ECでの転売対策まとめ。転売に関する法律や企業の対策事例も解説

ECのミカタ マーケティング部

ECでの転売対策まとめ。転売に関する法律や企業の対策事例も解説

EC事業者にとって、転売問題への対応は深刻な課題です。どれだけ対策を講じても新たな手口が現れ、根本的な解決が難しい状況に頭を悩ませている方も多いのではないでしょうか。

転売問題を放置すると、ブランド価値の低下や取引先からの信頼喪失、顧客基盤の崩壊など、企業の存続に関わる重大な問題に発展するおそれがあります。

本記事では、転売に関する法律や規制の現状から、具体的な防止策、先進企業の事例まで、EC事業者が実践できる転売対策を包括的に解説します。

なお、この記事では2024年11月時点の情報を掲載しています。

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EC事業者を悩ます転売問題について

EC事業における転売問題は、正規の商品販売を妨げる深刻な経営課題として認識されています。

とりわけ限定商品や人気商品を扱うEC事業者にとっては、転売問題への対策は事業継続の観点から優先度の高い課題といえます。

転売に関する法律はある?

転売行為そのものを直接的に規制する法律は、2024年現在、日本国内にはありません。

ただし、特定の商品やサービスについては、法律による規制が設けられているケースもあります。

転売目的での不正なチケット購入を禁止する「特定興行入場券の不正転売の禁止等による興行入場券の適正な流通の確保に関する法律(通称:チケット不正転売禁止法)」がその代表例です。

また、新型コロナウイルス感染症の流行時には、マスクやアルコール消毒液などの転売行為が社会問題となり、国民生活安定緊急措置法に基づく規制の対象となりました。

出典:
特定興行入場券の不正転売の禁止等による興行入場券の適正な流通の確保に関する法律|e-Gov 法令検索
国民生活安定緊急措置法|e-Gov 法令検索

チケット不正転売禁止法はいつから施行?

チケット不正転売禁止法は2019年6月14日から施行されています。

この法律が制定された背景には、インターネットの普及に伴い、興行チケットの不正転売が急増し、社会問題化したことがあります。

チケットの高額転売により、興行を楽しもうとする本来のファンが適正価格でチケットを入手できない状況が続いたため、法規制が必要となりました。

この法律では、チケットの不正転売を行った場合、1年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金、またはその両方が科されます。

対象となるのは音楽、演劇、スポーツなどの興行で、主催者が定めた販売価格を超える価格での転売行為が規制されています。

なお、以下のようなチケットは「チケット不正転売禁止法」の対象外となります。

  • 無料で配布されたチケット
  • 転売禁止の旨の記載がないチケット
  • 販売時に「購入者」や「入場資格者」の確認が行われないチケット
  • 日時指定のないチケット

出典:その行為は禁止です!チケット不正転売禁止法|政府広報オンライン

国や政府が行っている転売対策はある?

国や政府による転売対策は、主に法規制と監視体制の強化という2つのアプローチで行われています。

まず法規制面では、チケット不正転売禁止法の制定や、生活必需品などの商品転売規制が実施されており、これらは消費者保護と市場の健全性維持が目的です。

一方の監視体制の面では、消費者庁や都道府県の消費生活センターが中心となり、不正な商品転売の監視や相談対応を行っています。

また、インターネット上での不正転売に対しては、警察庁のサイバー犯罪対策部門が監視を強化し、ECプラットフォーム事業者と連携した対策を進めています。

2022年6月の総務省の公表資料によると、特に携帯電話端末の転売問題が深刻化しており、一般消費者の商品入手機会の喪失や、反社会的な目的への利用懸念など、多岐にわたる問題が指摘されています。

これを受けて、事業者への一人1台制限の導入要請や、消費者への啓発活動も積極的に実施されています。

出典:検討の方向性(案)について|総務省

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EC事業で転売対策をしないことによる悪影響

EC事業において転売対策を怠ると、以下のような悪影響がもたらされる可能性があります。

  • ブランド価値の低下
  • 取引停止のリスク
  • 顧客離れ

これらのリスクを軽減するためにも、早期の段階で戦略的な対策を実施することが大切です。

ブランド価値の低下

転売対策を実施しないEC事業者の商品は転売目的で買い占められた後、他社ECモールなどにおいて、正規価格を大幅に上回る価格での転売が横行する可能性があります。

転売された商品は、本来の販売価格の2倍から10倍以上の価格で取引されるケースもあり、消費者から不信感を抱かれる要因になります。

このような状況は、ブランドの市場価値や商品の希少性を損なうだけでなく、企業イメージの低下にもつながります。

また、転売品の品質管理も大きな問題です。

正規のルートで購入された商品とは異なり、転売品は適切な保管状態や品質管理が保証されません。

商品が劣化した状態で消費者の手に渡れば、ブランドの評判は著しく損なわれるでしょう。

仮に転売品の品質に関して悪い口コミがSNSで拡散された場合、ブランド全体に影響が波及し、企業の信頼性に致命的なダメージを与える可能性があります。

取引停止のリスク

転売対策を怠ることには、メーカーや卸売業者から取引停止を通告されるリスクもあります。

多くのメーカーは自社製品の適正価格の維持と、そのための市場での適正な流通を重視しています。そのため、転売が横行する販売店には厳しい姿勢で臨むことが一般的です。

特に高級ブランドや限定商品を扱うメーカーなどでは、転売対策の不備を理由として、独占禁止法等に抵触しないよう配慮しながら取引の打ち切りを検討するようなケースが増加しているようです。

また、取引停止の事実は該当商品の販売機会を失うだけでなく、ほかのメーカーとの取引にも悪影響を及ぼします。一度取引停止となった企業は、新規取引先の開拓も難しくなりかねません。

顧客離れ

転売対策を実施しないEC事業者からは、コアな顧客が離れていく傾向にあります。

人気商品や限定商品を正規価格で購入したい熱心なファンは、転売目的の購入者に商品を奪われる体験を重ねることで、そのECサイトでの購入を諦めてしまいます。

その結果、企業にとって重要な固定客を失うことになります。

また、一般消費者も転売品が横行するECサイトでの購入を避けるようになります。

顧客離れは売上の減少だけでなく、口コミやSNSを通じた否定的な評判の拡散にもつながり、新規顧客の獲得も難しくなるでしょう。

転売対策をしないEC事業者がいる理由は?

EC事業者が転売対策に消極的な理由には、さまざまな要因があります。

主な要因は以下の4つです。

  • 売上等への影響を避けるため
  • リソース不足のため
  • 購入を制限するのが難しいため
  • そもそも対策不要と考えているため

まず、売上や在庫回転率への影響を懸念した経営判断によるものです。転売目的の購入であっても短期的な売上に貢献するため、対策を見送る判断につながっているケースがあります。

システム投資や専門スタッフの配置など、転売対策には相応のリソースが必要となるため、それを理由に対策を見送るケースもあります。

特に中小規模のEC事業者にとって、転売防止システムの導入に伴う数百万円規模の投資は大きな負担になるでしょう。

また、商品の転売自体は基本的に違法ではないため、どこまでの対策が適切なのか判断が難しい点も、転売対策に踏み切れない要因の1つです。

例えば、1人あたりの購入数制限を設けた場合、家族や友人の購入を代行するような善意の購入者まで制限してしまう可能性があります。過度な規制は正当な購入者の利便性を損なうおそれもあるのです。

そもそも転売対策をすること自体に意味があるのか疑問を抱えているEC事業者もいます。

転売ヤーは次々と新しい手法を編み出し、IPアドレスの変更や架空アカウントの作成など、EC事業者による技術的な対策を回避する手段を日々進化させています。

どれだけ対策してもいたちごっこになってしまうという理由で、対策を半ば諦めている事業者も少なくありません。

EC事業における具体的な転売対策の方法

ECサイトにおける転売防止策は、システム面での対策と運用面での対策を組み合わせることで効果を発揮します。

通販の転売対策の方法は多岐にわたり、それぞれの特性に応じた適切な方法を選択することが重要です。

ここでは、一般的な転売対策の具体的な方法について紹介します。

転売禁止の注意書き

転売禁止の注意書きは、ECサイトにおける基本的な転売対策の1つです。

転売禁止文言の効力に法的な強制力はないものの、購入者に対する抑止効果が期待できます。

具体的には、商品の詳細ページやショッピングカート画面、利用規約などに、転売を禁止する旨を明確に記載します。

転売禁止の注意書きでは、「本商品の転売を禁止します」という単純な文言だけでなく、違反時のペナルティについても明記するとより効果的です。

例えば、転売が発覚した場合には会員資格を剥奪することや、今後の購入を制限するなどの措置を具体的に示すことで、抑止効果を高められるでしょう。

購入数制限による買い占め防止

転売目的での買い占め対策として、1人あたりの購入数制限を設ける方法も効果的です。

転売ヤーによる大量購入を防ぐため、1回の注文あたりの数量制限や、期間内の累計購入数制限を設けることが一般的です。購入数制限は、商品の特性や需要予測に基づいて適切な上限を設定しましょう。

購入数制限を実効性のあるものにするには、同一人物による複数アカウントでの購入を防ぐ必要があります。

そのため、配送先住所の照合や、クレジットカード情報の確認など、複合的な本人確認の仕組みを導入することが重要です。

ほかにも、受注管理システムでリピート購入履歴を確認する機能が搭載されているケースもあるので、現在利用しているものにそのような機能はあるのかを確認し、なければこれを機にリプレイスを検討してもよいでしょう。

転売防止システムの導入

転売防止システムは、不正な購入パターンを自動的に検知し、対策を実施する仕組みを指します。

システムは購入者のIPアドレス、デバイス情報、購入履歴などを分析し、不正な取引を特定します。

転売ヤーが商品名が言えないのは、こうしたシステムによる感知を避けるためともいわれます。

転売防止システムには、不正アクセスの遮断、購入パターンの分析、なりすまし購入の防止など、さまざまな機能が搭載されています。

ボットによる自動購入の防止

ボットによる自動購入は、転売目的の大量購入で使用される代表的な手法です。

プログラムによる高速な注文処理により、人気商品の発売と同時に大量の商品を確保することが可能となるため、転売ヤーに悪用されるケースが増加しています。

これを防ぐためには、CAPTCHAの導入や、JavaScript実行の確認など、人間による操作であることを確認する仕組みが必要です。

画像認証や動作パターンの分析により、ボットと人間の挙動の違いを識別することで、不正なアクセスを効率的にブロックすることができます。

また、購入プロセスに適度な待機時間を設けることで、機械的な連続購入を防げます。

キャンセル・返品ポリシーの見直し

キャンセルや返品に関するポリシーの厳格化も、転売対策として有効です。

転売目的の購入者は、より高値で売れる商品が見つかった場合に、安易なキャンセルや返品を行う傾向があります。

そのため、正当な理由の無いキャンセルや返品には、一定のペナルティを設けることが効果的です。

例えば、キャンセル時のキャンセル料の設定や、返品時の手数料負担の導入、過度なキャンセル・返品履歴のあるアカウントの利用制限などが考えられます。

ただし、ポリシーの厳格化に際しては、一般の消費者の購入意欲を損なわないような配慮が必要です。商品に不具合があった場合や、やむを得ない事情による返品については、柔軟に対応しましょう。

シリアルナンバーの活用

シリアルナンバーの導入は、商品の流通経路を追跡できる効果的な転売対策となります。

各商品に固有の識別番号を付与することで、転売品の発見が容易になり、不正な販売ルートの特定にも役立ちます。

例えば、高級ブランド品や限定商品では、QRコードと連動したシリアルナンバーシステムを採用することで、商品の真贋(しんがん)判定や購入履歴を確認できるようになります。

このシステムは商品の正規品証明としても機能するため、購入者にとっても安心につながるでしょう。

また、SKU数や生産数が多い製品の場合は、製造ロット番号を追跡するといった手法で対策を行うケースもあります。

販売方式を工夫する

事前抽選制の導入や、販売時間の分散化、会員限定販売など、さまざまな手法を組み合わせることで、転売目的の購入を抑制できます。

また、セット商品の販売や、購入者の本人確認を必要とする受け取り方式の採用なども効果的です。

例えば、人気商品と関連商品をセットにして販売することで、転売目的の購入を抑制できるでしょう。

さらに、ポイント制度と連動した優先販売の実施も有効です。日頃から商品を購入している固定客を優遇することで、転売目的の一時的な購入者を抑制できます。

ただし、過度に複雑な販売方式は一般消費者の購買意欲を低下させる可能性もあるため、利便性とのバランスを考慮した設計が重要です。

Amazonなど特定のECモールでの転売対策は?

大手ECモールでの転売対策は、各プラットフォームの規約に則って実施する必要があります。

特にAmazonでは、不適切な価格設定や虚偽の商品情報、不正な出品行為を禁止し、違反行為には厳格な措置を講じています。

違反を発見した場合は、商品ページの「問題を報告」ボタンから通報が可能です。

出品者側の対策としては、正規販売店の証明資料提出や、Amazonの「ブランド登録」プログラムへの参加が効果的です。

また、ECモールの価格モニタリングシステムを活用することで、不自然な価格設定や在庫変動をリアルタイムに監視できます。

メーカーや正規販売店との連携強化も重要です。商品のシリアルナンバー管理や正規品証明書の発行により、転売品の市場流入を防ぐことができます。

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企業の転売対策の事例

ここでは、積極的に転売対策に取り組んでいる事例を企業ごとに紹介していきます。

ヨドバシカメラ

ヨドバシカメラは、ネット上を騒がせたユニークな転売対策を実施しています。

ヨドバシカメラではポケモンカードゲームやガンプラの新商品発売時、転売ヤーが列を成して買い占める現象が問題となっていました。

そこで、店頭で購入時に「ガンダムについてのクイズ」や「商品名に関する問題」を出題し、答えられなかった場合は販売しないという手法を取ったことで話題になりました。

結果的に、本当にその商品が欲しくて購入する方の手に渡りやすくなり、転売対策として一定の効果があったようです。

おもちゃのミッキー

名古屋にある玩具店「おもちゃのミッキー」では、ガンプラをはじめとする人気商品を、開店時間ではなくランダムな時間帯にほかの商品と混ぜて陳列する方法を採用しています。

この場合、商品知識のない転売ヤーにとっては購入までのハードルが高くなります。

また、購入者にはレジでの購入時に商品を開封してパーツを切り離してもらうなどの取り組みも行っており、新品商品ではなくすることで転売品としての価値を落とすことに成功しています。

SONY

SONYでは、2024年11月に発売される「PlayStation5 Pro 30周年アニバーサリー リミテッドエディション 特別セット」を購入するための条件を設けました。

その条件というのが「PS4・PS5の総プレイ時間30時間以上」というもの。

初めてゲーム機を買うという方が購入できないといった声もあるものの、当該商品はプレミアム品であることからも、ネット上では「ゲームを普段からプレイする人が買いやすくなる」などの声が挙がっており、顧客からはおおむねプラスの評価をされているようです。

メルカリ

フリマアプリ「メルカリ」を運営するメルカリは、特定の商品に対して、高額転売が確認された場合、ユーザーに対し注意喚起を行い、適正な価格での取引を促しています。

例えば、コラボ商品や限定商品の人気が時折過熱し、転売のターゲットとなるユニクロは、メルカリと共同で注意喚起を行っています。

具体的には、メルカリ上でユニクロの対象商品を検索すると、「価格が急騰中」などの注意文を表示するなどの仕様です。

また、メルカリはアサヒなどとも同様の対策を行っており、購入者に転売品を買わないよう推進しています。

任天堂

2017年ごろ、Nintendo Switchの転売が問題となった任天堂では、大幅な増産によって需要を満たせるだけの商品数を市場に供給する対策を行いました。

増産予定時期をこまめに発信し、消費者の「いつ買えるのか分からない」といった不安を解消する取り組みも行っています。

また、増産を行えば商品の希少性が下がるので、転売ヤーにとっても転売価値が下がります。

ノジマ

家電量販店のノジマは、PlayStation 5などの人気商品に対し抽選販売を採用し、転売目的の大量購入を防止しています。

また、購入時に商品の外箱にサインを入れる取り組みも採用しており、転売時の価値を下げることで転売の抑制に努めています。

転売対策を含め、ECの運営はプロに相談するのがおすすめ

ECサイトにおける転売対策は、法律面への理解から具体的な防止策の実装まで、幅広い専門知識が必要です。

これまで解説してきたように、転売問題への対応は企業の持続的な成長に大きく影響を与える重要な課題となっています。

しかし、適切な対策の選択や導入には、EC業界の最新動向や専門的なノウハウが必要になるでしょう。

転売対策をはじめ、ECサイトの効率的な運営をサポートしてくれる事業者を探すなら、国内最大級のEC業界ビジネスマッチングサービス「ECのミカタ」を利用してみてはいかがでしょうか。

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