“トランプ関税”、卸売業・製造業を中心に日本企業1万社以上に影響の可能性 TDB調査
株式会社帝国データバンク(以下:TDB)は2025年2月7日、保有する企業信用調査報告書ファイル(CCR、約200万社収録)から、輸出先(得意先・販売先)に中華人民共和国(以下、中国)、アメリカ合衆国、カナダ、メキシコ各国内の企業(現地法人、現地子会社などを含む)と取引のある日本企業についての調査・分析内容を公表した。
「卸売業」「製造業」が全体の約9割を占める
日本から北米・中国市場向けに製品・サービスを直接・間接的に販売(輸出)する日本企業は、2025年1月時点で国内1万2911社にのぼることが判明。このうち中国向けが9850社と最も多く、アメリカ合衆国(米国)(4854社)、カナダ(471社)、メキシコ(243社)と続いた。
業種別では、卸売業が最も多い6348社(49.2%)となり、製造業(5211社、40.4%)と合わせ、2業種で全体の約9割を占めた。
卸売業の内訳としては、白物家電をはじめ電化製品を扱う「機械器具卸売業(2026社)」が多かったほか、「飲食料品卸売業(669社)」など食品関連が上位となった。
製造業では、金属工作機械などの「一般機械器具製造業(1444社)」が多かったほか、「電気機械器具製造(787社)」「化学工業、石油・石炭製品製造業(540社)」などが上位で、日本酒人気などを背景に「食料・飼料・飲料製造業」(320社)も目立った。
※画像元:米国の対中・対北米追加関税に対する日本企業の影響調査 (株式会社帝国データバンク)
米国向け輸出、製造業が最多の2499社
米国向けの輸出をみると、業種別で最も多いのが製造業で2499社となった。
米国を中心とした日本企業の輸出相手国動向をみると、中国・北米向けの中で「米国1カ国」のみを輸出先とする企業が2726社と最多に。一方「米国・中国」両国に輸出する企業は2058社で、米国向け輸出企業(4854社)の約4割にのぼった。その2058社を業種別にみると製造業が1108社と半数を占め、卸売業(829社)と合わせた2業種で9割以上を占めた。
※画像元:米国の対中・対北米追加関税に対する日本企業の影響調査
(株式会社帝国データバンク)
中国向けの輸出をみると、業種別で最も多いのが卸売業で5200社に上った。なかでも「機械器具卸売業」が多く、機械工具や精密機械、医療機器など、取扱品目は多岐にわたる。
中国では日本産食品の需要増を背景に、和牛や日本酒、健康食品などを取り扱う「飲食料品卸売業」も多い。中国を中心とした日本企業の輸出相手国動向をみると、「中国1カ国」のみを輸出先とする企業が7499社となった。
※画像元:米国の対中・対北米追加関税に対する日本企業の影響調査(株式会社帝国データバンク)
各事業者は状況を注視し柔軟な対応を
ドナルド・トランプ米大統領は2025年2月4日、中国からの輸入品に対して10%の追加関税を発動し、メキシコやカナダに対しても追加関税の適用に関してプレッシャーをかけている。こうした状況に対し、TDBは以下のようにコメントしている。
「中国政府が米国産原油や大型自動車などに10%の追加関税を課すと発表するなど、米中両国による貿易戦争の様相を呈してきた。また、米大統領は全ての国からの輸入品に一律関税を課すことも引き続き検討していると説明しており、日本も同様に米国の『ディール』に巻き込まれる形で、追加関税対象になるシナリオも想定される」
経済産業省は2025年2月2日、当該関税措置の影響を受ける可能性のある中堅・中小企業をはじめとする日本企業を支援することを目的に、独立行政法人日本貿易振興機構(ジェトロ)と共同で「米国関税措置等に伴う日本企業相談窓口」を立ち上げ、対応にあたるとしている(※)。各事業者は最新の情報を注視し、常に柔軟な対応を心がけたい。
※参考:「米国関税措置等に伴う日本企業相談窓口」について(経済産業省)