ozie、年間売上130%アップした秘策とは?

ECのミカタ編集部

記者の論点:アパレル通販サイトで洋服を購入するときに、気にするのは「サイズ」や「生地感」。それが分からなくて、購入をためらってしまう。それを解決すべく、実際に着心地を体験することができるショールームを開始した。それ以来、年間売上が130%前後アップしたという。その秘密は、運営方法にあった…

モノを売らずに体験してもらう!

株式会社柳田織物(以下、柳田織物)が運営する、ネット通販ワイシャツ専門店「ozie(オジエ)」は、六本木ショールームを2014年6月に開始した以来、年間売上が130%前後アップした。2002年からeコマース(以下、EC)のみで小売りを行ってきた「ozie」がオム二チャネルの一環で、リアル接点を開始したことで、EC部門でも売上が成長している。

「ozie」では、形・色・サイズの組み合わせで、常時6,000種類以上のシャツやネクタイ等の服飾雑貨をネットショップで販売し、路面店にない品揃えの豊富さにより成長を続けてきた。一方で、「ozie」をネットで知り、購入たいと思ったとしても、サイズや生地感が分からなければ、購入することができない。本来、購入するのに取りこぼした見込み客の獲得に課題があった。

柳田織物の全商品をショップに陳列して販売するには、膨大なスペースが必要となる。そこで一等地に路面店を開店するといった、「ozie」をネットで知った見込み客に焦点を当て、パーソナルな方向に集中することを考えた。また、リアル店舗を出店してコストと収益のバランスが悪く徹底する事例が多い中、「モノを売らずに体験してもらう」というコンセプトを基に「どうやって運営を継続していくかが大事だ」と考えた。

今までとは違った新しい運営方法!

ショールームは、既存のリアル店舗の既成概念や業界の常識を覆して運営を考えた。売上予算が0円、開店による新たな採用は0名とした。リアル店舗では難しい営業スケジュールでの運営をしていたため、それだけ興味のある人のみがこの店に来店する事になり、結果、来店した人の7割強がいずれかの形で購入、リピート注文はネットから購入した。また、常時6,000種類あるバリエーションが多いECショップの特性を生かしたサービスを行った。

来客した人の購入方法は、その場で購入する人が8割以上と圧倒的に多いが、後日インターネットから注文される人が1割を強いていた。一度体験することができれば、インターネット上で豊富な品揃えの中からじっくり学ぶことができる。また、来店年代は30代が中心だった。年代が若い方がECに抵抗がないイメージがあるが、30代の来店者比率の高さを考えると、リアル接点の重要度が推し量れる。さらに、「ozie」のリピート率は3割と、5割強よりも低いものの、体験を通してコアなファンが増えている。体験を通じて安心度が上がることにより、購入しやすいECの相乗効果も相成って、購入回数が増えていることが考えられる。

既存のリアル店舗の既成概念や業界の常識を覆して、コストをかけないリアル接点の運営方法を考え継続することにより、インターネットで調べ物はするが、積極的に購入しない顧客に対して存在をアピールすることが中小企業でも可能だ。そして、体験を通じてネットで購入するという経験に結び付けることができれば、次回からはネットで購入してもらうことができるようになる。2014年度のファッションにおけるEC化率は8.11%と低く、ECの実績を伸ばしていく上で「リアル店舗との融合が欠かせない」と言える。

継続して運営し続けている中、ショールームを開店して1年強経った2015年10月以降は運営の効果が出始めた。そのこともあってか、小売全体の売上・営業利益ともに前年比130%前後の実績で推移している。

インターネットで洋服を購入するときに、サイズや生地を気にする人が多い。店舗ならば、実際に洋服を触ったり試着をしてみたりしながら選ぶことができる。だが、インターネット上では、それを確かめることができない。それもあって、「インターネット上では洋服を購入しない」という道を選ぶ人も多いだろう。そこに目を付け、「ozie」は「モノを売らずに体験してもらう」をコンセプトに掲げ、ショールームをオープンした。それも、既存のリアル店舗の既成概念や業界の常識を覆して考えた、新しい運営方法を実践した。その結果、売上が130%前後アップしたことに繋がった。この数字は、既成概念や常識を覆し、消費者のことを第一に考えて運営したからこそ、結果として表れた数字であろう。売上をアップさせるためには、このような考えが必要なのかもしれない。


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