貴金属・宝飾品業界、コロナ禍以降の売上傾向は? 帝国データバンク調査

ECのミカタ編集部

貴金属・宝飾品業界の売上高はコロナ禍前より 20%増加

株式会社帝国データバンク(以下:帝国データバンク)は2024年6月7日、「貴金属・宝飾品業界の最新景況レポート」を発表した。本記事では一部内容を抜粋して紹介する。

貴金属・宝飾品業界の売上高推移はコロナ禍前を上回る

帝国データバンクが保有する企業概要データベース「COSMOS2」を元に集計した貴金属・宝飾品業界の売上高推移をみると、コロナによる経済活動の停止が影響した2020年は9186億円と前年比8.6%で減少した。

しかし2022年以降は回復に転じ、コロナの感染症法上が5類へ移行した2023年には1兆2046億円と、コロナ禍前の2019年(1兆51億円)を大きく上回った。

2023年4月以降のインバウンド需要の急拡大や、コロナ禍収束にともなう国内需要の復調に加え、金の価格高騰によるリサイクルショップの好調やオリジナルブランドにおけるECサイト需要の高まり、コロナ禍で落ち込んだブライダル需要の回復などの好材料も売上高の増加に寄与したと考えられるだろう。

※:貴金属・宝飾品業界の売上高は、帝国データバンク企業概要データベース「COSMOS2」収録企業(2024年5月時点)のうち、各年1~12月に迎えた決算の業績数値の合計。集計対象は、5期連続で売上高が判明している3190社(変則決算は除く)。

※画像元:貴金属・宝飾品業界の最新景況レポート(株式会社帝国データバンク)

改善傾向も全産業の景気DIを下回って推移

TDB景気動向調査で算出した貴金属・宝飾品DI(※1)の推移をみると、2020年4月に緊急事態宣言が発出されたことで販売機会が激減し、同年2Q(4~6月)には全産業の景気DIを18.4ポイント下回る7.8まで下落した。

2021年9月末に全対象地域の緊急事態宣言が解除されたことで、同年4Q(10~12月)の全産業の景気DIは42.8にまで回復したが、贅沢品である貴金属・宝飾品の販売回復は遅れ、同業界の景気DIは27.9と、全産業の景気DIを14.9ポイント下回った。

しかし2022年3月のまん延防止等重点措置終了に伴い、貴金属・宝飾品DIの回復ペースは上がり、2023年1Q(1~3月)に38.4まで回復。2023年4Qには42.6と過去最高を更新し、全産業の景気DI(44.8)との差は2.2ポイントにまで縮小。しかしながら、2024年1Qの貴金属・宝飾品DIは41.3にとどまり、全産業の景気DIを下回る状況が続いている。

※1:貴金属・宝飾品DIは、「貴金属製品製造」「貴金属製品卸売(宝石を含む)」「貴金属製品小売(宝石を含む)」などの景気DIを3カ月移動平均で算出

※画像元:貴金属・宝飾品業界の最新景況レポート(株式会社帝国データバンク)

今後も現状の水準で推移すると考えられる

円安が後押しするインバウンド需要など、客足増加で景況感が回復している一方、地政学的リスクの高まりやインフレ傾向を背景に2022年から続く素材価格の高騰による仕入価格上昇が業績を圧迫している企業は少なくない。

こうした背景から、同じ業界の中でも為替相場やインバウンド需要の恩恵を受ける企業とそうでない企業で、格差が生じていることがうかがえるだろう。

引き続き、物価高騰の中、賃上げ効果を実感できるまでにはしばらく時間を要する可能性があることから、購買の中心は外国人旅行者、富裕層、投資家などに限られ、全体の底上げは期待できないだろう。

また、相場価格の動向が経営に大きく関わってくるため、素材価格の高騰が損益面でのマイナス要因となるケースも考えられる。貴金属・宝飾品DIはしばらく現状の水準で推移することになりそうだ。


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