佐々木俊尚さん語る!買わない時代の売れるEC

河村 郁恵

佐々木俊尚さんプロフィール
1961年、兵庫県生まれ。1981年、早稲田大学政経学部政治学科入学。1988年、毎日新聞社に入社。以降12年あまりにわたって事件記者の日々を送る。東京社会部で警視庁を担当した際にはオウム真理教事件に遭遇。ペルー日本大使公邸占拠事件やエジプト・ルクソール観光客虐殺事件などで海外テロも取材する。1998年、脳腫瘍を患って長期休養。翌年、糸が切れたように毎日新聞社を辞めてアスキーに移籍。月刊アスキー編集部でデスクを務める。2003年、独立してフリージャーナリストに。以降たったひとりで事務所も構えず、取材執筆活動に邁進中。

今、ECの世界でも、キュレーションやSNSなどを使った、コンテンツ重視の情報発信が有効とされています。しかし、中身のあるコンテンツは、作ろうと思ってすぐに作れるものではありません。そのために必要なことは何なのか?キュレーションメディアの先駆け的存在であり、「TABI LABO」創業メンバーの、佐々木俊尚さんに伺いました。佐々木さんは、現在、メディアとライフスタイルの議論コミュニティLIFE MAKERSを主宰しています(記者も実はこのコミュニティを通じて佐々木さんと知り合いました)。メディアとライフスタイル、そしてEC、すべてつながりがあり、そこからECの未来が見えてくるんです。

Amazonに影響を与えた?Pinterestの戦略

ー佐々木さんご自身は、普段ネット通販って利用されますか?

 Amazonをよく使ってますね。自分がよく知ってる分野の商品であれば、それなりに知識があるから何が良いとかあるけど、たとえばティッシュを買うなら、Amazonのベストセラーを一択で買う。プライム会員だとすぐ来るし、最近は水とワインはプライムナウでしか買わなくなりましたね。ワインは箱に入ってるけど、水とかは紙袋に入ってくるんですよ。ゴミだって少ない。プライムナウはそこも便利で使ってますね。

ーAmazonに影響を受けているサイトも多いですもんね。

 Amazonそのものも、Pinterest(ピンタレスト)ととかに影響を受けて、サムネイル化しているんだと思います。Pinterestの影響ってすごく大きいです。Instagramとは何が違うかというと、InstagramはあくまでSNS。Pinterestは、日本法人の定国さんという社長さんと話したことがあるんですけど、ディスカバーエンジンだと。要するに検索エンジンなんですね。

 Pinterestって自分の好きな写真を1個ピンすると、似たような写真がアルゴリズムで計算されてどんどん流れて行くんです。自分の好きなものを自動的に集めてくれるっていうのが、Pinterestの良いところですね。僕は料理をするので、レシピとか結構参考にしてます。最近は海外料理をよく作っていて、英語圏のレシピを見るのに、入口にPinterestが一番良い。エジプト料理とかブラジル料理とか色々ピンしているうちに、似たようなエスニック系の料理が流れてきて、クリックすると元URLのレシピページで料理が作れるんです。

 ああいうサムネイルで自分の好きな画像が並ぶっていうのはすごく気持ち良くて、Pinterestで見つけたものを買いに行く人ってすごく多いんです。Pinterest経由のコンバージョンは極めて高いというのが業界的にはものすごい有名で、米国ではPinterestに「BUY IT」ボタンって購入ボタンをつけていて。

モノ、サービス、購入の動機が変化している

ーPinterestのような方法は、レコメンド機能ですすめるより直感的ですよね。

 レコメンドって微妙にずれている時があるじゃないですか。あれは、協調フィルタリング、コラボレイティブフィルタリングっていう技術で、同じものを買ってる人同士を結びつけるものだから、アイテムそのものの相似性とか類似性はあまり見てないんです。Pinterestは完全に画像イメージだけの世界なので、もう少しセンスとか感覚に近いところに落ちてくる。今の人にとって、そういうセンスの近い人を探すってすごい大事なので。

ーInstagramが流行ったり、キュレーションが盛り上がったりしているのを見ると、売る方の都合ではない、自分のセンスに合うものというのを皆さん求めているんだろうなと。

 人間関係にはソーシャルグラフとインタレストグラフってあるんですね。ソーシャルグラフっていうのはリアルな人間関係、インタレストグラフは、インタレストって興味・関心だから、同じ趣味の人、同じセンスの人がつながっているのがインタレストグラフ。このインタレストグラフに基づいて自分の欲しいものを買うっていうのが、動線としては一番気持ち良いんです。

 リアルだと、たとえば外食するお店を、そんな高級店や有名店じゃなくても、夫がシェフで奥さんがフロアでソムリエみたいな小規模なビストロに行って、店の人と仲良くなって、そういう居心地の良い感じ。ECも、そういう関係に変わってきてます。たとえばアパレルでも、お気に入りの服を買うのに、ハイブランドよりも、そこに物語があるか。もしくは自分の知り合いがインディーズでやってる小さなブランドであったりとか。そういう物語性とか、つながりとかが重要で、そこに沿ってないと今後はECも厳しいんじゃないでしょうか。

ECにおける文化とは、どう作るのか

ー難しいのが、物語とかつながりって作ろうと思って作れるものじゃないじゃないですか。

 何もしないで、価格勝負でやってきたところには無理だと思います。そもそも何のためのECをしているのっていう根幹のところが問われてきているんじゃないかなっていう感じはしますね。結局、良いものを売っていないと。そういうのがないと、お客さんと企業の共同体っていうか、コミュニティー化しないんですよね。

 たとえば、食品宅配のOisix(オイシックス)って、商品は高いんですけど、いろんな物語が込められていて、野菜に独自の変わった名前が付けられていたりとか、柔らかいサラダで食べられるピーチカブとか、焼くととろっとするトロなすとか。どういう農家さんが作ったとかの物語もちゃんとあるんです。そういう物語も込みでOisixの商品を受容するっていう感じになっている。そこである種のつながり、文化圏みたいなものが成立してますよね。

 文化圏を作るには文化的な訴求力の強いものがないとダメなんじゃないかなと。その典型パターンが、北欧、暮らしの道具店。あそこは、『Olive』とか『&Premium』とか『ku:nel』とか、丁寧な暮らし系の雑誌を読んでた人が集まってる場所。ある種のコミュニティー化がものすごい成功しているわけです。

 そのために中途年間一括採用ってことをしていて、その採用窓口が自社のウェブ上にしかない。だから日頃サイトが好きで読んでる人しか社員にしない。優秀かどうかよりも、まず自分のところの文化圏にいるかどうかが、大事。だから、そいうう生活スタイルと、扱っている商品と、ECであればウェブサイトのデザインというのが全部適合してないと、もはやダメなんじゃないかなと思います。

ーそこが多分、流行、目先を追っちゃうと違うんでしょうね。根本がなくて。中小でやっている方って、もともとそれがあった方が多いんですけど、世の中に流されるうちに見失っている方も多いですね。

 どういう文化を作りたいのか。どんなお客さんと付き合いたいのか。何が大事で、その大事なものをどう売りたいのかって、そこからスタートしないと、そこに立ち返らない限り、安売り競争をやっていても意味がない。大手企業のスピードと価格って圧倒的で、そこに小さなお店が勝つっていうのありえない。でも、そういう大手はあくまでも大量販売のプラットフォームであって、そこにないものが、文化なんです。プラットフォームじゃなくて文化だと、そこに行き着くんじゃないでしょうか。

 たとえば、僕は山登りをするんですけど、実際に現物を見たい時には大きい店舗に行って見るし、ネットではAmazonで買ったりもするわけだけど、それだけではどんな商品が良いかっていうのは探せない。やっぱりなんだかんだ言って、優秀な店主がやってる、個人の登山道具屋の方が安心できます。

ECのメディア化と、マーケティングの変化

ーやっぱり文化があるんですね。ある意味、ECもメディア化しているというか。

 着地点が買い物なのか、広告なのか、あるいは有料会員なのか、いろいろありますけど、もはやメディアかEC、あるいはアプリかというのはあまり関係ないですね。最終的にモノを売ればECになるわけで。ある意味ではあらゆるものがメディア化してきてるっていうのがあります。メディア化するって何なのかというと、自分たちの持っているコンテンツとか物語とかを届ける手段を持つっていうことですね。

ー炎上とかもそこの差なんでしょうね。ステマとかも一時期叩かれましたけど、あれも同じ内容でも全然問題ないパターンと、燃えちゃうパターンとがありますし。

 なんか、裏心みたいな、コントロールされちゃってる感が見えちゃうっていうのがあるんじゃないかと思いますね。最近の若い人は検索エンジンも、SEOが効きすぎていて信用できないって言いますし。代わりに、SNSかニュースアプリか、情報を探す時もツイッターで検索しますね。

 SNSがマーケティングの主軸になってきたのが5年前ぐらいからで、その頃からインチキで売るのは不可能になってきましたよね。だから良いものを売るしかないんです。今までは既にある商品を売るのがマーケティングだったんだけど、これからはマーケティングと経営を一体化させて、何を売るのかから考えなきゃいけない。

モノを買わない時代に、どうモノを売るのか

ーそもそもあまりモノを持たないという流れもありますよね。

 ミニマリストって、モノを持たない流れがありますよね。これにも2パターンあって、1つは本当にモノがどうでもよくて、最後に残った安い物しか持たない人と、少なくしか持たないから残した物は良い物にする人と。世捨て人主義なのか、厳選主義なのか。

 スマホが高性能になって、ガジェットとかも買わなくなりましたよね。荷物が減って、それが気持ち良くてますます荷物を減らす。最近、海外のアウトドアブランドとかでは、都市生活者用の小さいザックを出してて、それで荷物を全部持ち運ぶ。edc、everydaycarryって言って、ピンタレストで、自分の持ち物を並べて上から撮るっていうのが流行っているんです。そういう時代に、モノを買うっていうことはどういうことなのかっていうのが、問い直されてきますよね。

 やっぱり3.11大震災の影響って大きかったですね。ああいう経験をすると、家がいつ壊れてもおかしくないとか、いつでも移動できるようにしなきゃダメだっていう感覚が身についてきて、そうすると家にモノを溜め込むっていうのがキツいなっていう感じになってきてるんだと思います。

ーそういう流れの中で、モノを売る側がどうするかという話になりますよね。

 結局何を売るかっていうことですね。作れば何でも売れるっていうのは昔はあったけど、今はそれどころか、何を作っても売れない時代になって、買うためにはそれだけの理由が必要ですよね。そうは言っても、単に自分の思い入れのあるものを作れば売れるというわけでもないので、物語をどうやって組み立てるかが、大事になってきてるんじゃないかな。それは嘘でもいけない。逆にそれがあれば、気仙沼ニッティング(※)みたいな、一見高くて買う人がいなさそうなものが普通に売り切れていますし。
※気仙沼ニッティング:もともとは3.11大震災の被災地支援プロジェクトとして立ち上がり、その後、株式会社として独立した、宮城県気仙沼市を拠点に手編みのセーターやカーディガンなどを販売している会社。

文化があるから、発展、応用できる

ー同じ値段でブランド物を買うより、あのセーターが買いたいなって思わせるストーリーがありますよね。

 あんなにストーリーがあるなら、気仙沼に行って買いたいなと思う。そうやって、わざわざ旅行してまで買うってこともあって、ウェブは入り口にすぎません。それが本当にオムニチャネルなんですよね。オムニチャネルって、一つの文化圏を作るものなんじゃないかと僕は考えています。どっちからでも出入り可能なんだけど、全体としては一つの物語とか文化で統一されている感じ。それは必ずしも高級品とか上等なものである必要はないわけで。やりようによってはいろいろありなんじゃないかなって。

 ウェブの作り込みは大事だけど、凝れば良いっていうものでもなくて、やっぱり、使いやすくて、しかもコンテンツがしっかりしてないと意味がない。最後はコンテンツになるのかなと。そう言いながら難しいけですけどね。

ーなかなか難しいとは思いますけど、それを念頭に置いておくだけでも違うのかなと思いますね。流行りに振り回されないというか。

 小手先の技術は通用しない時代になってきましたんですよね。それだと陳腐化しちゃうので。商品そのものの魅力だとか、そこに付随する物語で、ファンを作るしかないのかなと思います。正解はなかなかないし、いろんな試行錯誤をしていくしかないですけど、それぞれの物語があって、文化があって、それに合った表現の仕方とか、モノの売り方とかがそれぞれあるんじゃないかと思います。

記者プロフィール

河村 郁恵

本好き、活字中毒が極まって書く側に。お酒とウサギと温泉に癒されます。読んでくれる人が何か一つでも得るものがある記事になるようにと、そんな思いで日々記事を書いています。最近お気に入りの記事は「佐々木俊尚さん語る!買わない時代の売れるEC」(http://bit.ly/1N3czpO)、「ネットと店舗の連動で日本酒界を盛り上げる「KURAND」」(http://bit.ly/1YiOSee)「楽天9年連続受賞、地ビール界を牽引するよなよなの里」(http://bit.ly/23DorRS)など。

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