梱包作業の改善事例9選!参考にしたい成功例と学びのある失敗例を紹介
ECサイトの運営で避けて通れないのが商品の梱包作業です。「作業時間がかかりすぎる」「スタッフの負担が大きい」など、さまざまな課題を抱えている企業は少なくありません。
本記事では、機材やツールの導入、作業台の改善、環境に配慮した梱包材の採用など、梱包作業の効率化や改善に成功した7つの事例と、残念ながら失敗してしまった2つの事例を紹介します。
各社の具体的な取り組みから、実践できるポイントと避けるべき失敗例を学んでいきましょう。
梱包作業を効率化するコツと注意点
梱包作業の効率化を図るうえでもっとも大切なのは、現状の課題をしっかりと把握することです。
例えば、以下のように現時点で困っているポイントを明確にしましょう。
- 作業時間がかかりすぎている
- 梱包資材の在庫管理が煩雑
- スタッフの負担が大きい
- 梱包品質にバラツキがある
- 梱包スペースが狭い
ただし、いきなり大きな変更を加えるのは危険です。なぜなら、梱包作業は配送品質に直結するため、急な変更は予期せぬトラブルを引き起こす可能性があるからです。
改善を始める際は、まず小さな範囲でテストを行い、問題がないことを確認してから本格的に導入することをおすすめします。
定期的に現場の状況を確認し、新たな課題が見つかれば、都度対策を検討していきましょう。
また、現状の課題を明確化できない、課題が多すぎて何から手を付ければよいかわからないといった場合は、自社で解決しようとせず、アウトソーシングしたり、梱包や発送のプロに相談したりするほうが早いこともあります。
梱包作業を改善するための7つの提案
梱包作業の改善方法はさまざまですが、成功している企業の事例を分析すると、大きく7つの方向性に分類できます。
ここでは各提案について、具体的な方法を説明していきます。
提案1)機材やツールを導入する
梱包作業の効率化を考えるとき、まず検討したいのが機材やツールの導入です。
主な機材として以下が挙げられます。
梱包作業の効率化を実現する機材・ツール
機材・ツール | できること | 期待できる効果 |
---|---|---|
エアー緩衝材製造機 | ・必要なときに必要な分だけ緩衝材を作る | ・保管スペースを削減できる |
ストレッチフィルムディスペンサー | ・ストレッチフィルムを均一にしっかりと巻き付ける | ・作業時間が短縮できる ・フィルムの無駄遣いが減る |
自動梱包機(ストラッパー) | ・段ボールや荷物をポリプロピレン(PP)バンドで しっかりと固定・梱包する |
・作業時間の大幅短縮 ・均一な締め付けで荷物の安定性が向上 |
封入封かん機 | ・書類やパンフレットなどを封筒に自動で挿入し、封を閉じる | ・ミスの削減 ・大量処理も即座に可能 |
シュリンク包装機 | ・商品を透明なフィルムで包み、熱で縮めて密着させる | ・商品の保護や見栄えの向上 ・パッケージの高級感を演出 |
パレットストレッチ包装機 | ・パレットに積まれた荷物全体を ストレッチフィルムで巻き付け、荷物の固定と保護を行う |
・輸送中の荷崩れ防止 ・大量荷物を効率的に梱包 |
機材導入の際は、作業量や予算、設置スペースを考慮して選定することが大切です。また、導入後のメンテナンス費用や消耗品の費用も事前に確認しておきましょう。
提案2)梱包作業台を見直す
梱包作業台の見直しは、比較的少ない投資で大きな効果が期待できる方法です。
作業台の高さが合っていないと、作業者は前かがみや中腰の姿勢を強いられ、腰痛や疲労の原因となります。作業台の高さは、作業者の身長に合わせて調整できるものを選びましょう。
また、作業台の周りには必要な道具や資材を手の届く範囲に配置することで、余計な動きを減らすことができます。
さらに作業台の表面素材も重要です。滑りにくい素材を選ぶことで、商品を傷つけるリスクを減らせます。
提案3)緩衝材などの梱包資材を見直す
梱包資材の見直しは、コスト削減と環境配慮の両面で効果が期待できます。従来の緩衝材は、空気が入った大きなサイズのものが一般的でした。しかし最近は薄くて丈夫な緩衝材や、商品に合わせてカットできる資材が登場しています。
梱包資材を見直すときは、商品の保護と梱包後のサイズを意識しましょう。資材を小さくすることで、配送料金の削減にもつながります。
また、環境に配慮した資材を選ぶことで、顧客からの評価も上がります。新しい資材を導入する際は、必ず商品との相性を確認し、破損リスクがないか検証してください。
提案4)作業手順を標準化する(ミスを減らす)
梱包作業のミスを減らすには、作業手順の標準化が欠かせません。誰が作業をしても同じ品質を保てるよう、梱包手順を標準化しましょう。
商品の種類ごとに必要な資材や梱包方法を写真付きで説明するとわかりやすくなります。特に破損しやすい商品や高額商品は、注意点を強調して記載することが大切です。
また、よくあるミスとその防止策も手順書に含めると効果的です。マニュアルは現場の意見を取り入れながら、定期的に見直しと更新を行いましょう。
提案5)作業動線(レイアウト)の無駄をなくす
作業動線の改善は、歩数の削減と作業時間の短縮につながります。梱包作業場では、商品の保管場所から梱包、出荷までの流れを一直線にするのが理想です。
頻繁に使用する資材は手の届く範囲に配置し、重い資材は腰への負担を考えて適切な高さに置きましょう。商品の大きさや重さに合わせて作業エリアを分けることで、作業効率が上がります。
また季節商品や特売品など、時期によって出荷量が変動する商品の置き場所も考慮してレイアウトを決めましょう。
提案6)検品・梱包プロセスを自動化する
検品と梱包作業の自動化は、人的ミスの削減と作業速度の向上に効果があります。バーコードや画像認識を使った検品システムは、商品の取り違えを防ぎます。
また自動計量機能付きの検品台は、数量ミスを減らせます。商品のサイズに合わせて段ボールを自動で組み立てる機械や、テープ貼りを自動で行う装置も役立つでしょう。
ただし、自動化設備の導入には大きな投資が必要です。まずは作業量や人件費を考慮して、投資対効果を慎重に検討しましょう。
提案7)スタッフのモチベーションを高める
梱包作業は地味で単調な作業に感じられがちですが、顧客に商品を届けるための重要な仕事です。スタッフのモチベーションを高めるには、まず作業の意義を理解してもらうことが大切です。
丁寧な梱包がお客様満足につながることや、適切な梱包が商品破損を防ぐことを説明しましょう。作業目標を設定し、達成したらきちんと評価することも効果的です。
また、スタッフから出た改善提案は積極的に採用し、成果を共有することでモチベーション向上につながります。作業環境の改善や休憩時間の確保など、働きやすさにも配慮が必要です。
梱包作業の改善に成功した事例7選
梱包作業の改善を成功に導くには、他社の事例から学ぶことが効果的です。
ここでは、さまざまな業種での改善事例を紹介します。まずは各事例の概要を表で確認しましょう。
業種 | 課題 | 改善アプローチ | 結果 |
---|---|---|---|
化粧品メーカー | ・緩衝材の運搬や保管が作業効率を下げ、作業スペースを圧迫していた | デリバリーシステムを導入し、 エアー緩衝材を作業場頭上から直接供給する仕組みを採用 |
・緩衝材の運搬作業を削減し、作業スペースを確保 ・出荷作業全体の効率化を実現 |
食品メーカー | ・段ボール箱の外装表示に統一性がなく、 確認作業に時間がかかり、商品入れ間違いが発生していた |
・外装表示の標準化を実施 ・物流コードや商品名、表示位置、フォントを統一する ガイドラインを策定 |
・視認性が向上し、仕分けや検品の効率が改善 ・不正解率が低下し、作業時間も短縮 |
EC | ・梱包資材の削減 ・配送時の商品保護の両立 |
・機械学習を活用して商品ごとの梱包最適化を実施 ・紙袋やメーカー梱包のままでの配送を導入 ・既存の物流オペレーションを調整し、新しいプロセスを統合 |
・梱包資材の削減を実現し、環境負荷を軽減 ・顧客の利便性向上 |
物流会社 | ・商品保護性の低い袋資材によるダメージ ・手作業による非効率な箱組み作業 |
・自動箱組みシステム導入 ・自動梱包・ラベリングの自動化 |
・商品保護性が向上し、配送トラブルを削減 ・箱組み作業の自動化で作業時間短縮と作業員負担を軽減 |
食品メーカー | 高温多湿の工場内で行う板こんにゃくの パレット詰め作業が負担となり、人手不足が深刻化 |
静電容量形センサで位置を検出し、 パラレルリンクロボットと吸着タイプの ロボットハンドを活用して詰め作業を自動化 |
・作業の省人化に成功し、作業人員を2人から1人に削減 ・包装の品質を維持しつつ、効率的な作業を実現 |
物流会社 | ・2024年問題による人員不足とコスト増加への対応。 ・ポストインサイズの需要増加に伴う梱包の効率化と送料削減の必要性 |
・自動梱包システムで工数を削減 ・テーパー箱による省スペース設計と梱包効率の向上を実現 ・環境負荷の少ないテープレス封かんを採用 |
・人員を5人以下に抑え、1時間あたり約1,000個の出荷を実現 ・送料削減や梱包材の効率的利用に成功 |
酒造会社 | ・ECサイト立ち上げに伴う個人向け配送用梱包資材の必要性。 | ・サイズの異なる6種類の酒瓶に対応した緩衝材を設計し、 組み立てや資材管理が簡便な梱包資材を導入 |
・ECサイト立ち上げ以来、配送中の破損ゼロを実現 ・梱包作業の効率化により空き時間で対応可能となり、 新商品企画に時間を充てられるように |
デリバリーシステムの導入で作業効率を向上させた化粧品メーカーの事例
化粧品の製造・開発販売を手がけるスタイリングライフ・ホールディングス社では、出荷作業の効率化を目的にデリバリーシステムを導入しました。
それまで、エアー緩衝材を別エリアで作り、作業場に運搬・保管する工程が必要でしたが、導入後は緩衝材を頭上から直接供給する仕組みを採用。
これにより運搬作業を削減し、作業スペースを確保することができました。また、狭くなっていた作業場も広がり、作業効率も大幅に向上。結果として、出荷業務全体のスムーズな運営を実現しています。
参考:出荷作業の効率化を狙い導入しました。|株式会社ネクサスエアー
段ボール外装表示の標準化で仕分け効率と精度を向上させた事例
ある食品製造メーカーでは、段ボール箱の外装表示が商品ごとに異なり、確認作業に時間がかかるうえ、商品入れ間違いも発生していました。
これを解決するため、「考えさせない」「探させない」外装をコンセプトに、表示位置やフォント、項目を統一するガイドラインを作成。
標準化された段ボールを使ったテストでは、不正解率が減少し、選択時間も短縮されました。視認性の向上により、仕分けや検品時の作業効率が大幅に向上し、物流全体の精度とスピードが改善しました。
参考:段ボール箱の標準化による物流の生産性が向上した事例をご紹介|日本トーカンパッケージ
環境に配慮した梱包への転換を実現したAmazonの取り組み
Amazon Japanでは、梱包資材の削減と商品保護を両立するため、梱包の簡素化を推進しました。
紙袋での配送や、メーカー梱包のまま配送できる対象商品を拡大することで、これまで段ボール箱が中心だった梱包形態を効率化。機械学習を活用して商品ごとに最適な梱包方法を見つける仕組みを構築しました。
また、既存の物流オペレーションを調整し、新しいプロセスを導入することで、配送時の生産性や安全性を維持。
結果として梱包資材削減を実現し、環境負荷軽減とお客様体験の向上を両立することに成功しました。
参考:梱包資材の削減とより良いお買い物体験のために―アマゾンジャパンの梱包簡素化の取り組み|Amazon japan
ポストイン段ボールと製函機で商品保護性と生産性を両立した大手商社系物流企業の事例
大手商社系物流企業では、発送資材として使用していた袋タイプの資材が原因で商品割れが発生していました。また、手作業で行う箱組み作業が非効率で人手不足の課題も抱えていました。
これを解決するため、自動化された箱組みシステムと梱包作業の効率化を図る仕組みを導入し、梱包資材をポストインタイプの段ボールに変更しました。
これにより、商品保護性が大幅に向上し、配送中のトラブルが削減されています。さらに、梱包作業の自動化によって作業時間が短縮され、作業員の負担も軽減。
結果として、生産性と顧客満足度が向上しました。
参考:梱包自動化ラインで作業効率を大幅改善/導入事例|日本トーカンパッケージ
省人化と作業効率向上を実現した食品製造業の事例
株式会社古野食品では、高温多湿の工場内で行う板こんにゃくのパレット詰め作業が負担となり、人手不足が課題となっていました。
これを解決するため、静電容量形センサでこんにゃくの位置を検出し、パラレルリンクロボットによる自動化を導入。吸着タイプのロボットハンドを採用することで、包装を傷つけることなく正確にピッキングし、コンベア上のパレットに詰める作業を実現しました。
この結果、作業人員を2人から1人に削減し、省人化を達成するとともに、作業効率と品質の向上を実現しました。
参考:梱包・箱詰め作業をロボットで自動化!メリットや選び方/導入事例を解説|オムロン制御機器
自動梱包システムで効率化と送料削減を実現した事例
角川流通倉庫では、「2024年問題」による人員不足や、ポストインサイズの需要増加に対応するため、株式会社ダイワハイテックスによるメール便箱自動梱包システム「Melt-Line」を導入しました。
自動梱包システムにより、手作業が不要となり、1時間あたり約1,000個の出荷が可能に。また、テーパー箱を採用することで、梱包資材の省スペース化と梱包効率の向上を実現。
さらに、テープレス封かんにより環境負荷を軽減し、開封性も向上しました。
この結果、物流業務の効率化、コスト削減、配送品質向上が達成されました。
参考:メール便箱を1時間1000個で自動梱包!ハイクオリティー資材でポストインサイズの可能性が広がる|通販物流の自動梱包機(ライン) カーゴウェル(CARGOWELL)
ECサイト用梱包資材で破損ゼロを実現した酒造会社の事例
ある酒造会社では、ECサイト立ち上げに伴い、酒瓶の破損防止や簡便な梱包作業を実現する資材が求められていました。
ヤマト運輸の提案により、6種類の酒瓶に対応した緩衝材設計を採用。段ボールの組み立てが速く、属人化せず安定した梱包が可能となりました。
この結果、配送中の破損ゼロを達成し、顧客満足度が向上。さらに、出荷作業の効率化により、新商品企画に時間を充てられるようになり、企業イメージやブランディングの強化にもつながっています。
参考:包装企画・提案の導入企業様の事例をご紹介|ヤマト運輸
梱包作業の改善に失敗した事例2選
改善の成功事例から学ぶことも大切ですが、失敗事例から得られる教訓も重要です。
ここでは、改善に取り組んだものの、期待した成果が得られなかった2つの事例を紹介します。これらの事例から、改善を進める際の注意点を学んでいきましょう。
急な自動化導入で現場が混乱し大規模な出荷遅延を招いた事例
大手通販会社では、梱包作業の効率化を目指して自動梱包システムを導入しました。人手不足の解消と作業効率の向上を見込んでいましたが、結果的に大きな混乱を招くことに……。
最大の問題は、導入の準備期間が短すぎたことです。現場作業者への説明や研修が不十分なまま、繁忙期に突入。機械の操作に戸惑う作業者が続出し、トラブル発生時の対応も後手に回りました。
また、自動化できない特殊な商品の仕分けルールも明確ではなく、システムに商品を投入すべきか人手で梱包すべきか、判断に時間がかかっていました。システムのトラブルも度々発生し、その都度作業が停止。最終的に出荷作業が大幅に遅れ、お客様への商品到着が1週間以上遅延する事態となりました。
コスト重視の梱包材変更で商品破損クレームが急増した事例
ある家電量販店では、梱包コストの削減を目指して梱包材の見直しを実施しました。それまで使用していた緩衝材を薄手の安価な材料に変更し、段ボールも強度の低い材料に切り替えました。この変更により、1個あたりの梱包コストは40%削減できましたが、予期せぬ問題が発生しました。
配送中の振動や衝撃により商品が破損するケースが急増したのです。特に液晶画面を持つ製品では、画面の割れや本体の変形が多発。返品や交換の対応に追われ、当初の想定を大きく上回るコストが発生することになりました。
さらに、SNSでも「梱包が雑になった」という声が広がり、企業イメージの低下につながってしまっています。
梱包改善など物流の課題はプロに相談するのがおすすめ
人手不足が深刻な今、梱包作業の改善は多くの企業で重要な課題となっています。
そんなときは、物流の専門家に相談することをおすすめします。物流コンサルタントは豊富な経験と知識を持ち、状況に合わせた最適な改善策を提案してくれます。
また、梱包作業そのものを外部に委託する選択肢もあります。梱包代行・発送代行サービスを利用することで、作業スペースの確保や人員採用の悩みから解放されるでしょう。
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