デジタルマーケターは「オフラインの成功体験」に学べ!~「D2Cの会」フォーラム2024 レポート
2024年6月13日、株式会社売れるネット広告社が主催する「D2Cの会」による大規模リアルイベント『D2Cの会』フォーラム2024が、ヒルトン東京お台場で開催された。「ともにD2Cの成功ノウハウを学び、ともにD2Cの売上を劇的にアップさせる未来を創る」をテーマに、D2C企業の大物経営者たちが売上を劇的にアップするノウハウを披露。その一部をレポートする。
デジタルマーケターは「オフラインの成功体験」に学べ!
オープニングセッションには株式会社売れるネット広告社 代表取締役社長 CEO 加藤公一レオ氏が登壇。「デジタルマーケターは『オフラインの成功体験』に学べ!」という逆説的なテーマで、売れるノウハウの見つけ方を紹介した。
加藤氏がD2Cの世界に入ったのは今から22年前。2010年に売れるネット広告社を立ち上げ、これまでの14年間で数百億円以上の広告費をかけて、2600回以上のA/Bテストを実施してきた。その中から10社以上で効果が良かったものを「最強の売れるノウハウⓇ 」と定義し、同社サービスに全乗せすることで、平均4.2倍、最大で18倍の広告費用対効果を改善してきたという。
だが意外なことに、その「最強の売れるノウハウⓇ 」のほとんどが、新聞やチラシなどのオフラインの成功ノウハウをヒントに、オンラインにアレンジしたもの。「オンラインマーケティングの歴史はまだ浅いが、オフラインのダイレクトマーケティングの歴史は100年以上ある。オンライン系の話だけ聞いても、似たようなアイデアしか出てこない。D2Cビジネスを成功に導くためには、いかにオフラインの成功例をオンラインに応用するかだ」と力説した。
例えば、ネットでサブスク商品を販売する場合、顕在的な需要がある人しか申し込まない。そこでヒントになるのが、街頭やイベント会場などでのサンプリング配布。無料サンプルや500円程度のモニターで潜在的な需要を掘り起こし、ランディングページ(LP)に誘導してサブスク商品を買いたくなるようにする(「ツーステップマーケティング」)。
また折り込みチラシの効果が高いのは、カタログのように網羅するのではなく、特定の商品の商品名・写真・特徴・特典などを、一目で理解できる1枚のチラシにまとめているから。その成功ポイントをオンラインに応用し、広告専用LPのリンク先を、本サイトの商品詳細ページではなく、「お申し込みの誘導」のみを意識した広告専用LPにし、LPの下に申し込みフォームを設けることでコンバージョン率をアップさせられるという。
また逆に、オンラインをオフラインに応用する方法も効果が高い。オフライン媒体でA/Bテストをするには高額な費用と手間がかかるが、安価かつ簡単にできるオンライン媒体でA/Bテストを実施し、そこで一番効果が高い広告クリエイティブをオフライン媒体でも活用することで、広告キャンペーンの効果を最大化できるという。
新規の集客を1年で13倍にした「強いチーム」の作り方を伝授
株式会社北の達人コーポレーション 代表取締役社長 木下勝寿氏は、新規の集客を1年で13倍まで伸ばした自社の経験から、強いチームの作り方を紹介。まず現在のD2C業界の状況を、「多くの企業が“売れている広告”をお手本にして作っているために、広告の同質化が起こり、消費者に飽きられているのであって、需要に対して供給が上回っているわけではない」と指摘。
北の達人コーポレーションでは一昨年の年商98億円が1年で146億円まで伸びたが、新しい商品がヒットしたわけではなく、5年以上前に発売した商品が売り上げを伸ばしているという。「皆さんの商品一つひとつが違うのだから、商品のオリジナリティをしっかり伝えられるようなチーム体制を作ることができれば、売上は伸びていくことをこの数年間取り組んだ結果、痛感した」と語った。
北の達人コーポレーションは2016年から2020年にかけて、WEBマーケティングを武器に売り上げを20億円から100億円へと一気に拡大。だが広告を作るクリエイターがスキルを身につけることができないまま組織が急激に拡大したため、どんどん業務のクオリティが下がり続け、2020年後半には生命線である「新規集客」が伸び止まった。2021年12月には集客が最盛期の1000人から160人まで下落し、「震えが止まらなかった」と木下氏は振り返る。
そこから既存のやり方をすべて見直し、「強いチーム作り」を目指して組織を一新。「職務定義の刷り込み誤認」「お手本依存症」「職務の矮小化現象」「数字万能病」「フォーマット過信病」という5つの「企業組織病」を解決するために、
①KPI(重要達成度指標)
②教育の仕組み
③共通言語化
④タスク管理
⑤風土
という5つにポイントを置き、組織改革を行った。
「KPIをわかりやすく数字で見える化して設定することで、スタッフは非常に動きやすくなり、部分最適化が加速する。また新人が悪しき既存のやり方を身につけないよう、新人だけのチームを作った。さらに研修を通して、チーム内の『共通言語』を作ることで、意思疎通のズレが起こらないようにした」(木下氏)。
もうひとつ重要なのが、組織全体を前進させるようなチームリーダーを選ぶことで、部下を大きく成長させることができたという。このような施策を重ね、2022年10月には、3年3カ月ぶりに1日1020人の新規集客に成功し、その3カ月半後には過去最高の1日3426人の新規集客数を記録したという。
イベントでは300名を超える参加者がセッションを聴講。セッション間のネットワーキングタイムでは名刺交換や情報交換が活発に行われ、全セッション終了後には懇親会でも盛んな交流が見られた。