2024年度の「倒産発生率」は過去10年間で最悪の結果 TSR調査
株式会社東京商工リサーチ(以下、TSR)は2025年7月4日、「倒産発生率(普通法人)」に関する調査・分析結果を公表。2024年度の倒産発生率(普通法人)は0.282%で、前年度の0.252%から0.030ポイント悪化し、2015年以降の10年間で最悪となった。
2015年度以降の10年間で最悪を更新
コロナ禍を経た現在も、円安や物価高に加え、人手不足や賃金上昇といったコスト増が企業収益を圧迫している。コロナ関連支援の縮小・廃止を背景に、企業倒産は増加傾向にあり、倒産発生率もそれに伴って上昇している。
その推移をみると、コロナ禍の支援策が効果をみせた2021年度の0.167%を底に、2022年度0.196%、2023年度0.252%と悪化し、2024年度は0.282%で、2015年度以降の10年間で最悪を更新した。
都道府県別では、悪化が37都府県(前年度45都道府県)、改善は8県(同2県)、同水準が2県(同ゼロ)。ワーストは岩手県の0.423%(前年度0.324%)となった。地区別では北海道を除く8地区で悪化しており、東北が0.363%でもっとも高かった。
※画像元:2024年度の「倒産発生率」 37都府県で悪化 10年間で最悪の0.282%、東北の悪化が目立つ(株式会社東京商工リサーチ)
運輸業の倒産が4年ぶりに減少
産業別の倒産発生率では、金融・保険業と運輸業を除く8産業で悪化した。
産業別ワーストは、情報通信業の0.499%で、前年度(0.379%)より0.120ポイント悪化。TSRでは、ソフトウェア業は政府・自治体の創業支援を得ての少資本の起業もあり、事業を軌道に乗せる前に資金繰りが行き詰まる企業も少なくないと見ている。
次いで、卸売業が0.464%(前年度0.398%)、運輸業が0.449%(同0.472%)。卸売業は、円安に伴う仕入コストや人件費などが上昇する一方、販売価格に転嫁が追い付かず、倒産が増加。一方、運輸業はドライバー不足、時間外労働の上限規制などが重しになっているが、価格交渉が少しずつ進み、倒産が4年ぶりに減少。倒産発生率も前年度を下回った。
※画像元:2024年度の「倒産発生率」 37都府県で悪化 10年間で最悪の0.282%、東北の悪化が目立つ(株式会社東京商工リサーチ)
倒産発生率の悪化は避けられない
2024年度の普通法人の倒産は8421件(前年度比11.8%増)で、3年連続で前年度を上回った。 件数が8000件台に到達したのは2014年度の8081件以来、10年ぶりであり、これを受けて、2024年度の倒産発生率は0.282%で、2021年度を底に3年連続で悪化した。
TSRでは今後について、「トランプ関税の猶予が間もなく期限を迎え、動向が注目されている。2025年度は、コロナ借換保証の返済が本格化する上に、金利も上昇し、人手不足が緩和する兆しは見えてこない。業績改善が遅れた企業を中心に、2025年の倒産は緩やかな増勢をたどっており、倒産発生率の悪化は避けられないだろう」と予測する。
各事業者は常に最新の動向を注視し、柔軟な対応を心がける必要がありそうだ。
※倒産発生率は、普通法人の倒産件数÷普通法人×100で算出。分母は国税庁統計法人税表に基づく内国普通法人数、分子はTSRの個人企業等を除く普通法人の倒産件数。2024年度の普通法人数は2023年度のデータを採用
※普通法人は、会社等(株式会社、有限会社、合名会社、合資会社、合同会社、協業組合、特定目的会社、相互会社)、企業組合、医療法人が対象
※本調査は、国税庁の「統計年報書」の法人税課税対象の内国普通法人(298万2191件)と、TSRが集計した2024年度の企業倒産(負債1000万円以上)のうち、普通法人(8421件)を基に算出