知識を持つスタッフがユーザーの熱量に応える

──貴社が運営する「Joshin web 家電とPCの大型専門店」は、楽天ショップ・オブ・ザ・イヤー(以下、楽天SOY)2025で総合グランプリを受賞しました(※1)。全国5万店舗以上の中から選ばれ、総合グランプリは今回で4度目です。まず、JoshinにとってECはどのような位置づけなのでしょうか。

株式会社Joshin 執行役員 EC事業担当 J-web営業部長 木原辰浩氏(以下、発言は木原氏) 当社のECは、もともと数人でシステムを組み、自分たちでつくり上げたところから始まり、徐々に規模を広げてきました。現在はアルバイトや派遣社員を含めて200人強がEC事業に携わっています。会社全体の売上に占めるECの比率は、おおむね16~18%の間で推移しています。

家電量販店としてのJoshinには、テレビゲームや玩具、プラモデルといったエンターテインメント分野に強いという特徴があります。「キッズランド」という売り場を早くから設け、この領域を育ててきました。「ガンプラといえばJoshin」「鉄道模型といえばJoshin」と言ってくださるお客様もいらっしゃいます。

この特徴は実店舗だけでなく、ECでも変わりません。Joshin webでは、エンターテインメント商材が集客の半数超を生み出し、テレビやパソコンなどの大型家電が売上の基盤をつくっています。この組み合わせが、当社のECの基本的なモデルです。

※1 参考記事:楽天ショップ・オブ・ザ・イヤー2025、Joshin webが総合グランプリ(ECのミカタ)

楽天市場「Joshin web 家電とPCの大型専門店」(画像はショップページより)

──2025年は、楽天市場でどのような需要を取り込んだのでしょうか。

大きかったのは、ゲーム機「Nintendo Switch 2」の登場でテレビゲーム市場が盛り上がったことと、(2025年10月の)Windows 10のサポート終了に伴うパソコンの買い替え需要です。この2つの追い風を確実に取り込めた年だったと思います。加えて、SIMフリー端末も成長領域として存在感を増しました。

ただし、需要があるだけでは売上にはつながりません。楽天スーパーSALEやお買い物マラソンなどの大型イベントに向けて各商品担当者が明確な目標を持ち、魅力的な商品を準備してきました。在庫をどれだけ確保するのか、価格やポイントをどう設定するのかを一つずつ精査し、イベントに臨みます。そうした基本の積み重ねが、結果に直結したと考えています。

──同じ商品を扱う競合店も多い中、貴社がユーザーに選ばれ、「差別化」につながっているのはどんな点だと捉えていますか。

商品担当者の専門性だと思います。冷蔵庫や洗濯機、季節家電、テレビゲーム、鉄道模型、プラモデルなど、カテゴリーごとに担当者がいます。その商品知識は、私から見ても「その道のプロ」です。Joshinの中だけでなく、市場全体の動きを見ながら販売施策を考えています。

特にエンターテインメント商品は、熱量の高いファンの方が見ています。ファンに喜んでいただけるページをつくれるか、欲しい商品を確保できるか。そのためには、担当者のアンテナの感度が非常に重要です。人気の「ガンプラ」のように入手しにくい商品では、なおさら調達力が信頼につながります。

また、売った後のきめ細かなサポートも欠かせません。スタッフ一人ひとりが、お客様に寄り添う姿勢を貫きました。専門性、商品確保、価格やポイント、そして販売後の対応。何か一つの派手な施策ではなく、これらを継続してきたことが高い評価と信頼につながり、総合グランプリという栄誉に結びついたのだと思います。

──配送面では、どのような体制を整えていますか。

物流は自社で運営しており、関西、関東、北陸・北信越の3拠点を動かしています。物流倉庫に在庫があれば、最短で当日出荷、翌日お届けが可能です。欲しい商品が見つかり、早く届き、購入後も安心できる。お客様に選んでいただくには、売り場の外側まで含めた総合力が必要だと考えています。

SOY TRIP 2026の模様

約80万アイテムをAIで磨く。SOY受賞後も進める運営高度化

──楽天SOY「総合グランプリ」の受賞で、どんな影響を感じていますか。

受賞の看板を掲げられることは大きな強みです。楽天市場の中で「この店なら安心できる」と判断していただく材料になり、ブランドへの信頼がさらに強まると感じています。一方で、受賞はゴールではありません。店舗運営の細かな改善について、当社から楽天市場側へさまざまな要望も伝えています。小さな機能改善であっても、約80万アイテムを扱う当社にとっては、業務効率に大きく影響するからです。

──約80万アイテムとなると、商品情報やコンテンツの整備だけでも膨大です。昨今EC運営におけるAI活用も進んでいますが、貴社ではどのような業務でAIを導入していますか。

AIに任せられるところは任せ、コンテンツの数を増やす取り組みを進めています。商品ページづくりや動画コンテンツの制作がその一例です。動画のナレーションにもAI音声を使っていますが、以前のような不自然さが減り、今は非常に流暢で聞きやすくなりました。

80万アイテムを人の手だけで細かくメンテナンスし続けるのは大変です。AIによって制作や更新を効率化できれば、これまで手をかけにくかった商品にも情報を付加できます。単なる省力化ではなく、お客様が判断するための材料を、より多くの商品に届けられることに価値があると考えています。

──楽天はグループとして「AI-nization(エーアイナイゼーション)」を掲げ、AIの積極活用を推進しています。出店ショップとして、楽天市場が構想するAIを活用した店舗運営・接客機能についてどう捉えていますか。

非常に期待しています。先日参加した楽天グループ主催のイベント「Rakuten AI Optimism」では、各店舗に「AI店長」が入り、お客様に商品をおすすめしたり、質問に答えたりする将来像が示されました(※2)。スモールスタートと聞いていますが、当社もぜひ参加させてほしいと要望したいほどです。

今後は、例えば「テレビ番組で芸能人がすすめていたクリーナー」といった曖昧な手がかりから商品を探すお客様が増えるでしょう。従来のキーワード検索だけでは拾いにくかったニーズを、AIが会話の中から理解し、適切な商品につなげる。商品数の多い当社にとって、そうした接客には大きな可能性を感じています。

プログラム開発の面でも、AIにコードをつくらせ、AIでチェックし、最後に人が確認する流れを始めました。品質を担保しながら開発スピードを上げることは、変化の速い時代に非常に重要です。

※2 参考記事:【Rakuten AI Optimism】三木谷氏「AI店長」デモ初披露 店舗の個性を活かす楽天市場の「AI店長」開発進む

2026年1月29日に行われた「楽天ショップ・オブ・ザ・イヤー2025」授賞式。写真は式に参加した株式会社Joshin 代表取締役 兼 社長執行役員 CEOの高橋徹也氏(参考記事:楽天ショップ・オブ・ザ・イヤー2025、Joshin webが総合グランプリ

深圳で目にした「実装の速さ」。SOY TRIPで得た刺激と学び

──7月に行われたSOY TRIP(※3)に参加されました。木原様は初めての参加だったと伺っていますが、特に印象に残ったことを教えてください。

約5日間の研修で、マカオを拠点に深圳や香港を訪れました。最も衝撃を受けたのは深圳です。街には無人タクシーが当たり前のように走り、日本ではまだ少し先の未来に見えるものが、すでに日常へ実装されていました。時代が進むスピードの違いを強く感じました。

テンセントやアリババも訪問し、最新技術のデモを見せていただきました。圧倒されたのは、技術そのものに加えて、その規模と実装量です。特にAIを特別なものとしてではなく、当たり前の道具として使っている。日本よりはるか先を行っているように感じました。街自体が変化を続け、人々もその変化を受け入れている。深圳を研修先に選んでいただいたことには、本当に感謝しています。

※3:「楽天ショップ・オブ・ザ・イヤー」を受賞した出店者のみが参加できる、楽天主催の海外研修旅行。2026年は7月21日から7月25日に、マカオ・深圳・香港を訪れた

SOY TRIP 2026の模様(写真右端が木原氏)

──「次世代のEC」についても、刺激的な話を聞いたそうですね。

中国ECの発展に深く関わった、元アリババ・現HHOの克琳氏から話を伺いました。人が商品を探す「検索型EC」から、商品側が人を見つける「コンテンツレコメンド型EC」へ進み、現在の中国では、AIが顧客を深く理解して提案する「AI型EC」へ移りつつあるという話です。

日本は、まだ検索型ECが中心だと思います。しかし、この変化の波はいずれ確実に日本にも来ます。楽天市場もその方向へ進もうとしていると感じていますし、Joshin webも乗り遅れずについていかなければならない。次世代型のEC体験を構築する必要があると、強く認識しました。

──企業訪問以外では、どのような学びがありましたか。

研修中は班で動き、訪問先では複数の「ミッション」に挑戦しました。例えばテーマパーク内で、限られた時間の中でミッションをどう早くクリアするか、班で作戦を立て、役割を決めて実行しました。遊びのように見えても、実際には戦略立案と実行、チームワークを学ぶプログラムです。参加企業のトップ層が本気で取り組みますし、年代も業種も異なるメンバーと行動するので、それぞれの考え方や会社の運営方法を聞けたことも大きな刺激でした。

参加者側だけでなく、半年ほどかけて準備し、状況に応じた次の手まで考えていた楽天の運営チームからも、組織力や計画力を学びました。参加店舗が学びを持ち帰ってチーム力を高め、楽天市場とともに成長する。それがSOY TRIPの狙いなのだと感じています。

SOY TRIP 2026の模様

AIに任せ、人が深く応える。実店舗もつなぐ次のECへ

──SOY TRIPを経て、楽天市場における今後の事業展望をどう描いていますか。

AIへの対応を進めていきますが、ただAIを導入すれば終わりではありません。Joshinが専門店として持つ最大の魅力は、スタッフの専門知識や、実際に商品を試した「試用レポート」など、人間味のある情報です。 AIが効率よく商品を提案し、お客様がさらに深く知りたいと思ったところで、専門知識を持つ人がきちんと応える。その仕組みをつくることが大切だと考えています。

実店舗でも同じです。一次対応への案内をAIやデジタル端末で行えたとしても、最終的には専門のアドバイザーに相談したいお客様がいらっしゃいます。そのときにスタッフが状況を理解し、納得できる商品を提案する。デジタルとヒューマンを高度に融合させ、「楽天市場ならJoshinが選びやすい」「Joshinなら安心だ」と言っていただける店を目指します。

──実店舗を持っている強みが、楽天市場でのショップ運営にもより生かせそうですね。

ぜひ実現したいのが、楽天市場のショップで購入した商品を、近くのJoshin店舗で受け取れる仕組みです。現在、楽天市場側に相談している段階ですが、店舗受け取りを望むお客様は多くいらっしゃいます。

当社は高単価の商品も多く扱っています。購入前に実物に触れたい、店員の説明を聞いてから安心してカートに入れたいというニーズもあります。また、楽天市場で購入した玩具を店舗で受け取ったお客様が、その足で洗濯機売り場に立ち寄り、買い替えについて専門スタッフに相談することも考えられます。

ECと実店舗のどちらも利用するお客様は、双方でのお買い物が増え、Joshinグループ全体でLTVが高まる傾向が自社ECのデータから見えてきました。ECから店舗へ、店舗からECへと体験を切らずに結ぶことは、当社ならではの価値になるはずです。

──商品の面で、新しい展開はありますか。

今年度から、プライベートブランド商品の開発を本格化しています。まずは小物からですが、今後は中・大型家電にも広げていく考えです。ECでの展開も当然増やしていきます。課題は、商品の良さをどう伝えるかです。SNSをお客様との入り口として活用し、特徴や価値を丁寧に発信したいと思っています。

AIが商品の探索や制作、開発を速めても、最後に信頼を生むのは、お客様を理解しようとする姿勢です。長年培った専門性とサポート力を軸に、新しい技術と実店舗をつなぐ。そうしてJoshinらしい次世代のEC体験をつくっていきます。


記者プロフィール

佐藤周平

佐藤周平

WEBディレクション、ライティング、デザインからバックオフィス業務までやってきた雑食系。自身でECショップも運営しており、スタンスはかなりEC担当者寄り。取材にかこつけて、トップランナーたちからトレンドやノウハウを吸収しようとしている。

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