楽天の最強配送のメリット・デメリットは?配送品質向上制度について解説
2024年7月より配送品質向上のためにスタートした楽天の最強配送ラベル。
購入転換率が上がるメリットがある一方で、考慮すべきデメリットもあり、すべての出店者や商品にマッチするわけではありません。
あらかじめ最強配送ラベルの獲得条件を把握しておけば、正しくサービスを活用できるようになるでしょう。
今回は、最強配送ラベルのメリットやデメリット、配送品質向上制度について解説します。なお、この記事では2024年9月時点の情報を掲載しています。
楽天市場の最強配送とは
楽天市場の最強配送とは、以下3つの要素をカバーした商品にのみ付与されるラベルです。
- 12時までの注文で翌日にお届け
- お届け日時を選べる
- 3,980円以上の買い物で送料無料
配送に関するニーズをクリアしている証明になるため、転換率の向上や競合との差別化につながります。
以下で、最強配送ラベルの詳細について見ていきましょう。
そもそも、配送品質向上制度とは
配送品質向上制度とは、楽天を利用するユーザーにより良い配送体験を提供するための取り組みです。
これによりユーザーは迅速な配送や日時指定などのオプションを選択できます。
例えば、最強配送ラベルが付いた商品の場合、注文日の翌日に商品を受け取ることが可能です。
これまで、当日配送や多様な配送オプションが利用できるAmazonと比較すると、楽天市場は配送の利便性が劣っていました。
最強配送ラベルを付与することで、さまざまなユーザーニーズに対応し、ECモールとしての競争力を高める効果も期待されています。
最強配送の開始時期
楽天の配送品質向上制度および最強配送ラベルの付与は、2024年7月1日から正式にスタートしました。
SKUの対応自体は2023年4月から始まっており、同年6月からお届け日表示機能への対応も開始しています。
あす楽との違い
楽天市場には従来「あす楽」という翌日配送のサービスがありましたが、最強配送の登場に合わせて終了しています。
どちらも「商品が翌日届く」という点で共通していますが、具体的にどのような違いがあるのでしょうか。
あす楽と最強配送の違いは、自動的に翌日配送が適用されるかどうかです。
あす楽 | 自動的に翌日配送が適用される |
---|---|
最強配送 | ユーザーが日時指定した場合のみ翌日配送が適用される |
上記の通り、あす楽は選択不要で自動的に翌日配送が適用されます。
対して、最強配送はユーザーが日時指定した場合に限り、翌日配送される仕様です。
この背景には、ユーザーのニーズに応えながらも、配送業者や出店者に過度な負担をかけないよう、配慮された仕組みがあると考えられます。
あす楽の場合、急ぎでないユーザーの注文も翌日配送に対応する必要がありましたが、最強配送により、ユーザーが任意で日時指定できるようになりました。
これによりユーザーと運営側のバランスが取れ、無駄な負担を軽減できるようになっています。
出典:Rakuten最強配送|楽天市場
楽天市場の最強配送のメリット・デメリット
楽天市場の最強配送を利用すると、どのようなメリットとデメリットがあるのでしょうか。
ここでは、最強配送を活用して得られるメリットと、考慮すべきデメリットについて見ていきましょう。
メリット
最強配送で得られるメリットは次の通りです。
- 検索順位の向上が期待できる
- 購入転換率が上がる
- 同業他社と差別化できる
それぞれ解説します。
検索順位の向上が期待できる
楽天市場の検索アルゴリズムは公表されていませんが、順位決定の要素の1つに、「検索キーワード毎の商品の人気度」があります。
商品の人気度につながる要素として、最強配送に対応することは、検索順位が向上する要因として考えられるでしょう。
そして、検索順位の向上によって自社商品をより多くの人に認知してもらいやすくなります。
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購入転換率が上がる
最強配送ラベルを獲得すると、購入転換率が上がるメリットもあります。
あす楽が終了した今、すぐに商品がほしいユーザーにとって、最強配送ラベルは購入を決める1つのキッカケになるでしょう。
また、最強配送ラベルの安心感から、ショップ内の回遊率が上がり顧客1人あたりの購入額が向上する効果も期待できます。
同業他社と差別化できる
最強配送ラベルは、同業他社と差別化できるメリットもあります。
楽天市場はAmazonと比較して、翌日配送や土日祝日の配送に対応しているショップが少ないです。
商品ページ一覧で他社と比較される際も、最強配送のラベルがあれば選ばれる要因になりやすいでしょう。
数ある商品の中から自社を選んでもらうためにも、最強配送を武器として活用すべきといえます。
デメリット
最強配送で考慮すべきデメリットは以下の通りです。
- 土日祝も発送作業に対応する必要がある
- 配送コストが増える可能性がある
それぞれ解説します。
土日祝も発送作業に対応する必要がある
最強配送ラベルを獲得するには、曜日に関係なく配送業務に対応しなければなりません。
企業によっては組織体制を見直す必要もあるため、ハードルが高いと感じる方もいるでしょう。
自社で対応できない場合は、楽天スーパーロジスティクス(RSL)を活用する方法もあります。
ただし、冷凍や冷蔵には対応していないため、Amazonのマルチチャネルや外部倉庫と連携するなどの対策も必要です。
配送コストが増える可能性がある
最強配送に対応する場合、配送に関するコストが増える可能性があります。
例えば、土日祝日に配送作業を行う際の人件費や、倉庫を稼働させるための光熱費などもかかってくるでしょう。
休日出勤として賃金が割増になるケースも考えられます。
作業を外部に委託する場合は外注費がかかってくるでしょう。
オーダーメイド生産や生鮮商品などは、注文が入ってから対応しなければならないため、より多くのコストがかかる可能性が高いです。
結果的に利益率が下がってしまうケースも考えられるので、最強配送ラベルを獲得すべき商品の選定は慎重に行うようにしましょう。
楽天市場の最強配送ラベル獲得の条件
最強配送ラベルを獲得するには「店舗基準」と「商品基準」の2つの条件を満たす必要があります。
ここでは各条件をクリアする基準について見ていきましょう。
店舗基準①納期遵守率96%以上
店舗基準1つ目の条件は、「納期遵守率が96%以上であること」です。
日時指定ありの注文の納期を96%以上に保てていれば、納期遵守率の判定基準を満たします。
ポイントは実際に購入者の手元に届いた日ではなく、商品を発送した日で判定している点です。
納期に間に合うように商品が発送されていれば、納期遵守率を低下させる要因にはなりません。
店舗基準②6日以内お届け件数比率80%以上
店舗基準2つ目の条件は、「すべての注文の80%以上が6日以内に発送できていること」です。
納期遵守率と同じく、お届け日ではなく発送日を基準に判定しています。
店舗基準③出荷件数100件/月以上
店舗基準3つ目の条件は、「月間の出荷件数が100件以上あること」です。
ただし、以下の条件に当てはまる場合、直近12ヶ月の出荷件数が500件以上であれば例外として基準を満たしたとみなされます。
- 前月平均客単価が5万円以上
- 直近12ヶ月の売上総額のうち特定の1ヶ月だけで3割以上を占める
店舗基準④共通の送料込みラインの導入
店舗基準4つ目の条件は、「共通の送料込みラインを導入していること」です。
具体的には、税込3,980円以上で送料無料と設定されていれば基準を満たしています。
商品基準①午前の注文:いつでも「翌日お届け」指定可
商品基準1つ目の条件は、「午前中までの注文は、翌日のお届け指定を可能にすること」です。
具体的には12時までの注文分が、翌日配送に対応する必要があります。(土日祝は午前9時までです。)
ただし、年末年始と月1回の休業日は除きます。
商品基準②午後の注文:いつでも「翌々日お届け」指定可
商品基準2つ目の条件は、「午後の注文は、翌々日のお届け指定を可能にすること」です。
つまり、12時までの注文は翌日、12時以降の注文は翌々日のお届けしていを可能にする必要があります。
こちらも年末年始と月1回の休業日は対象外です。
ちなみに「月1回の休業日」とは、冠婚葬祭などやむを得ない事情によって休業する場合に適用されます。
基本は配送業務に対応しなければならない点を覚えておきましょう。
配送品質向上制度では、ペナルティはある?
配送品質向上制度のガイドラインに違反した際は、楽天から店舗に対して個別に連絡が入る可能性があります。
ガイドラインに違反してしまった経緯をヒアリングしたり、再発防止に向けた指摘を受けたりするケースもあるようです。
また、楽天から指摘を受けたにもかかわらず改善が見られない場合は、最強配送ラベルを剥奪するペナルティを受けることもあります。
違反の内容や程度によっては出店規約違反となり、より厳しいペナルティを受ける可能性もあるので、配送品質向上制度のガイドラインに目を通しておきましょう。
出典:店舗運営システム「RMS」とは|楽天市場
楽天市場の最強配送に関するトラブル
楽天市場で最強配送ラベルがついた商品を購入したものの「商品が届かない」や「到着が遅い」といったトラブルも考えられます。
店舗から商品が発送されているにもかかわらず、遅延や未着が発生している場合は、以下の点を確認してみてください。
- 日時指定されていない
- 天災や事故で配送業者に遅延が発生している
- 決済が完了していない
- 不在や受取拒否になっている
- お届け先住所が最強配送の圏外だった
- お届け先情報に不備があった
- 営業所止めになっている
よくあるトラブルとしては「購入時に日時が指定されていなかった」という問題です。
あす楽を利用していたユーザーのなかには「日時指定しない = 最短のお届け」と考える人もいるでしょう。しかし、最短を指定しなければ、その日に届かないこともあります。
また、購入者の登録住所とお届け先住所が違うときも注意しなければなりません。
購入者は自分のアカウント情報で最強配送ラベルがついた商品を購入します。しかし、お届け先が最強配送の圏外であれば、翌日配送にはならないことがあります。(最強配送ラベルがついていなくても、もとから翌日配送に対応している店舗もあります。)
ユーザーが仕組みを理解するまではトラブルも起きやすいです。店舗側のミスでない場合は、購入者に対して最強配送の概要を理解してもらえるよう、参考リンクを添付するなどの対応をするようにしましょう。
【FAQ】楽天市場の最強配送に関するよくある質問
楽天市場の最強配送に関するよくある質問についてまとめました。
最強配送が適用されるエリアは?
最強配送が適用されるエリアは、配送先住所と選択する配送業者によって異なります。
離島や山間部などは対応していないケースが多いです。
ユーザーの混乱を招かないためにも、あらかじめ自社の配送方法で最強配送に対応しているエリアがわかるような画像を作成し、店舗トップや商品ページに挿入しておくとよいでしょう。
最強配送での土日の扱いは?
最強配送では土日の発送作業にも対応する必要があります。
基本的に、年末年始と月1回の休業日以外は最強配送の対象です。
土日祝日も発送業務を止めることはできないため、事前に体制を整えておく必要があるでしょう。
最強配送の担当配送業者はどこ?
楽天では以下の配送方法が最強配送の対象としています。
- 宅配便
- クール便
- クール冷凍便
- 小型宅配便
- 大型宅配便
- 宅配便[特定送料]
- 追跡可能メール便
- 追跡可能メール便[特定送料]
上記の配送方法が最強配送の対象になるので、ヤマト運輸、佐川急便、日本郵便といった主要な配送業者であれば問題ないでしょう。
最強配送はキャンセル可能?
最強配送で最短の日時指定された商品は、購入者側でキャンセルできない仕組みになっています。
もしも購入者からキャンセルの問い合わせがあった際は、店舗側で適切な判断を行うようにしましょう。
出典:【最強配送】よくあるご質問|楽天市場
最強配送ラベル獲得のために有効な施策
最強配送ラベルを獲得するために有効な施策は以下の通りです。
- 土日祝日の運用体制を構築する
- OMSを導入する
- RSLを活用する
土日祝日の運用体制を構築する
注文処理と発送業務を自社で行う場合は、土日祝日の運用体制を見直す必要があります。
企業によっては土日祝日が完全休業になっていることもあるでしょう。
最強配送に対応するためには、リソースを確保して適切な運用体制を構築することが大切です。
例えば、パート・アルバイトのみで業務を完了できるようにしたり、属人化を防ぐためにマニュアルを作成したりなどが考えられます。
テスト運用で出荷数やスタッフへの負荷を確認し、業務効率とコストのバランスを取っていきましょう。
もちろん、アウトソーシングもおすすめです。
OMSを導入する
OMSとは「Oder Management System」の略で、受注管理システムを意味します。
注文、在庫確認、発送依頼までを自動化できるので、限られたリソースでも効率的な運用体制を構築可能です。
例えば、OMSと外注業者を利用すれば、土日祝日に自社で発送業務に対応する必要がなくなります。
利用者の多いOMSとしては、BOSSやネクストエンジンなどが挙げられます。
注文数が多くなるほど人為的ミスも増えやすいので、最強配送のトラブルを最小限にするためにも、OMSを導入しておくとよいでしょう。
RSLを活用する
RSLとは「楽天スーパーロジスティクス」の略で、楽天グループが提供する物流サービスです。
Amazon FBAのように商品の入荷作業、保管、発送作業などを一括して引き受けてくれます。
例えば、BOSSとRSLを連携させることで、受注から発送まで全自動で行えるようになります。
自社で対応する必要がなくなるため、土日祝日でも関係なく商品を発送できるような体制を構築可能です。
ただし、RSLは2024年9月時点で冷凍・冷蔵の商品に対応していません。
商品によって向き不向きがあるので、自社の用途に合っているかは事前に確認しておきましょう。
最強配送含め、楽天市場の運用はプロの力も借りるのがおすすめ
楽天市場の最強配送は、出店者とユーザーの双方にとってメリットのあるサービスです。
しかし、自社に適した運用体制を見極めるのが難しい側面もあるため、単純に最強配送へ対応しただけでは売上が落ちてしまう可能性もあります。
楽天のEC運営で成果を上げていくには、OMSの導入やRSLの活用、どのような商品で最強配送を活用すべきかなど、自社に合った戦略設計が欠かせません。
「最強配送について自社が取るべき対応を教えてほしい」
「より効率的な運用ができないかアドバイスがほしい」
その場合は、楽天のEC運営に精通したプロの知見を活用するのがおすすめです。
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