楽天グループ株式会社が5年ぶりに連結Non-GAAP営業利益の四半期黒字化を達成
楽天グループ株式会社(以下、楽天)が2024年11月13日、2024年12月期第3四半期の連結業績の決算を発表した。2019年第3四半期以来初で5年ぶりとなる連結Non-GAAP営業利益の四半期黒字化と、2020年第2四半期以来初となるIFRS営業利益の四半期黒字化を達成。EBITDAは前年同期比159.1%増の922億円を記録したここでは、全体の連結売上収益のハイライトとECに関わる「インターネットサービス」セグメントを中心に紹介する。
5年ぶりとなる連結Non-GAAP営業利益の四半期黒字化を達成
楽天が発表した2024年度第3四半期の連結業績によると、インターネットサービス、フィンテック、モバイルの全セグメントで増収となり、売上収益はQ3として過去最高の5667億円(前年同期比9.3%増)となった。
Non-GAAP営業利益は、「楽天モバイル」の増収及びコスト最適化による損失改善、「楽天カード」の大幅増益などを背景に123億円の黒字。MNOへの設備投資が本格化した2019年第3四半期以来初で5年ぶりとなる四半期黒字化を達成。
IFRS営業利益(国際会計基準:販管費を差し引いた後に研究開発費が独立して計上され、その他の収益や費用が計上された営業利益)は、2020年第2四半期以来初となるの四半期黒字化を達成。
EBITDA(事業活動におけるキャッシュフロー創出力を評価する指標で、Non-GAAP営業利益に減価償却費などを加算して算出)は前年同期比159.1%増の922億円を記録した。
また今年8月に発表した楽天モバイル(株)が所有する通信設備などを活用したセール・アンド・リースバックにより1700億円の資金調達を実施。楽天モバイルが当面必要となる資金を自ら確保したことで楽天グループの資金流動性も向上。インターネットサービス、フィンテック事業などからのキャッシュフローを有利子負債削減に充当することが可能になった。
この結果について、楽天グループ株式会社 代表取締役会長兼社長 最高執行役員 三木谷浩史氏(以下、三木谷氏)は「銀行資本からの追加の融資や引き当てではなく、セルフサスティナブルなプロセスができたことは、財務の健全化に大きく寄与している」と語った。
楽天モバイルの伸長が楽天エコシステムを牽引
さらに三木谷氏は、契約回線数が812万件と堅調に推移している楽天モバイルについて「楽天モバイル自体が大きな収益ビジネスであるだけでなく、楽天エコシステムの成長のドライブになりつつある」と語った。楽天エコシステムとは、メンバーシップを軸に多用なサービスを結びつける独自の経済圏モデルが、楽天グループの継続的な高成長を実現していくというビジネスモデル。
三木谷氏によると、楽天モバイルに加入すると楽天の他のサービスを使う頻度が高くなるというデータがあり、実際に非契約者と契約者数を比較すると、楽天市場は47.9%、楽天トラベルは13.5%、楽天カードは26.8%、それぞれ使用金額が増えているとのこと。また楽天モバイルの非契約者は約2年後にサービスの使用金額が0.75%となっているというデータもあるそうだ。
国内EC流通総額は前年度の高ハードルの影響を受け、6.9%減
ショッピングやトラベルを中心とするインターネットサービスのセグメント売上は3146億円で、前年同期比4.4%増、Non-GAAP営業利益は212億円(前年同期比54.2%増)で増収増益を達成。国内EC流通総額(※)は、前年同期比6.9%減の1.5兆円。これは去年9月のふるさと納税のルール変更に伴う駆け込み需要や、昨年7月に一部終了した全国旅行支援などによる高い前年比ハードルを受けた結果だという。ただしこれらの影響を除けば、前年同期比約5%増とプラス成長を維持しているとのこと。
(※)楽天市場、楽天トラベル(宿泊流通)、楽天ブックス、楽天ブックスネットワーク、楽天Kobo(国内)、楽天ゴルフ、楽天ファッション、楽天ドリームビジネス、楽天ビューティ、Rakuten24 などの日用品直販、楽天Car、ラクマ、Rebates、楽天マート、楽天チケット、クロスボーダートレーディングなどの流通額の合計※一部の非課税ビジネスを除き、消費税込
三木谷氏は「プラス要因があった昨年に比べると厳しかった」と認めつつ、そうした影響をフラットにして試算した場合の流通総額は5%成長しており、広告費用についても4.3%増。投資事業についてはIRR(内部吸収率:投資によって得られる将来のキャッシュフローの現在価値と、投資額の現在価値が等しくなる割引率)が17%増、インターナショナル部門の売り上げが前年同期比9.4%増ということで非常に順調に推移している」と評価した。
AIによるセマンティック検索で、楽天市場の売上が59%アップ
インターネットサービス強化のための同社が注力しているのが、AI戦略。同社は独自のAI技術をゼロからつくり、ディープラーニング(深層学習)を活用して利用者の好みを把握し、最もニーズに合致した商品を提供したり、おすすめしたりすることに力を入れているという。
そのひとつとして、楽天の6つのサービスで検索エンジンにリアルタイムのセマンティック検索を導入。セマンティック検索とは、単純なキーワードの一致検索だけではなく、ユーザーの意図や質問の意味を理解して、関連性の高い情報を提供するための技術で、検索結果ゼロを最大98.5%減少できるという。またユーザーが自分で欲しいものをはっきりイメージできていない場合も、セマンティックのリコメンデーション技術を活用することで欲しい商品を見つけることができる。
楽天市場のトップページは、現在このレコメンデーション技術が導入されており、それによって59%売り上げがアップしたとのこと。
みずほフィナンシャルグループ’と戦略的な資本業務提携を実施
また決算発表の中で三木谷氏は、楽天カードがみずほフィナンシャルグループと戦略的な資本業務提携を行うことに言及した。これはみずほファイナンシャルグループがクレジットカード事業を手掛ける楽天カードに14.99%(約1650億円)出資するというもの。三木谷氏は「みずほフィナンシャルグループの持つ信用調査力と、我々の持つ顧客基盤を活用することで、お互いに事業を強化できる」と期待を語った。