コスト上昇分を販売価格、サービス料金に転嫁できている割合は? 帝国データバンク調査

ECのミカタ編集部

価格転嫁率、過去最高の 44.9% 4.3 ポイント上昇も業種間で格差広がる

株式会社帝国データバンク(以下:TDB)は2024年8月28日、「価格転嫁に関する実態調査」の結果を公表した。本記事では一部内容を抜粋して紹介する。

調査概要

◆調査期間:2024年7月18日~31日
◆調査対象:全国2万7191社
◆有効回答企業数:1万1282社(回答率41.5%)
◆出典元:価格転嫁に関する実態調査(2024年7月)(株式会社帝国データバンク)

8割近くが「多少なりとも価格転嫁できている」と回答

自社の主な商品・サービスにおいて、コストの上昇分を販売価格やサービス料金にどの程度転嫁できているかを尋ねたところ、コストの上昇分に対して「多少なりとも価格転嫁できている」企業は78.4%と8割近くにのぼった。内訳としては以下の通り。

◆2割未満:19.6%
◆2割以上5割未満:18.6%
◆5割以上8割未満:20.2%
◆8割以上:15.5%
◆10割すべて転嫁できている:4.6%

一方で「全く価格転嫁できない」企業は10.9%と前回調査(2024年2月)から1.8ポイント減少。「厳しい競争環境があり、コストを転嫁すれば顧客を失ってしまう」(機械・器具卸売、愛媛県)などの意見もあり、依然として全く価格転嫁ができていない企業が1割を超えている。

「運輸・倉庫」の価格転嫁率は3割台に到達

また、コスト上昇分に対する販売価格への転嫁度合いを示す「価格転嫁率」は44.9%となった。これはコストが100円上昇した場合に44.9円しか販売価格に反映できず、残りの5割以上を企業が負担していることを示している。

企業からは、「価格高騰がユーザー目線でも一般化してきたため、価格転嫁が進んでいる」(建設、熊本県)「原材料価格の高騰に対して、販売先と認識を共有できている場合は、価格転嫁をしやすい」(機械・器具卸売、東京都)といった声が聞かれ、値上げに対する社会全体の受け入れや取引先の理解などによって、2024年2月の前回調査(40.6円)から4.3円分転嫁が進展した。

また、サプライチェーン別に価格転嫁の動向をみると、前回調査と比較して、改善幅は小さいものの全般的にやや価格転嫁は進展している。とりわけ、サプライチェーン全体に関わる「運輸・倉庫」(34.9%)は3割台に到達した。

企業からも「物流の2024年問題の後押しもあり、取引先との交渉がスムーズにいくことが多い」(運輸・倉庫、愛知県)といった声が聞かれ、2024年問題への対応が追い風になっている様子がうかがえた。

価格転嫁で格差が広がる

本調査の結果、自社の商品・サービスのコスト上昇に対して、8割近い企業で多少なりとも価格転嫁ができており、価格転嫁率は44.9%と前回から4.3ポイント上昇したことが明らかとなった。

取引先への丁寧な説明などを通じてしっかりと転嫁ができている企業が増えたものの、依然として企業負担の割合は5割を超えている。価格転嫁に対する理解は浸透し、実際に転嫁が少しずつ進んでいるものの、原材料価格の高止まりや人件費の高騰などに加え、同業他社の動向、消費者の節約志向も相まって、「これ以上の価格転嫁は厳しい」といった声も多数寄せられている。

顧客離れを危惧するなど、業種間で価格転嫁に格差が広がりつつある。事業者は各業界の動向を注視しつつ、適切な対応を行う必要があるだろう。


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