コールセンターにおけるAI活用まとめ。AI導入事例も詳しく解説
コールセンター業務はAIの導入により、業務の効率化や顧客対応の迅速化などが可能になり、1つの転換点を迎えています。一方で、導入における課題もあります。
本記事では、コールセンターにおけるAI活用について、メリット・デメリット、具体的な導入プロセス、そして実際にAIを導入した企業の成功事例まで紹介します。
なお、この記事では2024年9月時点の情報を記載しています。
AIを活用したコールセンターとは
AIを導入したコールセンターは、従来の人間オペレーターに加え、AI技術を活用することで迅速で正確な対応が可能になります。
音声認識やチャットボットなどを用いて、基本的な問い合わせに対応し、複雑な内容は人間のオペレーターに引き継ぎます。
これにより、効率的な対応と顧客満足度の向上が期待できるでしょう。
AIを活用したコールセンターの市場規模
AIコールセンター市場では、2018年からAIの導入が進み、2019年度には18億円の規模に達しました。
2020年度は新型コロナウイルスの影響でオペレーター業務の自動化ニーズが高まり、市場規模は29億5,000万円に拡大。
2021年度にはさらに139%成長し、41億円に達すると予測されています。今後も、業務の自動化や非接触チャネルへの対応ニーズを背景に、AIサービスの導入は増加が見込まれます。
参考:コールセンター事業者が提供するAIサービス市場調査を実施(2021年) | 矢野経済研究所
AI導入により、コールセンター自体がなくなる可能性はある?
結論として、将来的にコールセンターがなくなる可能性は否定できません。しかし現状は、AIがコールセンター全体に置き換わることは、まだないといえます。
AIは人間に代わって一部の業務を効率化しますが、感情的な対応や複雑な問題解決には、まだまだ人間の介入が不可欠です。
あくまでAIはオペレーターを補完するツールであり、顧客対応の質を向上させるものであるという認識を持つとよいでしょう。
コールセンターでAIを導入するメリット・デメリット
この章では、AIの導入がもたらす具体的なメリットと、考慮すべきデメリットについて詳しく解説します。
どちらの側面も踏まえ、AIをどのように活用すべきかを検討しましょう。
メリット
AIを導入することで、コールセンターは顧客対応の効率化が大幅に進みます。
自動応答やチャットボットを活用することで、問い合わせへの迅速な対応が可能になり、オペレーターの負担が軽減されます。
また、人間では難しい24時間対応が可能となり、顧客満足度の向上にもつながります。
さらに、AIはビッグデータを活用して顧客のニーズを分析し、パーソナライズされたサポートを提供することも可能です。
デメリット
一方で、AI導入には初期コストがかかり、設定や運用には専門的な知識が必要です。事前にある程度戦略を立てねば、せっかくAIを導入してもマイナスの影響が発生する可能性があります。
また、AIでは複雑な対応や感情的なケアが難しく、コールセンター業務では人間のオペレーターが必要な場面もあります。
完全に自動化された対応は、顧客にとって冷たい印象を与える可能性があり、顧客満足度を下げるリスクもあるのです。
コールセンターで活用できるAIの種類
以下に、コールセンター業務に活用できるAIの主な種類とそれぞれの特徴をまとめました。
AIの種類 | 特徴 |
---|---|
音声認識AI |
顧客の発言をリアルタイムで分析し、 自動でテキスト化 |
自動応答システム | FAQや定型的な問い合わせを自動で処理 |
感情解析AI |
顧客の声のトーンや感情を解析し、 対応方法を提案 |
データ分析AI |
大量の顧客データをもとに行動予測や サービスの改善をサポート |
それぞれ解説します。
音声認識AI
音声認識AIは、顧客が話した内容をリアルタイムでテキスト化し、オペレーターの負担を軽減します。
さらに、過去の会話履歴をもとに自動的にレコメンド(適切な対応のアドバイス)を行うことで、効率的な対応が可能になります。
自動応答システム
AIチャットボットや音声応答システムは、よくある問い合わせや簡単な質問に対応します。
これにより、オペレーターは、人間が対応すべき高度な問題に特化して集中できるようになります。
感情解析AI
顧客の感情を声のトーンや言葉から分析し、オペレーターに対応方法の指示を出します。
感情に基づいた適切な対応を行うことで、顧客満足度の向上をサポートします。
データ分析AI
データ分析AIは、顧客データや過去の問い合わせ履歴を解析し、顧客の行動予測や傾向分析を行います。
これにより、コールセンターは適切なタイミングで顧客対応を行ったり、問題解決の精度を高めたりすることができます。
コールセンターにAIを導入するためのプロセス
AIを活用したコールセンターの導入には、慎重なプロセスと計画が必要です。
この章では、AIを導入する際の具体的なプロセスや手順を詳しく解説し、スムーズな導入を実現するためのポイントを紹介します。
- AI導入の目的を明確にする
- 適切なAIツールの選定
- 導入計画とスケジュールの策定
- 既存システムとの統合テスト
- スタッフのトレーニング
- 段階的な運用開始
- 効果のモニタリングと改善
1)AI導入の目的を明確にする
AIをコールセンターに導入する際は、まず目的を明確にすることが重要です。
業務の効率化やコスト削減、顧客満足度の向上など、目指すべき成果を定義することで、適切なAIツールやシステムを選択しやすくなります。
目的が不明確なまま導入を進めると、AIが十分に活用されず、期待していた成果を上げられない可能性があります。
2)適切なAIツールの選定
AIツールの選定は、コールセンターのニーズに合わせて行う必要があります。チャットボット、音声認識システム、データ分析AIなど、導入するAIの種類や機能を慎重に選びましょう。
また、ツールの選定では、導入後の拡張性やサポート体制、導入コストも考慮し、長期的な運用に適しているかを確認することが重要です。
3)導入計画とスケジュールの策定
AIを導入する際は、スムーズな移行を実現するために、具体的な計画とスケジュールを立てることが求められます。
システムの統合テストや、スタッフのトレーニングなど、各プロセスに必要な時間を見積もり、段階的に導入していくことで、業務への影響を最小限に抑えることができます。
スケジュールに沿って進捗管理を行い、導入を確実に成功させるための基盤を整えましょう。
4)既存システムとの統合テスト
AI導入後のスムーズな運用には、既存のコールセンターシステムとの連携が不可欠です。
統合テストでは、データのやりとりやAIによる自動応答の精度を確認し、システムが互いに正しく機能しているかをチェックします。
これにより、導入後のトラブルを未然に防ぎ、安定した運用を実現できるでしょう。
5)スタッフのトレーニング
AIを活用するためには、コールセンタースタッフのトレーニングも重要です。AIがどのように業務に組み込まれるのかを理解し、AIの操作や活用方法を学ぶことで、より効率的な業務が遂行できます。
特に、AIの助けを借りて複雑な問題解決を行う場合、スタッフがそのプロセスに精通していることが成功の鍵となります。
6)段階的な運用開始
AI導入は一度に全体で行うのではなく、段階的に進めるのが効果的です。
小規模なテスト運用を行い、AIの性能やシステムとの相性を確認した後、徐々に運用範囲を広げていきます。
これにより、問題が発生した場合でも即座に対応でき、リスクを抑えたスムーズな導入が可能です。
7)効果のモニタリングと改善
AI導入後は、定期的にその効果をモニタリングし、必要に応じて改善を行います。
KPIを設定し、顧客対応の迅速さや満足度の向上、コスト削減など、導入前に定めた目的が達成されているかを評価しましょう。
AIは進化する技術であるため、運用中も常に改善の余地を探り、最適な運用方法を見つけることが大切です。
コールセンターのAI導入にかかる費用の目安
以下は、コールセンターにおけるAI導入にかかる費用の相場を項目ごとにまとめた表の一例です。
AIの種類や規模により費用は変わりますが、以下の項目に基づいて費用が発生することが一般的です。
AIの種類 | 導入費用の相場(初期費用) | ランニングコスト(年間) | 備考 |
---|---|---|---|
チャットボットAI | 50万〜300万円 | 20万〜100万円 | 導入規模によって変動 |
音声認識AI | 50万〜300万円 | 50万〜200万円 | 精度に応じた費用が発生 |
データ分析AI | 100万〜500万円 | 100万〜300万円 | 分析範囲やデータ量による |
顧客対応AI | 300万〜1000万円 | 200万〜500万円 | フルカスタマイズ対応だと高額に |
コールセンターでのAI導入・活用事例
近年、さまざまな企業がコールセンターにAIを活用して、自動応答システムやデータ分析ツールを導入し、従業員の負担軽減とコスト削減を実現しています。
ここでは、コールセンターのAI導入の成功事例を紹介します。
JCB
JCBは、IBM Watsonを活用した対話型自動音声応答システム「AIオペレーター」を導入し、顧客対応を効率化しています。
AIオペレーターは、音声認識や自然言語処理技術を利用し、顧客からの問い合わせを自動で分析・回答したり、適切なオペレーターに転送することで、従来のメニュー番号選択を省略し、待ち時間の短縮やストレス軽減を実現しています。
2022年時点では、今後、年間190万件の問い合わせに対応する計画です。
参考:JCB、コールセンターに IBM Watson を活用した対話型自動音声応答システム「AI オペレーター」を導入|株式会社ジェーシービー
みずほ銀行
みずほ銀行は、PKSHA Technologyと協力し、次世代コンタクトセンターシステムを構築しました。このシステムはAIを活用し、オペレーター支援、自己解決支援、コンタクトセンターの業務デジタル化に焦点を当てています。
AIによるマニュアルサジェストや音声認識技術を駆使し、応対品質を向上させるほか、24時間対応のAI窓口を提供し、顧客の利便性を高めています。これにより、迅速かつ高度な顧客サポートが実現されています。
参考:次世代コンタクトセンターシステムをリリース(MIZUHO DX)|みずほフィナンシャル・グループ
損害保険ジャパン
損害保険ジャパンは、NTTコミュニケーションズの対話型AI「COTOHA Voice DX Premium」を導入し、1時間あたり最大3,000件の保険金請求を受け付ける体制を構築しました。
AIは災害時に顧客の情報を収集し、自動的にシステムに登録、電話が混雑した際も対応可能です。
また、クラウドサービスを活用し、災害時の高負荷に耐える仕組みを実現しました。AIの導入で顧客対応の効率化と利便性向上が進んでいます。
参考:
【世界最大級・日本初】損保ジャパン、コールセンターに NTT Com の対話型 AI を導入 世界最大級の受電体制を実現 ~首都直下地震を見据え、最大で 1 時間あたり 3,000 件の受付を可能に~ | 損害保険ジャパン株式会社、NTT コミュニケーションズ株式会社
コールセンターに AI を活用した音声認識自動応答システムを導入~お客さまのご用件を AI が理解し、音声で自動受付~ | 損害保険ジャパン日本興亜株式会社
ヤマト運輸
ヤマト運輸は、法人向けの集荷依頼にAIオペレーター「LINE AiCall」を導入し、電話応対を自動化しました。これにより、コールセンターの待ち時間を大幅に削減し、オペレーターの負担を軽減。
AIが集荷場所や時間の要望に応じ、迅速な対応を実現しています。2023年以降、全国展開され、現在は個人顧客への対応にも拡大しています。
参考:法人のお客さまからの集荷依頼にAIオペレータを活用した電話対応を導入 | ヤマトホールディングス株式会社
東京ガス
東京ガスはコールセンター業務にAIを導入し、音声認識技術や高度な検索機能を活用して、顧客対応の効率化と満足度向上を実現しました。オペレーターの作業時間を短縮し、応答精度の向上により、年間1万1000時間の業務削減に成功しています。
また、AIを活用することで業務のばらつきを減らし、エスカレーション率も削減しています。
参考:AI導入で年間1万1000時間の応対時間削減◆コールセンター効率化の取り組み | 東京ガス
コールセンターのAI活用にはさまざまな課題も……
AIを活用することで効率化が進むコールセンター業務ですが、導入にはいくつかの課題があります。
まず、AIシステムの初期導入費用や維持管理コストが高く、導入効果が見えにくいケースが考えられます。
また、AIによる対応が顧客の細かな感情やニュアンスを捉えきれないこともあるため、クレーム処理や複雑な問い合わせには限界があることも事実でしょう。
さらに、AIに依存しすぎると、従業員のスキル向上や人間的な対応力が低下する懸念もあります。
これらの課題を解決し、効率的かつ柔軟な運用を実現するために、AIの活用と人間の手による対応のバランスを保つことが重要です。
そのため、多くの企業がAIの導入と並行して、コールセンターのアウトソーシングを検討するケースも増えています。
アウトソーシングを活用すれば、コスト管理やスキルの高い人材の確保など、多面的なアプローチが可能となり、AIと人的対応のベストバランスが取れるため、さらに効率の良い運営が期待できます。
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AIを導入することで、コールセンター業務は効率化されますが、全てを自動化するには限界があります。そのため、AIと人間のオペレーターのバランスを取ることが重要です。
さらに、コールセンター業務をアウトソーシングすることで、専門的なスキルを持った人材を確保しつつ、コスト削減や効率的な運営が期待できます。また、アウトソーシングを活用することで、AI導入の効果を最大限に引き出すことができるでしょう。
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