楽天2025年Q1決算 国内ECは堅調、モバイルユーザーの自社EC利用に注目
2025年5月14日、楽天グループの第1四半期決算説明会がオンライン配信で行われた。全セグメントにおいて前年同期比で増収となり、インターネットサービスセグメントではショッピングECの流通総額が拡大。安定した成長を見せる楽天は、国内ECにおいて今後どのような戦略を想定しているのか。説明会の内容をレポートする。
「インターネットサービス」「フィンテック」「モバイル」の全セグメントで増収
説明会の冒頭には代表取締役会長兼社長の三木谷浩史氏が登壇し、決算についてのプレゼンテーションはAIアバターが行うことを説明。楽天が社を挙げて取り組むAI活用推進の一環であることを告げた後、配信画面には三木谷氏のAIアバターが登場し、決算資料の説明を行った。
業績内容を説明する三木谷浩史会長兼社長のAIアバター
楽天グループ全体における2025年度第1四半期の連結売上高は5627億円となり、過去最高を記録した。前年同期比で9.6%の増加であり、インターネットサービス、フィンテック、モバイルの全セグメントで売り上げが伸びている。営業利益に関しても全セグメントで増益および改善が見られ、前年同期比で251億円の改善となった。
増益の理由として、楽天カードにおける取扱高増加、金利上昇を背景とした楽天銀行の増収を受けたフィンテックの好調、インターネットサービスにおける国内ECおよび海外事業の好調に加え、「楽天モバイル」の契約回線数増加が大きく貢献したと分析している。
国内ECの流通総額が拡大 通期で一桁半ばから後半の成長率を目指す
インターネットサービスセグメントの売上収益は3055億円となり、前年同期比で6.9%の増収を達成。Non-GAAP営業利益は132億円となり、前年同期比で25.8%の大幅な増益となった。国内EC事業とインターナショナル事業の双方で増収増益を実現した。
特に業績を牽引するのがショッピングECの流通総額(※)だ。利用者数の伸長を背景に「楽天市場」やポイントバックサイト「楽天リーベイツ(Rebates)」など、ショッピングECの流通総額が拡大し、1.4兆円(前年同期比3.0%増)となり堅調に推移している。
昨年がうるう年だったことによる日数影響や、大雪・寒波等による旅行や公営競技のキャンセル影響を考慮したうえで試算すると、前年同期比の流通総額は+4.4%増であった。
2025年3月19日より、楽天のコマース&マーケティングカンパニーは新体制に移行し、国内EC流通総額10兆円という大きな目標を掲げている。楽天モバイルとの連携強化などに注力することで、2025年通期は、国内EC流通総額において一桁半ばから後半の成長率を目指すという。
※国内EC流通総額(一部の非課税ビジネスを除き、消費税込み)=市場、トラベル(宿泊流通)、ブックス、ブックスネットワーク、ゴルフ、ファッション、ドリームビジネス、ビューティ、Rakuten24などの日用品直販、Car、ラクマ、Rebates、楽天マート、楽天チケット、クロスボーダートレーディング等の流通額の合計。Q1/25~インターネットサービスセグメント内の各事業についてセグメント内での区分の見直しを実施したことに伴い、遡及修正を実施
楽天市場はモバイルとの連携強化と翌日配送、AI施策が売上増のポイントに
楽天市場は楽天モバイルとの連携強化により、楽天モバイル契約者の流通額が非契約者より47.5%高いという成果が出た。連携を支える施策として、SPU特典(楽天モバイル契約で毎日全員5倍)の認知促進や、楽天モバイル契約者向けの先行セール開催などを行っている。
なお三木谷氏は、顧客体験の向上施策としての「Rakuten最強翌日配送」も功を奏していると指摘。翌日配送サービス対応商品の売上成長率が大きく伸びた。
加えてAIを活用したバナー自動生成やクリエイティブ審査などの広告オペレーションの効率化を進めているという。
三木谷氏は「今後も楽天モバイルとの連携強化とAI活用を軸に、エコシステムを活用した顧客基盤および利用拡大、顧客満足の向上と流通総額の拡大を目指してまいります」とした。
AI活用で流通総額に変化
説明会では、取締役副社長執行役員グループCFOの廣瀬研二氏(AIアバター)がフィンテックセグメントについてプレゼンテーションを行った。「楽天カード」の会員基盤および客単価の拡大に伴い、ショッピング取扱高が6.3兆円と、前年同期比で12.8%の増加を見たことや、「楽天証券」の総合証券口座数が1,234万口座(2025年3月時点)を突破したことなどを報告した。
最後にはCAIDOのティン・ツァイ氏(AIアバター)が登壇し、楽天グループが取り組むAI活用の最新状況について語った。楽天市場における検索経由GMSは、AIの活用により前年同期比で10.7%増加している。今後も人気検索やパーソナライズ検索、ディープラーニングランキング表示など最先端の検索アーキテクチャをリリース予定であることなどを示した。
今後のモバイル成長がさらなるシナジーを生み出すか
説明会後に行われた質疑応答では、「国内EC流通総額において一桁半ばから後半の成長率という目標をどう達成するか」という質問に対し、三木谷氏が「(最近の業績伸長について)中長期的なマクロ的要因で言うと、やはり楽天モバイルとのシナジーが非常に効いている」と強調するシーンが見られ、今後のモバイル成長が、さらなるシナジーを生み出す可能性を示唆した。
楽天モバイルの全契約回線数は863万回線に到達し、第1四半期のMNO(B2C)開通数は前年同期比16.9%増で、昨年の成長率を上回る水準で推移している。今後、米AST SpaceMobileと連携した衛生サービスを立ち上げる予定もある。楽天のモバイル成長が、国内EC市場に今後どのようなシナジーをもたらすか、注目していきたい。