農業の倒産、2023年度は過去最多81件に 急増の背景は? TDB調査
株式会社帝国データバンク(以下:TDB)は2024年6月9日、「農業」の倒産発生状況について調査・分析結果を公表した。本記事では一部内容を抜粋して紹介する。
調査概要
◆集計期間:2024年5月31日まで
◆集計対象:負債1000万円以上法的整理による倒産
◆調査機関:株式会社帝国データバンク
◆出典元:「農業」の倒産動向(2023年度)(株式会社帝国データバンク)
農業関連業者の倒産は過去最多を記録
2023年度における農業関連業者の倒産は、2000年度以降で最多となる81件を記録。これまで最多だった2022年度(64件)から26.6%の大幅増となった。
元来、農業は事業初期段階での設備投資に伴う借入金負担が重く、新規就農への支援措置が終わってから収益化が進むまでの資金繰りがタイトになりやすい。
実際、本調査においても業歴別で「5~10年未満」が最多の22件(構成比27.2%)を占めた。コロナ禍前に創業したものの、事業計画に狂いが出た業者も多く存在している。
コロナ禍での農林漁業セーフティネット資金や、ゼロゼロ融資の返済が重荷となっている業者も少なくないことが指摘されいてる状況だ。
原料価格の高騰、燃料費の高止まりが収益を圧迫
「野菜作農業(きのこ栽培含む)」(24件、前年度比118.2%増)、「施設野菜作農業(きのこ栽培含む)」(13件、同160.0%増)の急増が全体を押し上げた。
中でもきのこの生産業者の倒産が目立ち、負債額でも上位を占める。
背景には、肥料やおがくずなど野菜・きのこ等の生産に関わる原料価格の高騰や、生産施設維持に関わる燃料費の高止まりが続いたことで、収益が圧迫されたことがあげられるという。
2024年度に入り4月の件数は1件に留まったものの、5月は10件と単月としては過去4番目の高水準に。また、負債総額は124億5500万円と、神明畜産やイセ食品グループの大型倒産が発生した2022年度(867億1400万円)と比べると減少したものの、単月としては過去7番目の水準となった。
こうした厳しい状況に対して、2024年5月29日には「食料・農業・農村基本法」の改正案が参議院本会議で可決・成立。農業だけでなく食品製造、流通などが連携し、適正な利益確保が実現できる食料システムの好循環を生み出す動きも進んでいる。予断を許さない状態ではあるが、様々な取り組みによる早急な事態の好転が望まれるだろう。