松屋フーズのTemu出店 MD戦略|冷凍食品ECで証明した販路開拓
冷凍食品ECでも35以上のチャネルを展開する牛丼チェーン大手の株式会社松屋フーズ。同社が2026年に新たな販路として選んだのが、日本市場のサービス開始から3周年を迎えるマーケットプレイス「Temu」だ。
出店にあたり、Temuのユーザー層に特化した「専用商品」を投入。その結果、当初「半年」を見込んでいた売上目標を、わずか「3カ月以内」で達成する驚異的なペースで急成長を遂げている。
なぜ松屋フーズは、新興プラットフォームのTemuを選択したのか? スタートダッシュに成功した理由は?
EC事業を牽引する戦略事業部の山田浩雅氏に、Temu出店の狙いと、またたく間に「スターセラー」へと駆け上がった独自のMD(商品化計画)戦略について聞いた。
新たな顧客接点を求めた出店登録無料サービスがもたらした価格競争力
牛丼チェーン大手の松屋フーズは、1300店舗の商圏外にいるお客様へも広くアプローチするため、約20年前からEC事業に注力してきた。現在は35以上のECモールやオンライン販売チャネルを運用し、冷凍食品の販路を開拓し続けている。
近隣に店舗がない地域でも、自宅で手軽に店舗と同じメニューを楽しめる環境づくりが同社の狙いだ。
「冷凍食品なら、いつでもご家庭で店舗の味を再現できます。それが事業を始めた当初からの目的でした」(山田氏)
同社の冷凍食品は、個食パックをまとめた利便性の高いセット商品として販売されている。定番の「牛めし」から「バターチキンカレー」などの期間限定メニューまで幅広くラインアップ。商品によっては1食あたり約200円と、店舗で食べるよりもリーズナブルな価格設定を実現し、多くのファンを獲得している。
株式会社松屋フーズ 戦略事業部 外販グループ チーフマネージャー 山田浩雅氏
EC売上はコロナ禍で大きく伸長。さらなる成長に向けた「次なる一手」を模索していた同社が新たな販路開拓として白羽の矢を立てたのが、Temuの「国内販売事業者募集プログラム」への参加だった。
2025年に日本国内で開始されたこのプログラムは、日本国内の事業者が国内の消費者へ直接販売・配送できる仕組みを提供している。海外発送と比べて配送時間を劇的に短縮でき、地域ニーズに合わせた柔軟な商品展開が可能である。
さらにEC事業者にとって大きなメリットとなるのが、シンプルなコスト構造。出店登録料や商品掲載料が発生しないため、事業者は中間コストを削り、より明確で競争力のある価格設定を行うことができるのだ。
「Temuは非常に勢いのあるマーケットプレイスだと感じています。当社としても、このプラットフォーム上で松屋ブランドの存在感を確立したいと考えました」(山田氏)
勝因は「専用商品」。指すは食品カテゴリーのトップ
Temuへの出店にあたり、松屋フーズは既存商品の横展開ではなく、「Temuユーザーに最適化した商品構成の再設計」を行った。レシピや品質は一切妥協せず、価格感度の高いTemuのユーザー層に合わせ、一部商品の内容量やセット構成を徹底的に見直した。製造コストを最小限に抑えることで、その分を魅力的な販売価格へと還元したのである。
このMD(商品化計画)戦略は見事に的中した。 現在、Temuで最もヒットしている「牛めし・カレー10食セット」は、レビュー評価で「4.8点」という極めて高いスコアを獲得。ユーザーからは「店舗と同じ味を楽しめる」という声が多数寄せられている。
このような高評価レビューを積み重ねた結果、Temuから「スターセラー」の認定を受けた。スターセラーに認定された商品は、プラットフォーム上での追加露出の機会が得られるため、さらなる認知拡大と売上増の好循環を生み出している。
当初は「出店から半年程度」で計画していた売上目標を、3カ月以内で達成するペースで拡大を続ける松屋フーズ。同社は、Temuにおける食品カテゴリーのポテンシャルを確信しており、早期に参入したメリットは今後さらに大きくなると見込んでいる。
「冷凍食品と検索した際に、画面いっぱいに松屋の商品が並ぶくらいまで商品数を増やしたい」と山田氏。目指すは、Temuの食品カテゴリーを代表するブランドになることだ。
顧客が「お得だ」と感じていただくことを重視する同社のMD(商品化計画)戦略について「お客さまとの約束」と表現する山田氏。その約束を守る場として同社が選んだプラットフォーム「Temu」は、日本市場のサービス開始から3周年を迎え、若年層からシニア層へと幅広い世代の利用者層にアプローチできるツールとして定着。斬新なアプリ体験の提供や独自のアルゴリズムを通じた販売プログラムという特性もパワーアップしており、さらなる高みを目指すEC事業者は「新たな販路」として注目している。


