猛暑やインバウンド消費の景気への影響は? TDB景気動向調査

ECのミカタ編集部

国内景気は4カ月ぶりに好転 金融市場は大きく揺れ動いたものの、猛暑やインバウンド消費が押し上げ

株式会社帝国データバンクは2024年7月18日から7月31日までの景気動向調査を行い、その結果を公表した。ここでは、業界別の景気動向に絞って紹介する。

調査概要

◆調査期間:2024年7月18日~7月31日(インターネット調査)
◆調査対象:2万7191社
◆有効回答:1万1282社(回答率41.5%)
◆調査機関:株式会社帝国データバンク
◆出典元:2024年7月の景気動向調査(株式会社帝国データバンク)

2024年7月の景気DIは4カ月ぶりに改善

株式会社帝国データバンク(以下:TDB)によると、2024年7月の景気DI(※1)は前月比0.5ポイント増の43.8となり、4カ月ぶりに改善。国内景気は、猛暑の効果やインバウンド消費などがけん引してプラス方向に転じた。

外国為替レートが1ドル=161円台から149円台まで変動したほか、株価も5000円近く上下するなど、金融市場は揺れた。しかし、猛暑によるエアコンの特需やアルコール消費の増加など季節需要が急拡大したほか、好調なインバウンド消費も景気のプラス材料になったと、TDBの発表では分析されている。

さらに、自動車生産の復調や旺盛なDX需要、都市の再開発事業なども好材料。一方、消費者の節約志向の高まりが個人消費を抑制したほか、仕入単価の上昇によるコスト負担の増加、人手不足などはマイナス要因となった。

※1:景気DIとは全国企業の景気判断を総合した指標のことで、50を境にそれより上であれば「良い」、下であれば「悪い」を意味する

【業界別の景気】猛暑のなか季節需要が押し上げ要因に

ここからは各業界別の景気DIについてまとめる。

◆サービス(50.0):前月比0.8ポイント増、4カ月ぶりに改善
「飲食店」(同1.3ポイント増)は、堅調なインバウンド需要に加えて、暑い日が続くなかビアホールなどの景況感が大幅に上向いた。旺盛なDX需要が続いている声の多い「情報サービス」(同横ばい)は2年10カ月連続で50台を維持。消費者の節約志向、新型コロナの再拡大などマイナス材料もあるが、15業種中11業種が改善した。

◆小売(40.3):同横ばい
猛暑の影響でエアコン商戦が活況な「家電・情報機器小売」(同2.9ポイント増)は2カ月連続で改善。一方、節約志向による来店頻度や購入点数の減少、嗜好品の消費減退などから「飲食料品小売」(同1.3ポイント減)は4カ月連続の悪化となった。

◆製造(39.8):同0.4ポイント増、2カ月連続で改善
金型や電子部品の受注に回復の兆しがみえる「鉄鋼・非鉄・鉱業」(同1.0ポイント増)は7カ月ぶりに改善。一方、低調な国内消費や原材料価格の高止まりなどが悪材料となり、「繊維・繊維製品・服飾品製造」(同1.2ポイント減)は4カ月連続で落ち込んだ。

◆建設(46.9):同0.5ポイント増、2カ月連続で改善
大都市圏での再開発工事、再エネ工事などがプラス材料に。また、災害復旧工事や防災工事、老朽化対策なども押し上げ要因となった。一方、2024年問題に起因する技術者不足や建設コストの上昇などは下押し材料となっている。

今後は横ばいで推移すると見込まれる

今後の見通しとして、同社では「インフレ率を上回る賃上げや、政策金利の追加利上げとそれにともなう市場金利の上昇、設備投資への動きなどが注目される」と示している。インバウンド消費のほか、自動車の生産拡大、生成AIの発展を受けたグローバルな半導体需要の増加、さらに人手不足に対するロボットの導入などはプラス材料になるだろう。

一方、TDBはエネルギー価格の高騰や物流コストの増加、家計の節約志向、新型コロナの再拡大、地政学的リスクなどはマイナス材料となると指摘。今後の景気について、総じて回復傾向のみられる企業業績がプラスとなる一方で不確実な要因も多く、横ばいで推移すると見込まれるとした。

2024年7月は記録的な猛暑により、一部業界で特需が発生。エアコンや飲料の売れ行き、タクシーの利用などが好調になった一方、「暑すぎて人が動かない」という声もあった。季節商材のキャンペーンなど、消費者ニーズを捉えた施策がより重要になる。常に視野を広げた対策を心がける必要がありそうだ。


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